新型コロナウイルス感染拡大の影響で声を出す機会が減り、声やのど、肺の老化が進んでいるかもしれません。意識的に声を出す「音読」は、のど、舌、声帯、表情筋、呼吸器の筋力トレーニングや、唾液の増加による免疫力アップなども期待できます。お持ちの本や新聞などで、誰でも気軽にできる「音読」を楽しく続けてみませんか? 今回は、池袋大谷クリニック 院長の大谷義夫(おおたに・よしお)先生に「音読トレーニング6つのポイント」を教えていただきました。
【前回】あなたの「声・のど・肺」は何歳? 声の老化を防ぐ「音読習慣」3つのメリット
高まる「誤嚥性肺炎」のリスク
就寝中の「隠れ誤嚥」に注意!
声を出さないと、のどをはじめ、舌、顔、肺など総合的な筋肉の老化が進みます。
のどの老化は、ものを飲み込む「嚥下機能」の低下を招き、飲食物や唾液が誤って気管に入る「誤嚥」を引き起こし最も注意したいのは、「誤嚥性肺炎」。
肺炎で亡くなる高齢者の7割以上が誤嚥性肺炎です。
誤嚥性肺炎の他の原因として、「ラクナ梗塞(※)」による嚥下反射や咳反射の低下もあります。
予防には、禁煙、糖尿病、脂質異常症、高血圧の管理があります。
「特に危険なのは、寝ている間に誤嚥する『隠れ誤嚥(不顕性誤嚥)』。就寝中に唾液が気管に流れ込み、唾液とともに侵入したウイルスや細菌が肺炎を引き起こします」と大谷先生。
誤嚥性肺炎を防ぐには、どうすれば良いのでしょうか。
「肺炎球菌ワクチンの予防接種と1日4~5回の歯磨きによる口腔ケアが有効です。その上で音読習慣を続ければ、効果も抜群です」(大谷先生)。
※脳梗塞の一つで、脳の深い部分を流れる細い血管が詰まることで起きる。
音読トレーニング6つのポイント
音読トレーニングの前に6つのポイントを確認しましょう。
① まっすぐな姿勢
立って読むときは、耳、肩、太ももの付け根、くるぶしが一直線になるように。座って読むときは、いすに深く腰かけ、背中をまっすぐ起こし、胸を張ります。
② 口をしっかり動かす
口を大きく動かして滑舌良く、のどや舌、顔の表情筋まで使いましょう。唾液腺が刺激され、唾液も出やすくなります。
③ ゆっくり大きな声で
腹式呼吸を使って胸郭を動かし、深い呼吸を心がけましょう。息継ぎするとき、お腹がふくらむことを感じながら、普段の会話よりゆっくり少し大きな声で読みます。
④ あごを引く
あごを突き出した姿勢は、声帯やのどに負担をかける発声になります。あごを引き気味にして、吐き出す息に声をのせるイメージで。
⑤ 一息で長く読む
発声時間を長くして肺を鍛えます。苦しくなったら、腹式呼吸で鼻から短く深く息継ぎをします。
⑥ 朝昼晩の3回
音読は無理なく楽しくコツコツ続けることが最も大切です。気が付いたらのどや肺が鍛えられ、声が若返り、誤嚥することも減っていきます。1回1分程度でOKです。