「肺がんです。ステージ4の」50歳の僕への...あまりに生々しい「宣告」/僕は、死なない。(1)

「病気の名前は、肺がんです」。突然の医師からの宣告。しかもいきなりステージ4......。2016年9月、50歳でがんの告知を受けた刀根 健さん。「絶対に生き残る」「完治する」と決意し、あらゆる治療法を試してもがき続ける姿に......感動と賛否が巻き起こった話題の著書『僕は、死なない。』(SBクリエイティブ)より抜粋。21章(全38章)までを全35回(予定)にわたってお届けします。

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「病気の名前は、肺がんです」

2016年9月1日、人生が変わった。

都内にある大学病院の狭くて薄暗い廊下から診察室に入ると、白衣を着た医師が座って 待っていた。

「えー、こんにちは、担当をさせていただきます、か・け・が・わ、と申します」

眉間に深いシワが刻まれ、苦悩が顔に張り付いたような 50代半ばの男性だった。

「刀根(とね)です。よろしくお願いいたします」

「えー、検査の結果なのですけれども......」

掛川医師は言葉を選びながらも、僕の肺の状況を淡々と、そして詳しく説明し始めた。

「これ、あなたの左胸です。ここのところ、ちょうど鎖骨のちょっと下あたりに1・6セ ンチほどの影が写っています。これですね」

彼の指差すCT画面には、他とは明らかに違う白い塊が写っていた。

「それと肺の中の空気の通り道というのがですね、この真ん中の黒くなっているところな んですけれど」と言って胸の画像で真ん中に黒く写っている通り道を指差した。

「これが右と左の肺に分かれていく、2本に分かれていくちょうどこの小股のところに、 赤いところがあります。ここも怪しい」

彼の指差した分岐点が不気味に淡い赤色を放っていた。

「なので、内視鏡の検査ではもともとの左肺の影の部分と、ここの赤く腫れている部分と、 両方検査を行なわせていただいたということです」

「内視鏡......ああ、あの口からカメラ入れたやつですね」

僕はそのとてつもなく苦しかった検査を、ちらっと思い出した。

「そう。それで、その結果なのですが......どっちも治療が必要、という結果が出たんですね」

「治療? と言いますと?」

「その病気の名前は、肺がんなんです」

「......」

「で、肺がんのうちの、顕微鏡で見た顔つきでは、腺(せん)がん」

「両方ともですか?」

「そう」

「体調はいたって元気なんですけど」

「肺がんは自覚症状が出たときには相当進んでいる可能性が高い病気なのです」

「普通に運動とかも、毎日してたりするんですけど」

「はい、気づかないケースがほとんどなのです」

「そうなんですか」

「はい。で、刀根さんの場合はどういうことかというと、母屋(おもや)がこちらで」

左胸の塊を指 差した。

「もう片方はですね、大きくなるために必ず血管をまたいでいきます」

彼の指先がCT画面の上を動く。

どうやら左胸が母屋で、気道の分かれ道のところが転 移らしい。

「血管のそばには必ずリンパの流れがあって、その両方、あるいはそのどちらかを使って 病気が身体全体に広がります。今の段階では、これが腫れているだけでとどまらず、もう 1個内側のリンパの流れにまで領域が広がっているということがわかりました」

