2022年8月、C型慢性肝炎などの治療に新たに「エプクルーサ配合錠(一般名ソホスブビル/ベルパタスビル)」が適応拡大されました。最新治療について、肝臓の専門医である医学研究院 消化器内科教授 加藤直也先生を招いた講演会が行われました。今回は、その加藤直也先生に「C型肝炎の画期的な新薬」についてお聞きしました。
C型肝炎は約30年で肝硬変、約40年で肝がんに進行
C型肝炎ウイルスへの感染で起こるC型肝炎。発症すると、約30年で肝硬変、約40年で肝がんに進行するリスクがあります。また、慢性化すると症状の軽い、重いにかかわらず、どのステージでも肝がんを発症する可能性があります。
Yoshida H, et al. Ann Intern Med 1999, Shiratori Y, et al. Ann Intern Med 2000,を参考に編集部で作成
治療は抗ウイルス療法
治療は体内からウイルスを排除する抗ウイルス療法が基本。
以前は、インターフェロンを用いた治療が主流でしたが、現在は大半の人が飲み薬での治療を受けています。
進歩した「飲み薬」
インターフェロンを使わず、飲み薬(直接作用型抗ウイルス剤:DAA)のみでウイルスを排除する治療。一般的な治療薬は、「ハーボニー配合錠」「マヴィレット配合錠」「エプクルーサ配合錠」など。
●服用期間:8~24週
●対象となる人
・初めてC型肝炎の治療を受ける人
・インターフェロン治療で副作用があり、治療を行えなかった人
・インターフェロン治療でC型肝炎ウイルスを排除できなかった人
・C型肝炎が再発した人
従来の「インターフェロン」
注射薬であるインターフェロンを使う治療で、飲み薬と併用することも。しかし、効果が不十分で副作用も多いため、現在はほとんど行われなくなりました。
C型慢性肝炎では、徐々に肝臓が硬くなる線維化が進行します。
線維化の程度はF0(ほぼ正常)~F4(肝硬変)の5段階に分けられ、C型肝炎ウイルスが存在する限り線維化は進みます。
「線維化で肝臓が硬くなるほど発がんリスクは高まりますが、F1(柔らかめ)でも年0・5%とリスクがないわけではありません。線維化が1段階進むには約10年かかりますが、C型肝炎ウイルスを排除できれば、約4年で1段階戻ります」と、加藤直也先生。
国内でのC型肝炎ウイルス感染者数は、100~150万人と推定。
そのうち未治療は25~75万人。
さらに、30万人が自らの感染を知らないといわれています。
未治療の原因は、症状がないことだと加藤先生。
しかし、無症状でも線維化は進み、肝硬変や肝がんのリスクは高まります。
適応拡大となった「エプクルーサ」は、未治療及びこれまでの治療で治らなかったC型慢性肝炎などの患者にも有効性を期待できます。
「C型肝炎ならば1種類の薬剤を1日1回1錠、12週間の服用で治療可能です」。
ウイルスが排除できると、線維化だけでなく肝機能も改善します。
不安がある人は、肝臓専門医(※)のいる病院で相談を。
※肝臓専門医のいる医療機関は、日本肝臓学会のホームページで見つけることができます。
取材・文/寳田真由美(オフィス・エム)イラスト/坂木浩子