「がん予防」というと、どんなイメージがあるでしょうか。様々な健康情報がありますが、がん専門医であり、予防医療のヘルスコーチとして活動する石黒成治さんは、がん予防の1つとして「筋トレ」を習慣づけることを勧めています。そこで今回、石黒さんの著書『筋肉ががんを防ぐ。専門医式 1日2分の「貯筋習慣」』(KADOKAWA)より、著者が考える筋トレとがんの関連性や、具体的なトレーニング方法などを厳選して紹介します。
※本記事は石黒成治著の書籍『筋肉が がんを防ぐ。 専門医式 1日2分の「貯筋習慣」』から一部抜粋・編集しました。
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乳がん検診を受けていても安心できない
がんの一番の対策は早期発見、早期治療と言われますが、はたしてそうでしょうか?
がんは進行するにつれて、その場にとどまらず他の臓器でも増殖し始めます。
この現象を転移と呼んでいますが、多くは肝臓、肺、リンパ節などにがんは転移していきます。
がん対策は早期発見、早期治療というこの考え方の根本は、がんが転移を起こす前に見つけましょうという意味です。
決してがんにならないようにする対策ではないのです。
検診は、受けることのメリット、デメリットをよく認識して受ける必要があります。
乳がん検診で行われる手法は、触診(触って確認)、超音波、そしてマンモグラフィーです。
マンモグラフィーとは乳房を器械ではさみ込んで圧迫してレントゲンを撮るもので、乳腺はもともと母乳を作る組織なので、炎症を起こすと石灰化(カルシウムが沈着)しやすくなります。
炎症を起こしている乳腺を見つけるとそこにがんが隠れている可能性があるので、検診として利用できるわけです。
しかしマンモグラフィーはそれほど鋭敏な検査ではありません。
ちょっと疑わしいなと思う所見がある人には、別の検査を行ったり、2~3か月後など時期をずらして再検査を行います。
検査ではがんを疑うが、実はがんでなかったという場合は検査の偽陽性と呼びます。
ヨーロッパでは、50歳から69歳までの2年に1度の検診を受ける女性がマンモグラフィーの偽陽性になるリスクは約20%です(J Med Screen. 2012)。
検診で陽性の場合、細胞を検査してがんかどうかを診断します。
偽陽性の人が、生検針と呼ばれる針をさして組織診断を受けるリスクは3%あります。
イギリスのデータでは、偽陽性であった女性の2.3 %が乳房切除術を受けており、これは検診を受けた女性10万人のうち76人に相当します(Lancet. 2012)。
アメリカではリスクはさらに高く、10年間の偽陽性率は30%であり、全女性の50%が一度は偽陽性を経験していることになります(Ann Intern Med. 2011)。
再検査をした方がいいですよと告げる医師側は単に検査の予約を入れるだけですみます。
しかし再検査の必要性を告げられた患者側は、金銭的な負担が増加すること以外にも悪影響があります。
それはメンタルの問題です。
「ひょっとしたら、がんだったらどうしよう?」と考えながら不安な月日を過ごさなければなりません。
偽陽性結果は心理的幸福に悪影響を及ぼします。