<この体験記を書いた人>
ペンネーム:カニカニ
性別:女
年齢:53
プロフィール:無神経な父の発言は、お酒の勢いを借りてパワーアップします。
これはある法事の時の事。
何年ぶりかに親戚が集合し、故人を偲びながら穏やかな会話が弾んでいました。
しかし...そんな時間は束の間でした。
食事が進み、お酒も随分入ったころ、父がペラペラ喋り始めてしまったのです。
その内容は「誰かが秘密にしていたこと」。
これ、時々でてくる父の悪いクセなんです。
普段はまだマシですが、お酒が進むと歯止めが効かなくなります。
まず最初にターゲットになったのが20代の男性。
「そういやお前、随分いい会社に入ったって聞いたけど、大学受験失敗したのにたいしたもんだな。それで仕事はうまくいってるの?」
なんて意地悪な含み笑いをたたえた表情で言い出すのです。
私は頭の中で「受験失敗ってわざわざ言うな!」とつぶやきつつも「そういうのやめよう」と耳打ちするにとどめます。
多分、ここではっきりと「受験失敗言うな!」なんて言ったら最後。
父の性格からするときっと「そこ」をしつこく追求するでしょう。
言われた男性は苦笑いしましたが、彼の方が父より一枚も二枚も上手でした。
「そうなんですよ、みんなに言われて参ってます。でも、あの時の経験が今の僕には生きているのかな。今は手を抜かずに頑張ってますよ!」
絶妙の返しとガッツポーズで父を撃退してくれました。
本当に頼もしい。
謝罪と感謝、そしてエールを含んだ笑顔を贈る私。
反対に憮然とする父。
きっと相手の泣き言を聞きたかったのでしょう。
すると今度はターゲットを変更。
今度は親戚のおばさんを捕まえて嫌味を言いだします。
「お前さ、昔はちょくちょく金借りに来てたけど、今はもう大丈夫なのか? もう貸してはやれないけどな。ハッハハハハ~」
高笑いする無礼な父を完全無視してやり過ごすおばさん。
目の前ではそんなシュールな場面が展開していました。
これをみた途端、「やっぱり連れて来るんじゃなかった」と後悔しかありません。
きっと、親戚のみなさんも同じ思いになったのでしょう。
このあたりからなんとも言えない微妙な空気が漂い始めました。
しかし、ここで調子に乗った父はその場にいる人の秘密をペラペラしゃべり始めたのです。
笑い飛ばせる話も、どう考えても人前でしゃべるべきではないことも。
それを止めさせようと、「もうやめて! 人の秘密は言っちゃダメ!」と父に耳打ちしたのですが、勢いづいた父のおしゃべりを止めることは出来ませんでした。
そうこうしていると、自分の秘密を吹聴された人と父が喧嘩を始めました。
お互いにお酒を飲んでいるので、歯止めが効きません。
言った、言わない、嘘だ、ホントだと、激しい言い争いが続き、ついには周囲を巻き込んでの大騒ぎに発展。
そこに割って入り「もう帰ろう!」と父を引き離そうとしても断固拒否。
力で何とかしようにも勝てませんでした。
そんな状況に途方に暮れている時に...救い主は現れました。
父からすると兄嫁に当たる叔母、義理の姉が現れて、こう言ってくれたのです。
「ここは亡くなった人を偲ぶ場所。あんたの話をする場じゃない。場を考えなさい!」
まさにビシッ!!と。
これには父もビクッとなり、黙るしかありません。
父の実家の兄弟姉妹関係はどうやらかなりの縦社会のようなのです。
中でもこのおばさんがどうやら実力者。
この発言で争いはピタッとなくなり、ついには自分から「帰ろう」と言い出した父。
帰りの車中一度も口を開くことはありませんでした。
この出来事以来、親戚の集まりに父が呼ばれることは激減。
父自身も行きたいとは言わなくなりました。
ちょっと少し寂しそうにしている父を見ると心がチクッと痛むのですが、これ以上親戚に迷惑をかけたくないという気持ちの方が勝ってしまう私なのです。
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