彼はそう言うと、左肺の中にある白い部分を指差した。

そこは明らかに右よりも大きく ふくらんでいた。

「リンパにも転移している、ということですか?」

掛川医師は眉間にシワを寄せてうなずくと、さらに続けた。

「で、さらに、さらに、ペット検査で診ると......」

「さ、さらに?」

「ここに緑色の部分がありますね」

彼の指先は僕の前側の肋骨下部を指していた。

ちょうど胃の真上あたりの骨だ。

そこが ほんのり緑色に光っていた。

「これがですね、ここだとちょっと......」

「ちょっとって?」

「あのー、背中が痛いとか、刀根さんにはないでしょうか?」

掛川医師は言いづらそうに 言葉を続けた。

「ないです」

いやな予感がする。

「特にないんですね?」

「はい」

「あのー、今の段階で言いますとですね......えっとペット所見があって......お見せいたし ます」

モニターの画面を切り替える。いやな予感がさらに増す。

「病気が進行している可能性があります」

掛川医師は上目づかいに言った。

「進行?」

もう一度念を押すように、掛川医師は説明を始めた。

「で、えー、さっき言ったリンパっていうのはですね、左の肺はい門もんという場所」

「あ、さっきの分かれた部分ということですね」

僕は確認するように言った。

「そう、ここと左胸にがんがありますよ、ということになります。あとリンパで、さらに ......」

「さらに?」

「胸骨」

「胸? 胸骨⁉」

僕は慌てた。

「ここなんですが、これも......」

医師は再びモニターを指差す。

「転移している?」

思わず聞き返す。

「はい、転移している可能性があります。それで、あとですね」

「ま、まだある?」

「それで......ほんとに所見的にはですね......あのー、肺の中なんですけれど......空気は基 本的に黒く写るんです」

掛川医師は言いにくそうに話した。

「はい」

確かに僕の肺はほとんど黒かった。

「肺は風船の集まりなんで、黒いところがメインなんです。この白い筋は血管です。これ、 あなたの右胸のほう」

掛川医師は今度は右胸のCT画像を指差した。

「血管とは似ているんだけど、ここにあるプチとか、ここにあるプチとかは血管のように 見えて実は血管でない可能性がある」

僕にはその区別がつかなかったが、掛川医師は続け た。

「まー、あのー、私たちはそういったうがった目で診ていかなきゃいけないんですけど、 そうするとですね、右側の肺にもそういった場所があるのかもしれない」

「それは、右胸にも転移しているということですか?」

「うん、そう。まー、今の段階で言いますと、ペット検査で骨のことを考えないで赤いと ころだけ、骨以外の赤いところだけ、この部分と、この部分と、この部分」

掛川医師は画 面を一つずつ指差した。

「骨を入れない状態で、進行度は3のAという病期になります」

「ステージ3ですね」

「はい」

「で、骨のところまで考えますと、これ4期」

「4期......ステージ4ってことですね」

「そう。で、3A期または4期だけど、まあこの所見上からいうと4期と捉えたほうがい いのではないかと」

「うーん」

僕は言葉を失った。

次のエピソード:「5年生存率は?」ステージ4の肺がんを宣告された僕への医師の答えは.../僕は、死なない。(2)


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50歳で突然「肺がん、ステージ4」を宣告された著者。1年生存率は約30%という状況から、ひたすらポジティブに、時にくじけそうになりながらも、もがき続ける姿をつづった実話。がんが教えてくれたこと」として当時を振り返る第2部も必読です。

 

刀根 健(とね・たけし)

1966年、千葉県出身。OFFICE LEELA(オフィスリーラ)代表。東京電機大学理工学部卒業後、大手商社を経て、教育系企業に。その後、人気講師として活躍。ボクシングジムのトレーナーとしてもプロボクサーの指導・育成を行ない、3名の日本ランカーを育てる。2016年9月1日に肺がん(ステージ4)が発覚。翌年6月に新たに脳転移が見つかり、さらに両眼、左右の肺、肺から首のリンパ、肝臓、左右の腎臓、脾臓、全身の骨に転移が見つかるが、1カ月の入院を経て奇跡的に回復。現在は、講演や執筆など活動を行なっている。

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『僕は、死なない。 全身末期がんから生還してわかった人生に奇跡を起こすサレンダーの法則』

(刀根 健/SBクリエイティブ)

2016年9月、心理学の人気講師をしていた著者は、突然、肺がん告知を受ける。それも一番深刻なステージ4。それでも「絶対に生き残る」「完治する」と決意し、あらゆる代替医療、民間療法を試みるが…。当時50歳だった著者の葛藤がストレートに伝わってくる、ドキドキと感動の詰まった実話。

この記事は『僕は、死なない。 全身末期がんから生還してわかった人生に奇跡を起こすサレンダーの法則』(刀根 健/SBクリエイティブ)からの抜粋です。

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