再生医療で乳房を再建するには? 組織移植・人工乳房・培養脂肪、それぞれのメリットとデメリット

「再生医療」とは、病気や事故などで失われた体の組織を、人の体の「再生する力」を利用して元通りにすることを目指す医療です。中でも利用が進んでいるのが脂肪由来幹細胞で、乳房再建の選択肢の一つとしても注目を集めています。

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再生医療をより安価に、多くの人に広げたいと、2020年12月に脂肪由来幹細胞の培養事業に参入したセルバンク。

医師で代表取締役の北條元治先生に話を聞きました。

「脂肪由来幹細胞での治療は、傷を治す大本となる細胞を、脂肪がなくなったところに注入して治していくもの。乳房再建や変形した顔面の再建などに用いられます。例えば、乳がんによって切除した乳房の再建は、自分の身体の別の部位からとった脂肪由来幹細胞を胸部に注入します」。


乳房再建術は、大きく分けて3タイプ

●自家組織タイプ

[乳房再建の方法]
自分のおなかや背中の組織を移植する

[メリット]
・質感が良い、形が作りやすい

[デメリット]
・おなかや背中など、組織をとった部位に傷あとが残る
・合併症として血流障害のリスクがある
・手術時間、入院期間が長め

[費用]
保険適用

人口乳房タイプ

[乳房再建の方法]
シリコンインプラントなど人工物を使用

[メリット]
・乳房以外に傷ができない
・比較的、手術が簡便

[デメリット]
・再建乳房はやや硬い
・インプラントの破損や老朽化に伴い、将来、入れ替えが必要
・合併症として、感染、露出(皮膚が破れる)、乳房の変形、痛みなどがある

[費用]
保険適用

●脂肪由来タイプ

[乳房再建の方法]
自分の脂肪細胞を培養して脂肪を注入する

[メリット]
・より自然な乳房に近づける
・傷あとが小さい
・日帰り、または1泊の入院で行われることが多く手術時間も比較的短い

[デメリット]
・注入する脂肪の状態によっては、石灰化や感染症を起こすこともある
・自費診療なので、手術費用が高額
・実施できるクリニックが限られる


従来の乳房再建術(上参照)にも、自分の脂肪を使う方法もありますが、何が異なるのでしょう?

「脂肪由来幹細胞は、脂肪から幹細胞を抽出し、培養して1000倍に増やした後、再度これを注入用の脂肪と混ぜて胸部へと注入します。そのため、純粋な脂肪と比べて、幹細胞の数が多く密度が高いものになります」。

培養した幹細胞を用いると、幹細胞が周囲の組織に新たな血管を作るように命令。

血管ができることで、脂肪細胞へ栄養と酸素が届きやすくなり、脂肪の生着率が向上。

また、しこりや石灰化などの合併症が起こりにくいこと、培養した幹細胞は凍結保管できるので、数回に分けて形を整えたいといった要望に適していることも治療のメリットです。

現状、治療は自費のため高額さは否めませんが、新たな治療法として、選択肢の一つとなっていきそうです。

《脂肪由来幹細胞での乳房再建とは?》

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取材・文/オフィス・エム(寳田真由美) イラスト/坂木浩子

 

<教えてくれた人>
株式会社セルバンク代表取締役
北條元(ほうじょう・もとはる)先生
医学博士。肌の再生医療を専門とするRDクリニック医師。東海大学医学部非常勤講師。2004年、細胞保管や再生医療技術支援を行うセルバンクを設立。

この記事は『毎日が発見』2021年5月号に掲載の情報です。

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