医学博士が研究データで解説。「のど風邪や鼻風邪に、鼻うがいは効果的なの?」

皆さん「鼻うがい」って聞いたことありますか? 医学博士・堀田修先生は「上咽頭のウイルスを洗い流してくれるこの『鼻うがい』こそ、ウイルスなどの感染予防の新定番になるはず」と言います。そこで、堀田先生の著書『ウイルスを寄せつけない! 痛くない鼻うがい』(KADOKAWA)より、鼻うがいのチカラや、「痛くない」「手軽な」やり方をご紹介します。

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「のど風邪」「鼻風邪」に効果的な鼻うがい

まず鼻うがいのエビデンス(科学的根拠)について、医学的に信頼度が高いとされるランダム化比較試験(RCT)(※)の報告を中心に解説します。

最初に紹介するのは風邪(急性上気道炎)に対する鼻うがいの研究で、「のど風邪や鼻風邪にかかったとき、治療として鼻うがいは効果があるか?」というものです。

※研究の対象となる人をランダム(無作為)に2つの群(グループ)に分けて、ひとつの群は評価したい治療や予防を実施し、もうひとつの群は従来通りの治療などを行うという研究方法。

【研究1】鼻うがいは風邪の症状を軽くする効果がある(Ramalingam S 2019)

鼻うがいについては、これまでにいくつかの研究結果が報告されています。

その中で科学的に最も評価できるのは、イギリスのエジンバラ大学の研究チームによって2019年に報告された探索的な研究です。

●鼻うがいと風邪症状改善の関係

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鼻うがい群は、だるさやのどの痛みが早く回復する。(Ramalingam S 2019)

ここでは、ウイルス性の風邪を発症してから48時間以内の患者を2つに分けて、それぞれ「鼻うがい群(32人)」と「鼻うがいをしない群(34人)」としました。

「鼻うがい群」は、高張食塩水(濃い食塩水)で最初の2日は鼻うがいを1日6回行い、その後は症状により回数を減らし、「鼻うがいをしない群」と比べた症状の推移とウイルスの減り方を調べました。

研究の結果、「鼻うがい群」は「鼻うがいをしない群」と比べて病気の期間が22%短縮され、市販薬の使用が36%減少、家族への感染が35%減少しました。

●鼻うがいで風邪の症状が軽くなる

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鼻うがいをしない群の風邪の症状を1としたときの鼻うがい群の風邪の症状の程度。3項目とも軽減している。(Ramalingam S 2019を基に作成)

さらに、体内からウイルスがいなくなるのが早まるという興味深い結果となっています。

この研究チームは、ウイルス性の風邪に対する鼻うがい効果をしっかりと実証するために、さらに大規模な研究が必要だと述べています。

この研究で行われた鼻うがいの方法は、人の体液よりも塩分濃度の高い食塩水100mlを容器に入れて、左右の鼻から一方ずつ吸い込むというもの。

もう片方の鼻は指で押さえてふさぎます。

インド伝承の鼻うがいに近い方法で、多少のコツが必要です。

●エジンバラ大学の研究での「鼻うがい」

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研究1の「鼻うがい群」は、片方の鼻を指でふさぎ、もう片方の鼻から高張食塩水を吸い込む鼻うがいを両方の鼻で行った。

鼻うがいを行うとき、人の体液の塩分濃度0・9%と同じ濃度の「生理食塩水」を使用すると、鼻がツンとしにくく快適です。

しかし、この研究1の「鼻うがい群」では、生理食塩水よりも塩分濃度の高い高張食塩水を鼻うがいに用いました。

なぜかというと、この研究に先がけて行われた次のような実験が根拠となっています。

研究2】食塩水の濃度が高い方がウイルスの増殖を抑える(Ramalingam S 2018)

エジンバラ大学の研究チームが研究1に先がけて行ったのは、コロナウイルスを含むさまざまな種類のウイルスを感染させた細胞を使った基礎的な実験です。

ウイルスを感染させた細胞に食塩水を加えると、食塩水の濃度が上がるにつれて、細胞内で作られる次亜塩素酸(※)が、ウイルスの増殖を抑えることが分かりました。

食塩水が抗ウイルス効果をもつことを証明したのです。

※細胞内に侵入した細菌やウイルスを破壊するために使われる塩素の一種。

●感染細胞内のコロナウイルス増殖と食塩濃度の影響

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細胞内のコロナウイルス増殖は、食塩濃度が上がるにつれて抑制される。(Ramalingam S 2018)

この実験結果に基づいて、研究1では鼻うがいの効果を高めるために、1・5%、2%、2・5%、3%の高張食塩水の中で、それぞれの患者が使用に耐えられる最も高濃度の食塩水を使用して行われました。

またこの研究2からは、コロナウイルス、ヘルペスウイルス、RSウイルスなど、さまざまなウイルスの増殖が食塩水で抑えられることが分かりました。

その一方で、いくつかの種類のウイルスは、食塩濃度を上げても増殖が抑制されませんでした。

そのひとつがインフルエンザウイルスです。

インフルエンザは毎年多数の死亡者が出る、いわずと知れた「恐ろしい風邪」です。

インフルエンザも飛沫感染などの空気媒介感染が起こりやすく、鼻うがいが有効かどうかは重要なポイントです。

【まとめ読み】『痛くない鼻うがい』記事リスト

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簡単鼻うがいで、感染症からしっかり身を守れる方法を、6章にわたって分かりやすく解説

 

堀田修(ほった・おさむ)
防衛医科大学校卒業、医学博士。医療法人モクシン堀田修クリニック院長、認定NPO法人日本病巣疾患研究会理事長、IgA腎症根治治療ネットワーク代表、日本腎臓学会評議員。

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『ウイルスを寄せつけない! 痛くない鼻うがい』

(堀田修/KADOKAWA)

新型コロナウイルスを撲滅するのは難しく、「いかに感染を防いで共存するか」に注目したいこの時代。マスク、手洗い、密を避ける、換気といった従来の予防策に加え、上咽頭のウイルスを洗い流してくれる「鼻うがい」こそ、感染予防の新定番になるはず。withコロナ時代における、注目の一冊です!

※この記事は『ウイルスを寄せつけない! 痛くない鼻うがい』(堀田修/KADOKAWA)からの抜粋です。
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