森永卓郎さんが考える「野菜中心の食事と適度な運動」。畑仕事は一石二鳥?

定期誌『毎日が発見』の森永卓郎さんの人気連載「人生を楽しむ経済学」。今回は、「健康を維持するために必要なこと」についてお聞きしました。

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健康的な生活を続けられるかどうかが問題

ライザップで6年間トレーニングを続けるなかで、私は数多くの医療関係者から話を聞く機会に恵まれました。

そのなかで気付いたことがあります。

糖質制限を優先すべきか、カロリー制限を優先すべきかということは、人によって意見が異なっているのですが、私が話を聞いた全ての医療関係者が共通して言ったことは、「健康維持には、野菜中心の食事と適度な運動が必要だ」ということです。

特に食事について私が驚いたことは、糖尿病治療のための食事とライザップが推奨する食事の共通性でした。

私は、深刻な糖尿病だったので、クリニックの管理栄養士から食事指導を受けていました。

そこで示された理想的な食事のメニューとライザップの管理栄養士がダイエットのために示してくれた食事のメニューが驚くほど似ていたのです。

つまり、野菜中心の食事と適度な運動という健康になるための行動は、誰が考えても同じだということです。

問題は、それを実行・継続できるかという一点に尽きるのです。

ライザップの場合は、週に2回、あらかじめ予約を入れてしまうので、トレーニングを継続せざるを得ません。

そして食事に関しても、毎回食べたものの写真をスマホでトレーナーに送らないといけないので、糖質の高い食品は食べられません。

だから、ゴールに向かってまっすぐに進めるのです。

ただ、人間は意志が弱いので、そうした管理をしてくれる人がいないと、ついつい不健康な食事をしてしまったり、運動をやめてしまったりします。

ただ、私がトレーナーの代わりとしてみつけたのは、農業でした。

私は、一昨年から近所の畑を借りて農業をしています。

たった30坪の小さな土地ですが、そこでトマト、キュウリ、ナス、白菜、キャベツ、ブロッコリーなど25種類ほどの野菜を作っています。

私はもともと野菜が好きではないのですが、苦労して育てた野菜は、やはり食べたくなります。

そして食べると美味しいのです。

もちろん私の野菜が本当に美味しいのかは、よく分からないのですが、自分の子どもがかわいいのと一緒で、美味しく感じることは事実です。

無農薬で畑作をしているので、私の野菜はどうしても虫食いが多くなってしまいます。

そのため、妻はあまり喜ばないのですが、そんなことは関係ありません。

「虫が食べるほど美味しいんだ」と言いながら、私は食べています。

つまり、自動的に野菜中心の食事になってしまうのです。

農業のもう一つの効果は、運動です。

私の農業は、春先の土作りから始まります。

畑をよく耕し、堆肥を入れ、元肥を入れ、石灰を入れていきます。

土を耕すのは大変なのですが、私は鍬一本でやっています。

耕運機を使えばずっと楽ですし、いまは小型で高性能の耕運機も出ているのですが、私は買っていません。

耕運機を使うと、運動にならないからです。

草取りの動作はスクワットそっくり

土作りが終わっても、運動は終わりません。

春から夏の時期は、物すごい勢いで雑草が伸びていきます。

特に梅雨時の雑草の勢いは驚くほどです。

畑の仲間が、「草を抜いた途端に、後ろで雑草が生えてくる」と言いましたが、まさにそんな感じなのです。

私は中腰で雑草を抜いていきますが、そこでの体の使い方は、草取りの動作はまさにスクワットと同じです。

その他にも種まきや苗の植え付け、間引きや芽搔きなど、土作りほどではないですが、緩い運動が長時間続きます。

朝に数時間、そして夕方に数時間の作業が毎日続くのです。

そこでの運動は、ライザップのトレーニングのような強度はありません。

ただ、筋肉をつけるのに、ジムでの筋トレのような強い運動が必要というわけではありません。

緩い運動でも長時間続ければ同じ効果が得られるのです。

なぜトレーニングジムで強い運動をするのかというと、忙しい人は、何時間もトレーニングを続ける余裕がないからです。

私はライザップで、毎月筋肉量を測定していたのですが、春から夏に私の筋肉は大きく増加していました。

そして農業のいちばんすごいところは、トレーナーの代わりをしてくれるということです。

畑は、サボることを許してくれません。

サボったら、雑草が伸び放題になってしまうからです。

しかも、数日サボった場合は、きちんと穴埋めをしてくれます。

根を張った雑草を抜くことは、ずっと強い運動を要求してくるからです。

ただ、農業による運動には、一つだけ欠点があります。

それは12月中旬から2月中旬までの2カ月間が農閑期となるので、することがほとんどなくなるということです。

日の出が遅く、日没も早いので作業時間が短く、寒いのでやる気もわかず、そして何より雑草もほとんど生えてこないので、ついつい畑に行くこと自体をサボってしまいます。

この欠点をどう克服すべきなのか、答えは出ていません。

もしかすると、この2カ月間だけは、トレーニングジムに通ったほうがよいのかもしれません。

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森永卓郎(もりなが・たくろう)
1957年生まれ。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。東京大学卒業。日本専売公社、経済企画庁などを経て現職。50年間集めてきたコレクションを展示するB宝館が話題。近著に、『長生き地獄 資産尽き、狂ったマネープランへの処方箋』(角川新書)がある。

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『なぜ日本経済は後手に回るのか』

(森永 卓郎 森永 康平/KADOKAWA)

新型コロナウイルス感染症によって生じた日本経済の失速。その原因は長年続いている「官僚主義と東京中心主義」にあると、森永さんは分析します。では今後どうすれば感染拡大を抑え、経済的苦境を脱することができるのか――。豊富な統計やデータを基に導き出された、未来への提言が記された一冊です。

この記事は『毎日が発見』2022年3月号に掲載の情報です。

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