「外に出られなかった!」介護と事故と戸締り/先に亡くなる親とアドラー心理学

ところが、そこまで過剰に注意していたのに、ある朝腰痛を訴えました。

様子を見ていたところ、次の日は前日にもまして、少しの所作にも強い痛みを訴えるようになりました。

聞けば、夜中に窓を開けて、通りかかる人に救助を求めようとしたというのです。

その日はたまたま訪問看護の日でした。

看護師さんは骨折を疑い、主治医に往診してもらったところ、腰椎圧迫骨折だろうということですぐに救急車で入院することになりました。

どうやら夜の間に転倒したようです。

あれほど注意していたのにとしばらくの間、私はすっかり落胆してしまいました。

ちょうど施設への入所が思いがけず決まり、あと数日で入所するという時でした。

これは不可抗力としかいえません。

事故が起きないように思いつく限りの工夫をしても、完全に事故を回避することはできないわけですから、過度に自分を責めないようにすることが、介護に向かうための勇気を失わないために必要です。

【次回】「あんなふうにはなりたくない・・・」在宅介護とデイサービス/先に亡くなる親とアドラー心理学

【まとめ読み】『先に亡くなる親といい関係を築くためのアドラー心理学 』記事リスト

「外に出られなかった!」介護と事故と戸締り/先に亡くなる親とアドラー心理学 172-c.jpgアドラーが親の介護をしたら、どうするだろうか? 介護全般に通じるさまざまな問題を取り上げ、全6章にわたって考察しています

 

岸見一郎(きしみ・いちろう)
1956年、京都府生まれ。哲学者。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋哲学史専攻)。著書は『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(古賀史健氏と共著、ダイヤモンド社)、『老いた親を愛せますか?』(幻冬舎)、『老いる勇気』(PHP研究所)、『幸福の条件 アドラーとギリシア哲学』(角川ソフィア文庫)など多数。

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『先に亡くなる親といい関係を築くためのアドラー心理学 』

(岸見一郎/文響社)

介護に勇気を与えてくれるアドラー心理学! 親の尊厳は保ちたいけど、介護に忙殺されるのもつらい…。親の介護が必要となったとき、それまでとは違った「親子関係」を築いていくことになります。じゃあそれって、いったいどんな関係がいい? 自身の介護経験を基にアドラー心理学の探究者が、介護に起こるさまざまな問題を“哲学”していきます。

※この記事は『先に亡くなる親といい関係を築くためのアドラー心理学 』(岸見一郎/文響社)からの抜粋です。
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