舌の表面を保護する舌苔
ここで改めて舌のつくりをチェックしてみましょう。
アカンベーをするように(物理学者アインシュタインの有名な写真を思い出して!)、舌を大きく出してみてください。
舌の奥には、「分界溝(ぶんかいこう)」というV字形の溝が見えます。
そこから先を「舌体(ぜったい)」、後方を「舌根(ぜっこん)」と呼びます。舌体が全体の3分の2、舌根が残りの3分の1を占めています。また、舌の先端を「舌尖(ぜっせん)」、縁を「舌縁(ぜつえん)」といいます。
舌の表面には、「舌乳頭(ぜつにゅうとう)」と呼ばれる無数の小さな突起があります。
そこには、花のつぼみ状の突起が並んでいます。これが味覚を感じる「味蕾(みらい)」。味蕾には、味を感じるセンサー役となる「味細胞(みさいぼう)」が20〜30個入っています。成人では、舌全体でおよそ1万個の味蕾があります。
舌乳頭には、おもに次の4種類があります。
糸状(しじょう)乳頭:舌体全体に広がる白い点。もっとも数は多いのですが、味蕾はありません。舌をザラザラにして食べものを舐め取りやすくし、舌の感覚を鋭くします。
茸状(じじょう)乳頭:糸状乳頭の間に点在する赤い点。先端がキノコ状に丸くなっています。
有郭(ゆうかく)乳頭:奥の分界溝に沿って逆V字形に並びます。舌乳頭でもっとも大きく、大きさに個人差があり、大きすぎると「舌がんではないか?」と心配される方がいます。
葉状(ようじょう)乳頭:舌縁でヒダ状になっています。爬虫類やげっ歯類では発達していますが、ヒトでは退化しています。
鏡でよく見てみると、この舌乳頭の間に、苔のように見える白い部分があります。
これは、食べかす、口の粘膜の細胞が剥(は)がれ落ちたもの、唾液(だえき)成分、白血球、細菌などが溜まったもの。これが舌苔の正体です。
舌苔は、舌の奥で分界溝の手前あたりにつきやすいのが特徴。唾液で洗い流されにくく、舌が動いても上アゴとの接触が少ないため、舌苔が溜まりやすくなるのです。
舌苔は誰にでもあり、舌の表面を保護する働きがあります。ただし、溜まりすぎると口臭の原因になったり、舌苔の細菌が誤嚥性肺炎の引き金となったりすることもあります。
薄く白い舌苔は正常で健康な証拠。それでも気になるときは、舌ブラシで軽く1日1回程度ブラッシングしましょう。激しいブラッシングで舌苔を取りすぎないように気をつけてください。
口先で相手をうまくあしらうことを「舌先三寸」といいます。三寸は約9cmですが、実際の舌の長さ(口から出せる長さ)は日本人平均で7cm弱。
見えない舌根のほうが大きいため、重さは成人で平均300g前後と意外に重たい筋肉の塊。これはスマートフォン2台分です。
舌の筋肉(舌筋(ぜっきん))は、腕や脚の筋肉(骨格筋)と同じタイプ(横紋筋)であり、大きく分けて内舌筋(ないぜっきん)と外舌筋(がいぜっきん)があります。言うまでもなく、牛タンは牛の舌です。内舌筋も外舌筋も、舌下神経がコントロールして動かしています。
内舌筋は、舌の形を変える筋肉。舌筋は全身の筋肉のなかで唯一、形を自由自在に変えることができます。
外舌筋は舌周囲にあり、舌の位置を変えている筋肉。舌を舌骨(ぜっこつ)や下顎骨(かがくこつ)、側頭骨とつないでいます。