話しかけても反応がない夫と、どう暮らしていけばいいのか――。アスペルガー症候群のパートナーと結婚し、家庭を築いていく難しさから次第にうつ状態となったシニア産業カウンセラーの真行結子さん。自身の体験から、「自分らしい夫婦の形を実現させることが大切」だと気づかされました。そんな真行さんの著書『私の夫は発達障害?』(すばる舎)から、いい夫婦関係を保つヒントを連載形式でお届けします。
©アライヨウコ
だんだん夫のことがストレスに・・・
私は、二十数年間の結婚生活のなかで夫との関係について悩んできました。
夫は真面目に働き、お給料はすべて家庭に入れ、決められたお小遣いのなかでやりくりし、常に穏やかで、私がお願いすることはやってくれる人でした。
それなのに、なぜ私は悩んできたのか。
それには理由がありました。
休日の過ごし方や家族のイベントを提案するのは、常に私。
子どもの教育方針や家の購入について話を切り出すのは常に私。
夫は反論はせず、すべてイエス。
悩みごとを話すと、「そうですか」の一言。
私や子どもの体調が悪くても、夫から声をかけてくることはありません。
「具合が悪い」と伝えても、「そうですか」と一言。
してもらいたいことを具体的に伝えて初めて、ようやく動くという感じです。
こんな調子だったので、夫とは一緒に暮らしてはいるものの、子どもの成長や家族のさまざまなエピソードを「分かち合う」という感覚を持てずにいました。
複雑な相談事になると、夫は石のように固まり口をつぐんでしまうため、私はいつもひとりで答えを模索していました。
まるで穏やかなロボットと暮らしているような感覚は、さみしさを伴っていました。
友人たちに相談しても、「暴力もなくギャンブルもせず、お給料はすべて家に入れてくれる。しかもお願いすることをやってくれる夫の、どこが問題なの?うらやましいくらいだわ」と言われます。
結局、「男は基本的には感情表現が苦手で無口なものよ」と言われてしまい、夫との関係性の悩みを理解されたことは一度もありませんでした。
「わがまま。ぜいたく。あなたが強いから夫は何も言えないのよ」などと諭されることも多くありました。
周りがそう言うのだから「私の結婚生活は幸せなのだ」と自分に言い聞かせはするのですが、さみしい気持ちはどうしても消えません。
しばらくすると、そのさみしい気持ちを持つ自分に対して自責の念が強くなっていき、気づいた頃には、心身に不調を抱えるようになりました。
夫との関係に悩み、自分を責める日々
夫との関係に悩んでいた私は、あるとき、心身の不調を感じて精神科を受診し、悩みを伝えました。
しかし医師からは、「私も妻の話はあまり聞きませんよ。たいがいの男性はそうだと思いますから、あまり気にしないように」と言われ、私は「うつ状態」と診断されました。
専門家の言葉は重く、私は「やはり私がおかしいのだ」と自分を責めました。
状態は、さらに悪化していきました。
この時点で、私は「夫が発達障害であるかもしれない」との視点は持っておらず、「カサンドラ症候群」という言葉も知りませんでした。
次第に、楽しそうに会話をしている夫婦を見ると、涙が出て身を切られるようなさみしさに襲われるようになりました。
夫の帰宅時間が近づくと動悸がし、気持ちが塞ぎ込みます。
相談をしても答えが返ってこない夫に苛立ち、暴言を吐いてしまうようにもなりました。
さみしさと、夫への嫌悪と怒り、そして自責の念の感情が目まぐるしく交差するようになり、ついに私の心は大きくバランスを崩し、うつ状態が悪化。
朝、起き上がることができなくなり、会社を休職することになったのです。
その後、自分自身にセルフカウンセリングをしながら、心の安定を取り戻した私は、三年間の休職ののち、職場復帰を果たしました。
【次の記事】夫の言動に悩むのは私だけだった・・・周囲の理解が得にくい「カサンドラ症候群」とは?
カサンドラ症候群から回復するまでの同居・別居・離婚の3ケースを全5章が紹介されています