年齢とともに、物覚えが悪くなったり、人の名前が思い出せなくなったりすることは誰にでも起こります。しかし、認知症は「老化によるもの忘れ」とは異なり、何らかの病気によって脳の神経細胞が壊れるために起こる症状や状態を指します。
認知症が起こる原因や認知症の進行過程について鳥取大学医学部保健学科生体制御学講座環境保健学分野教授で、日本認知症予防学会理事長の浦上克哉先生にお話をお伺いしました。
生活習慣病やフレイル予防
年代に合わせたリスク管理を
世界的に信頼されている医学雑誌『THE LANCET(ランセット)』に2017年7月、「認知症の3分の1は予防しうる」という論文が掲載されました。予防できる危険因子は年代別に9つとされています。今年9月に開催された「第8回日本認知症予防学会学術集会」でも、年代に応じた認知症予防の重要性や、発症前からの早期診断などが話題に上りました。
「認知症予防で大切なのは、年代に応じた対策です。私たちの研究では、40~50代の人は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病予防が第一。そのためには、血管が健康であることが基本です。できれば、頸動脈エコー(※)などの検査を定期的に受けて、動脈硬化などの血管の不調を起こさないよう管理してください。60歳以上の人は適度な運動と知的活動、フレイル予防を心がけることで、認知症を予防できます」と、浦上克哉先生。
※頸動脈エコー検査を受ける目安は年1 回。1 度検査を受けて問題のなかった人は4~5 年ごとを目安に受けましょう。
予防が可能な認知症の 9 つの危険因子はこれだ!
認知症の発症リスクを高める危険因子のうち、改善可能な9つを、英国の医学雑誌「THE LANCET(ランセット)」の認知症予防・介入・ケアに関する国際委員会が年代別にまとめ、同誌に発表。思い当たることがあったら、いますぐ対策を!
※表内にある倍率は、その因子を持つ人が持たない人に比べてどれくらい認知症になりやすいかを示した相対リスクです。
出典:Livingston G, et al. Lancet. 2017 Jul 19.
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取材・文/笑(寳田真由美) イラスト/福々ちえ