「がん予防」というと、どんなイメージがあるでしょうか。様々な健康情報がありますが、がん専門医であり、予防医療のヘルスコーチとして活動する石黒成治さんは、がん予防の1つとして「筋トレ」を習慣づけることを勧めています。そこで今回、石黒さんの著書『筋肉ががんを防ぐ。専門医式 1日2分の「貯筋習慣」』(KADOKAWA)より、著者が考える筋トレとがんの関連性や、具体的なトレーニング方法などを厳選して紹介します。
※本記事は石黒成治著の書籍『筋肉が がんを防ぐ。 専門医式 1日2分の「貯筋習慣」』から一部抜粋・編集しました。
【前回】初期症状は「全くない」気付いたら症状が進行...日本人で最も多い「大腸がん」の治療法と問題点とは
腸内細菌の「住みか」として重要な大腸
僕たちの体は、両親から受け継いだ細胞のみの働きで体の機能が維持されていると一般には考えられています。
しかし実際は様々な細菌、ウイルス、真菌などの多くの微生物が相互に作用しながら共生し、複雑な生態系のもと体の機能が維持されています。
皮膚、粘膜、消化管、呼吸器、泌尿生殖器、乳腺など、様々な解剖学的部位に微生物が生息しており、その場所で必要な化学物質を合成したり、病原性微生物を排除したりしながら、僕たちの体の健康維持に貢献してくれています。
僕たちの細胞の総数の約1.3倍の細菌が体内には存在し、その何倍ものウイルスやバクテリオファージが存在しています(Cell. 2016)。
ヒトの遺伝子の数は約2万ですが、微生物の持つ遺伝子の総数は200万個以上と推定され、約100倍の遺伝子を微生物が持っていることになります(Nat Med. 2018)。
僕たちの体の中での代謝、免疫などはこれら微生物の影響を強く受けます。
僕たちの行動を決定するときには、自分が何をしたいのかは1%程度の決定権で、99%は体内の微生物が喜ぶようなことをしてあげないといけないということです。
体内の微生物の最大の住みかはどこか? それが大腸の中です。
成人男性の大腸内には約39兆の細菌が存在すると推定されています(Cell. 2016)。
現在までで、これらの腸内細菌の遺伝子の変化やその代謝産物の変化が、免疫系、内分泌系、神経系とが相互に作用し合って、炎症性腸疾患、がん、うつ病など幅広い病気と相関していることがわかってきています(Nat Med. 2018)。
腸内細菌の最大の住みかである大腸を切除することは、どれくらい健康状態に影響を与える行為になるのか? 残念ながら多くの外科医は理解できていません。
大腸がんの大部分はポリープから発生しますが、大腸のポリープを引き起こす原因は大腸粘膜の慢性炎症です(Int J Mol Sci. 2020)。
腸の中の炎症を引き起こす原因には、食事、環境要因、運動不足、ストレス、毒素など様々なものがあり、原因を1つに絞ることはできませんが、最もわかりやすい腸の中に炎症を起こす状態といえば便秘です。
ヒトは体の中の不要なものや毒素を便として体の外に排出します。
便を腸の中にいつまでも残しておいていいはずがありません。