「認知症」とは? 正しい知識を再確認しよう/やさしい家庭の医学

「認知症」とは? 正しい知識を再確認しよう/やさしい家庭の医学 pixta_15708823_S.jpg病気やけがをしたとき、それに関する用語(病名・症状など)の意味をそもそも知らなかった、なんてことはありませんか? また、時代の流れとともに「ADHD」「ノロウィルス」など新しい用語もどんどん現れています。

書籍『やさしい家庭の医学 早わかり事典』で、病気や健康分野の正しい知識を身につけ、いざというときに役立てましょう。

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加齢や脳障害によって引き起こされる
「認知症」

●240万人以上とのデータも

認知症」という言葉は2002年から使われ出したもので、それまでは「痴呆(ちほう)症」と呼ばれていました。基本的に両者の言葉が意味するところは同じです。

厚生労働省によりますと、2010年現在、65歳以上の高齢者における認知症の患者数は約200万人と推定されています。ただし、この数に関しては専門家の間でも意見が分かれ、65 歳以上の人口の約10%、約242万人に達しているともいわれています。今後、超高齢者社会を迎える日本にとって、認知症患者がますます増えることはいわずもがなでしょう。

認知症とは、生後いったん正常に発達した精神機能が、さまざまな要因によって障害され、慢性的に減退ないし消失することです。これにより、日常生活や社会生活に支障をきたすようになります。

ある事柄がとっさに思い出せない「ど忘れ」や、せん妄(もう)[急性の脳機能障害]は、基本的には認知症には含まれません。

大きく分けると、認知症にはアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の二つがあります。

アルツハイマー型認知症は、初老期または高齢者に起こるもので、加齢によって脳の神経細胞が減少することにより知的機能の低下が見られるようになります。

昔に経験したことはよく覚えているのに、数分前、数時間前に起こったことが思い出せなかったり、症状が徐々に進行していくと自分がどこにいるのかや、目の前の人が自分にとってどのような関係にあるのかさえ曖昧(あいまい)になってきます。感情の起伏も顕著になり、妄想や過度の不安に駆(か)られたり、徘徊(はいかい)するようにもなります。

この型の認知症を治療する決定的な方法はまだ見つかっていませんが、症状の進行を抑える薬があり、それが処方されることがあります。ただし、過度に症状が進行している場合は、この薬の効果は期待できないといってよいでしょう。

脳血管性認知症は、脳出血や脳梗塞(こうそく)を発症してしまったあとに起こる痴呆症状のことです。脳出血や脳梗塞を1度経験したからといって発症するのではなく、何度もそれらを繰り返すうちに起こる症状といえます。

アルツハイマー型とは異なり、人格が保たれることが少なくありませんが、些細(ささい)なことで怒ったり泣いたりといった感情失禁(しっきん)が見られることもあります。こちらの症状は、先述のように脳出血などの病気がもとになっていますので、それらの病気が再発しないような治療をするのが先決となります。

 

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中原 英臣(なかはら・ひでおみ)

1945年、東京生まれ。医学博士。ニューヨーク科学アカデミー会員。東京慈恵会医科大学卒業。77 年から2 年間、アメリカ(セントルイス)のワシントン大学にてバイオ研究に取り組む。その後、山梨医科大学助教授、山野美容芸術短期大学教授を経て、現在、新渡戸文化短期大学学長、早稲田大学講師。おもな著書に『ウイルス感染から身を守る方法』(河出書房新社)、『こんな健康法はおやめなさい』(PHP 研究所)、『テレビじゃ言えない健康話のウソ』(文藝春秋)などがある。

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『やさしい家庭の医学 早わかり事典』
(中原英臣[監修]/KADOKAWA)


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この記事は書籍 『やさしい家庭の医学 早わかり事典』からの抜粋です

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