朝、何度起こしても起きられない...。不登校だった中学2年生が回復したきっかけは⁉

心を蝕む「うつ」。それはストレスだけでなく「"質的な栄養失調"が引き起こすこともある」と栄養学に精通する精神科医・藤川徳美さんは言います。そんな藤川さんの著書『うつ消しごはん』(方丈社)から、実際に行ったサプリメントを用いる栄養療法「メガビタミン療法」で回復した症例エピソードを抜粋してご紹介します。

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※症例の血液検査が示す数値などについて......症例の中には、受診時の血液検査の数値が頻繁に登場します。栄養療法を実践するにあたり、タンパク質や鉄の充実度を測る指標にするためです。よく出てくる検査項目についてはエピソードの下で解説しています。

【症例】起立性調節障害(OD)で不登校となった中学生、3カ月で元気になった

中学2年生の男の子の症例です。

朝起きられない、という悩みは多くの方が抱えているのではないでしょうか。

特に子どもが朝起きないという悩みを抱える親御さんは多いようです。

起立性調節障害(OD)とは、思春期に起きることが多い自律神経機能不全の一つです。

重度の場合は、ODをきっかけに日常生活のリズムが崩れて、不登校やひきこもりを起こすことも危惧されています。

当院を受診されたのも、ちょうど思春期に差しかかった中学2年生の男の子とお母さんでした。

朝が弱く、お母さんが何度起こしても起きられません。

ようやく起きてきても、朝食が食べられないという状態です。

学校を休むことが増えてしまったことから、近くの病院を受診したところ、起立性調節障害(OD)と診断されました。

その翌年となる平成30年6月、お母さんが私のブログ記事を見て、当院を受診されました。

まずお母さんが妊娠中に貧血があったため、フェジン(鉄剤)の静脈注射を受けていたことがわかりました。

男の子も相変わらず朝が起きられず、立ちくらみもつづいています。

血液検査をしたところ、BUN14.1、フェリチン22という数値でした。

早速、高タンパク/低糖質食+プロテイン20g(60cc)×2を推奨し、フェルム(鉄剤)、C1000、Nowアイアンを開始しました。

翌7月、プロテインを毎日2回しっかり飲めており、鉄剤、サプリも飲めているとのことでした。

2カ月後の9月には、朝はお母さんに起こしてもらっているものの、以前より朝起きがかなり良くなってきました。

学校も休まずに毎日登校しています。

プロテインは毎日2回を継続しています。

ただし、朝食を食べる量がまだ少なく、立ちくらみは起きるということです。

この時点でBUN17.4、フェリチン69と数値は改善していました。

このように、ODについては、プロテインを毎日2回飲めれば2~3カ月で明らかな効果が出ます。

ODになってしまうお子さんは、欠食するとか食が細いという子が多く、「この子は大食漢で困っています」という子はいません。

しかも全員、母親から引き継いだ鉄不足の状態です。

フェリチンは順調に増えており、あと3カ月でフェリチン100を超えれば、治っていくと思います。

病院を受診できずフェルム(鉄剤)の投与を受けられない人は、Nowアイアン36mg×4錠で代用できます。

フェルムは100mgなので、36mg×4の方がより強力でしょう。


※症例の血液検査が示す数値などについて

「一般的な基準値」というのは、健康な人の多くの検査データをもとにして、統計学的に求められた数値のことで、95%の人が基準値の範囲に該当しているといわれています。なお、BUN(尿素窒素)とMCV(赤血球恒数)、およびフェリチンについては、当院独自の基準で判断しておりますので、「当院の目標値」として記しておきます。

・BUN(尿素窒素)......血液中の尿素に含まれる窒素成分のことです。高い場合は腎機能障害、基準値未満はタンパク質摂取不足です(重症の肝機能障害のときにも低くなります)。一般的な基準値8~20(mg/dl)、当院での目標値15~20(mg/dl)。

・RBC(赤血球数)......赤血球の数で、基準値未満は貧血が疑われます。一般的な基準値 男性:430~570(万個/μl)女性:380~500(万個/μl)。

・HGB(ヘモグロビン)......血液中の鉄の量で、基準値未満は貧血が疑われます。一般的な基準値 男性:13・0~16・6(g/dl)女性:11・4~14・6(g/dl)。

・MCV(平均赤血球容積)......赤血球の大きさで、基準値未満では鉄欠乏性貧血が疑われます(鉄欠乏性貧血=小球性貧血)。逆に大きすぎる場合(大球性貧血)には、ビタミンB12不足、葉酸不足が疑われます。一般的な基準値80~100(fl)、当院での目標値95~98(fl)。

・フェリチン......鉄分を貯蔵しているタンパク質の量です。一般的な基準値 男性:20~220(ng/ml)女性:10~85(ng/ml)、当院での目標値100(ng/ml)。

・メガビタミン療法......ビタミンやミネラル、プロテインなどのサプリメントを活用した栄養療法の考え方。

・ATP......アデノシン三リン酸。生体内のエネルギーを貯蔵したり、供給したりする、生きるための「エネルギー通貨」とも呼ばれる。「ATPセット」は、ATPをつくるためのサプリメントの組み合わせ。


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朝、何度起こしても起きられない...。不登校だった中学2年生が回復したきっかけは⁉ 113-H1-utsukeshigohan.jpg薬に頼らない栄養療法メソッドを全5章に渡って解説。著者が行う「メガビタミン療法」のサプリレシピも収録

 

藤川徳美(ふじかわ・とくみ)
1960年広島県生まれ。医学博士。1984年広島大学医学部卒業。2008年に「ふじかわ心療内科クリニック」を開院。うつ病の薬理・画像研究や、MRIを用いた老年期うつ病研究を行い、老年発症のうつ病には微小脳梗塞が多いことを世界に先駆けて発見。著書に『うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった』(光文社新書)などがある。

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『うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』

(藤川徳美/方丈社)

やる気がない、目覚めが悪いなど体の不調は、あなたが摂っている「栄養の質」が悪いからなのかもしれません。何をどれだけ摂ればいいのか、どんな栄養が体にいいのか、薬に頼らず病を改善させる栄養療法をまとめた、心と体の処方箋です。

※この記事は『うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』(藤川徳美/方丈社)からの抜粋です。
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