知覚過敏や虫歯で困らないための『歯肉を下げない習慣』。予防には正しいブラッシングを!

毎日の歯磨きしっかりとしているつもりでも、歯肉が下がり、知覚過敏や虫歯になることも。歯肉を下げないために、正しいブラッシングを身に着けたいですね。

今回は、東京医科歯科大学 非常勤講師照山裕子(てるやま・ゆうこ)先生に「歯肉が下がる原因」について教えてもらいました。

主な原因
・歯周病
・歯のオーバーブラッシング(磨き過ぎ)

主な治療法・予防法
・正しいブラッシングを行う
・歯科で歯石の除去などを行う

歯茎下がりのしくみ

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放置していると起こる不具合知覚過敏や虫歯で困らないための『歯肉を下げない習慣』。予防には正しいブラッシングを! 2303_P078_02.jpg

・知覚過敏が起きやすくなる
・虫歯が起こりやすくなる
・見た目が気になる

※歯周病が進んでいる場合は歯が抜けやすくなることもある。


「周囲に比べて長く見える歯がある」「冷たい食べ物や飲み物がしみる」「歯の間に食べ物が詰まりやすい」などの症状があったら、歯茎が下がっているサインかもしれません。

歯茎が下がる原因はさまざまですが、最も多いのは歯周病です。

不十分な歯磨きなどで歯と歯茎の間に細菌の集まりである歯垢がたまって、炎症が起きる病気です。

重症になると歯が抜け落ちてしまうこともあります。

次に多い原因はオーバーブラッシング(歯の磨き過ぎ)です。

強い力で歯をゴシゴシ磨き過ぎると、やがて歯茎がやせて後退してしまいます。

歯茎が下がると象牙質が露出しやすくなり、上記のような不具合を引き起こします。

象牙質はエナメル質に比べて酸に弱いため、虫歯が発症しやすくなります。

特に「根面う蝕」という歯根部にできる虫歯には注意が必要です。

進行すると、歯の根元からポキッと折れることもあります。

原因を見極め、適切な治療を行うことが大切です。

そのためにも3カ月から半年に一度は歯科検診を受けることをおすすめします。

検診ではX線検査や歯と歯茎の隙間を測るプロービング検査が行われます。

歯周病の治療は原因となる歯垢や歯石の除去、ぐらぐらと動く歯の嚙み合わせの調整などです。

自宅での正しい歯磨きも重要です。

これはオーバーブラッシングが原因の場合にも有効なので、下記を参考に今日から実践してみてください。

その際、歯ブラシだけでは、歯と歯の間や、歯と歯茎の間の汚れが取り切れないため、歯間ブラシやデンタルフロスを使ってケアをすることも忘れずに。

セルフケアがきちんとできているかチェックしてもらうためにも、定期的な歯科検診は重要です。

セルフケアとプロケア(※)の両輪でいつまでも健康な歯を心がけたいものです。

※歯科医師や歯科衛生士などの専門家が行うプロフェッショナルケア(専門的口腔ケア)。歯磨きの他、歯周病や虫歯のリスクを下げるための対処法の指導などが行われる。

正しいブラッシングで歯茎下がりを予防・改善

ポイントは柔らかめの歯ブラシで歯と歯茎の境目をていねいにブラッシングすること!

1.小刻みに動かす

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5~10mmの幅を目安に小刻みに動かし、1~2本ずつ磨く

2.歯と歯茎の境目は45度

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歯ブラシを45度の角度で当てて、歯周ポケットにもブラシが届くように

3.奥歯は上の部分の溝も忘れずに

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奥歯は溝が深く虫歯になりやすい。汚れをかき出すように1本ずつ磨く

4.歯の裏側は歯ブラシを縦に使う

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磨き残しが多く歯石もつきやすい。歯ブラシを縦に使い根元まで磨く

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【その他のポイント】

力を入れ過ぎない
歯ブラシの毛先が広がらない程度の力で

磨き残しに要注意
利き手の内側、親知らずの手前の歯、歯が空いているところ、歯が重なっているところも忘れずに

〈 知覚過敏の治療法 〉

◎硝酸カリウムを含む歯磨き剤の使用
患部に塗布して5~10分ほど置くと効果的

◎象牙質の露出を封鎖する処置
歯科医院で専用の材料を象牙質の露出部分に塗布する治療

◎歯の神経の処置
歯髄と呼ばれる歯の神経を取り除く治療。歯髄の炎症が疑われるときに行われることがある

取材・文/古谷玲子 イラスト/片岡圭子

 

<教えてくれた人>

東京医科歯科大学 非常勤講師
照山裕子(てるやま・ゆうこ)先生

日本大学歯学部卒業、同大学院で顎顔面補綴学を専攻し博士課程を修了。大学病院及び全国の歯科クリニックにて診療を続ける傍ら、メディアにも多数出演し、予防医学の重要さを提唱する。

この記事は『毎日が発見』2023年3月号に掲載の情報です。
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