皆さん「鼻うがい」って聞いたことありますか? 医学博士・堀田修先生は「上咽頭のウイルスを洗い流してくれるこの『鼻うがい』こそ、ウイルスなどの感染予防の新定番になるはず」と言います。そこで、堀田先生の著書『ウイルスを寄せつけない! 痛くない鼻うがい』(KADOKAWA)より、鼻うがいのチカラや、「痛くない」「手軽な」やり方をご紹介します。
目的に合った鼻うがい方法を選ぶ
ここからは、鼻うがいの実際のやり方について解説します。
鼻うがいは、ウイルスや細菌に常に接している上咽頭をきれいにするための効果的な方法です。体のさまざまな不調を予防・改善したりすることができるものなので、ぜひ試していただきたいと思います。
鼻うがいの効果を上げて使用感を良くする(快適に鼻うがいをする)には、
「食塩水の量」
「食塩水の濃度」
「鼻に注入するときの圧(注入圧)」
「食塩水の温度」
の4つが重要です。
また、鼻うがいはどんな目的で行うかによって、「適切な鼻うがいの方法」と「食塩水(洗浄液)の量」が決まります。
主な疾患ごとの最適な食塩水の量は次の通りです。
①アレルギー性鼻炎や花粉症対策
⇒20ml程度の低容量で、注入圧が低くても問題ない
②慢性副鼻腔炎の補助療法
⇒副鼻腔までしっかり洗える高容量が必要
③ 風邪の予防や補助療法⇒上咽頭をしっかりと洗うことが重要。中・高容量なら問題ない
が、低容量で行う場合は注入圧を上げる
快適な鼻うがいのポイントは食塩水の濃度
日本では、鼻うがいの洗浄液として人の体液と同じ濃度の生理食塩水を使うのが一般的ですが、高張食塩水(濃い食塩水)の方が粘膜のむくみや炎症を軽減しやすいとの報告がこれまでに多数あります。
鼻炎と副鼻腔炎の症例の報告をまとめて解析したところ、生理食塩水よりも高張食塩水が症状を改善する効果が勝ることが示唆されています。
しかしその一方で、高張食塩水の鼻うがいは、炎症を引き起こすヒスタミンやサブスタンスPを作り出し、鼻づまり・鼻水・疼痛の原因になりうることも報告されています。
簡単にいうと、「鼻うがいの効果は高張食塩水の方が期待できるが、副反応も出やすい」ということになります。
ですから、「風邪予防のために行う毎日の『鼻うがい』には約1%の食塩水を使い、風邪かなと思ったら食塩水の濃度を約2%にする」といった具合に、用途に応じて濃度を変えるのが良いかもしれません。
ところで、塩水である「海水」は、鼻うがいに使うことはできるのでしょうか。
塩化ナトリウム(NaCl)のみが含まれている食塩水とは異なり、海水はマグネシウム、亜鉛、カリウムなどの微量元素を含みます。
塩分濃度も約3・5%と高張性で、pH8の弱アルカリ性です。
これらの特性のため、海水は細胞修復、抗炎症、粘液の過剰分泌抑制などの付加的効果が期待されます。
実際に生理食塩水と比較して優位性を示す報告もあり、海外では鼻スプレータイプの海水や、鼻うがい用に蒸留水で薄めた海水が販売されています。
【注入圧と温度にも要注意】
鼻うがいをするとき、鼻に食塩水を入れる注入方法には、2通りあります。
食塩水を鼻ですすって鼻孔に入れる「陰圧鼻うがい」と、ボトルを握るなどして食塩水を鼻に入れ込む「陽圧鼻うがい」で、一般的には「陽圧鼻うがい」が推奨されています。
副鼻腔炎の補助療法として行う副鼻腔まで洗浄する鼻うがいでは、注入圧は低い方が良いとされていますが、風邪対策として上咽頭を洗浄する場合は、ある程度の注入圧が必要と考えられるからです。
洗浄液の温度が鼻うがいの効果に影響を及ぼすことはなく、特に低容量の場合は温度を気にしなくてもかまいません。
ただし、高容量の鼻うがいを行うときは、洗浄液の温度によって使い心地が変わってきます。
高容量の場合は、人肌~40℃ぐらいに温めると、快適に鼻うがいができるでしょう。
【食塩水は自分で簡単に作れる】
鼻うがい用の食塩水の作り方は、水道水1リットルに対して食塩10g(小さじ約2杯)を混ぜて溶かすだけ。
自分で簡単に作れます。
●鼻うがい用の食塩水の作り方
鼻うがい用の食塩水は、水道水1リットルに食塩10gを溶かすだけで簡単に作れる。食塩10gに対して重曹0.5gを入れても良い。
実際の生理食塩水は0・9%なので、食塩の量は9gになる計算ですが、そこまで厳密である必要はありません。
使用する塩は、あら塩(天然塩)でも食塩(精製塩)でも良いでしょう。
必須ではありませんが、食塩水に重曹をほんの少量加えると爽快感が向上します。
目安は食塩10gに対して重曹0・5g(小さじ1/3杯、親指と人差し指でひとつまみ)程度です。
培養細胞を用いた実験では、酸性よりも弱アルカリ性の方が細胞の繊毛活動が良いことが報告されていますが、生体ではpH6・2~8・4の範囲で繊毛活動に違いはないとされています。
つまり、アルカリ化の目的で食塩水に重曹を加える必要性は確立されていないようです。
簡単鼻うがいで、感染症からしっかり身を守れる方法を、6章にわたって分かりやすく解説