知らないうちに起こる「微小脳出血」や「慢性腎臓病」も認知症のリスクに!

年齢とともに、物覚えが悪くなったり、人の名前が思い出せなくなったりすることは誰にでも起こります。しかし、認知症は「老化によるもの忘れ」とは異なり、何らかの病気によって脳の神経細胞が壊れるために起こる症状や状態を指します。
高血圧などが関わる血管性認知症について鳥取大学医学部保健学科生体制御学講座環境保健学分野教授で、日本認知症予防学会理事長の浦上克哉先生にお話をお伺いしました。

前の記事「中年期からの高血圧でリスクは10倍に! 血管性認知症にご注意を(6)」はこちら。

 
知らないうちに起こる「微小脳出血」や「慢性腎臓病」も認知症のリスクに! 1812p018_01.jpg症状がなく、画像検査で検出。
知らぬ間に起こる微小脳出血

脳の中の細い血管から血液がわずかに漏れ出す微小脳出血。自覚症状がないため本人はなかなか気付きませんが、近年、MRIなどの画像検査の精度が上がったことで、発見されるようになりました。この小さな出血が脳の中で複数にわたって起きてしまうことで、脳卒中や認知症のリスクになることが分かっています。

微小脳出血は、血圧が高い人に多く発生する傾向があり、また加齢も有意なリスク因子として挙げられています。脳の深い場所に生じる場合(深部型微小脳出血)と、脳の表面に生じる場合(脳葉型微小脳出血)があり、より認知症に関連が深いのは深部型だと考えられています。微小脳出血を起こさないためには、高血圧の予防、そして過度な飲酒を控えるなど生活習慣改善も重要です。

 

◎微小脳出血の予防には

高血圧の人は改善に努める
高血圧は放置していると細い血管の動脈硬化が進んで微小脳出血のリスクに。改善に努めましょう。

食事を改善しましょう
塩分過多、コレステロールの摂り過ぎは禁物です。バランスの良い食事を心がけましょう。

過度な飲酒は控える
過度の飲酒は脳出血のリスクを高めることが知られています。飲み過ぎに注意し、適量を心がけて。

 

 
腎臓の障害が慢性的に続く
慢性腎臓病も注意を

慢性腎臓病も認知症のリスクになることが分かっています。久山町研究では、腎機能が低下している人に特徴的なアルブミン尿(尿中にアルブミンというたんぱくが含まれている状態)を呈する高齢者は、アルツハイマー型認知症及び血管性認知症ともにリスクが高いことが、明らかにされています。

慢性腎臓病の予防には、腎機能低下の早期発見が重要。尿検査でアルブミン尿が陽性になったら、生活習慣を改め、改善に努めましょう

こんな症状があったら・・・
■ 夜間の尿が増えた気がする
■ 貧血気味だ
■ だるさが抜けない
■ 息切れしやすくなった
■ 体のむくみがとれない

 

慢性腎臓病の予防には
・高血圧、糖尿病など生活習慣病の改善
・禁煙
・飲酒は適度に
・適度な運動を行う

 

次の記事「「難聴」「牛乳・乳製品」「睡眠」。認知症予防の最新キーワードを解説!(8)」はこちら。

取材・文/佐藤あゆ美 イラスト/福々ちえ 

 

 

<教えてくれた人>
浦上克哉(うらかみ・かつや)先生

医学博士。鳥取大学医学部保健学科生体制御学講座環境保健学分野教授。日本認知症予防学会理事長。認知症診断・予防の第一人者。『認知症&もの忘れはこれで9割防げる!』(三笠書房)など著書多数。

この記事は『毎日が発見』2018年12月号に掲載の情報です。
PAGE TOP