膀胱や子宮、直腸といった骨盤内の臓器が腟の外に出てしまう「骨盤臓器脱」は、出産経験のある女性は誰でもかかる可能性がある女性特有の病気です。50~60歳代で多く発症しますが、20歳代で発症することもあります。どのような病気なのでしょうか? 今回は日本医科大学付属病院教授・明樂重夫(あきら・しげお)先生に「骨盤臓器脱」の特徴についてお聞きしました。
「骨盤臓器脱」とは?
「骨盤臓器脱」とは、や子宮、直腸といった骨盤内の臓器が本来の位置より下がって、腟の外に出てしまう病気です。これらの臓器は骨盤の底にある靱帯や筋膜といった「骨盤底筋」が支えています。骨盤臓器脱は、この骨盤底筋が緩み、臓器を支えられなくなることによって起こります。
骨盤臓器脱には以下の4種類
・子宮が腟から外に出る「子宮脱」
・子宮筋腫などで子宮を摘出した後に腟の奥の部分が出る「腟断端脱」
・直腸が出る「直腸瘤」
・膀胱が出る「膀胱瘤」
患者数が多いのは膀胱瘤で、ほかの種類と同時に発症することもあります。
骨盤底筋が健康な状態の腟と臓器
膀胱瘤になった状態
発症の最大の要因は出産経験。
胎児が腟を通る際に骨盤底筋が損傷することがあり、加齢とともに緩みが大きくなり、臓器を支えきれなくなります。肥満や、便秘による排便時のいきみ、ぜんそくなどによる慢性的な咳、重い物を持つ動作など腹圧がかかる生活習慣も原因になります。
初期は夕方以降、入浴中などに股の間にピンポン玉のようなものが触れるようになります。日中の動作で腹圧がかかり、臓器を押し下げるため、夕方以降に症状が出ます。睡眠中は腹圧がかからないため、朝には軽減します。また、おりものの増加や出血のほか、トイレが近くなったり、逆に尿が出にくくなることも。症状が現れたら産婦人科を受診してください。
特徴的な症状
・膀胱や子宮、直腸といった骨盤内の臓器が腟の外に出てしまう
・出産経験のある女性は誰でもかかる可能性がある
・50~60歳代で多く発症するが、20歳代で発症することもある
主な治療法
・生活習慣を見直し、骨盤底筋体操をする
・腟にペッサリーリングを挿入して臓器が外に出ないようにする
・重症の場合は手術も検討する
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取材・文/桑沢香里(デコ)