もがき抜いた末の「サレンダー」とは...「肺がんステージ4」を克服した刀根 健さんが伝えたい「心の在り方」

2017年、「肺がんステージ4」から奇跡の生還を遂げた刀根健さん。その壮絶な体験をつづった著書『僕は、死なない。』(SBクリエイティブ)の連載配信は、毎日が発見ネットで大反響となりました。3年前、末期がんと宣告され「生きる」ためにもがき続けたエピソードの裏に、どんな思いがあったのか、家族はどう感じていたのか、そして刀根さんの現在は――。そんな刀根さんの特別インタビューを、3週連続でお届けします。最終回は、刀根さんにお聞きした「生きるために大切な心の持ち方」をお伝えします。

前回の記事:末期がんに侵された僕を...妻はどう感じていたのだろう?『僕は、死なない。』刀根 健さんインタビュー

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「がんになる前」と「がんになったあと」の世界

――「がんになる前」と「がんになったあと」で、刀根さん自身の考え方が大きく変わったところはありますか?

やはり、「サレンダー体験」をしたことが大きかったですね。

サレンダーとは、降参する、明け渡す、委ねる、などの意味なのですが、僕が経験したこの体験は、ステージ4の肺がんが脳や骨など体中に転移し、「もう自分では、どうすることもできない、何もできない」という状況に直面したときに訪れました。

本でも書きましたが、これまで握りしめていた「自分で絶対にがんをどうにかしてやる!」という思いが完全に打ちのめされた結果、それを手放さざるを得なくなったのです。

つまり、今まで「自分でどうにかする」と、必死にしがみついていた「自分/自我(エゴ)」を明け渡したのですが...すると、体と心がスッと軽くなったのです。

関連記事:「やれることは全部やったけど、ダメだった」がんへの完敗を認めた僕に「訪れたもの」/僕は、死なない。(35)

――自我(エゴ)をもう少し詳しく教えてください。

自我というのは、人が「これが私」と思い込んでいる、いわゆる「自分の性格」など「自己概念(自分についての思い)」のことです。

僕たちは、生まれてきたときは皆、「名も無い真っ白な存在」ですよね。

でも、この世に生まれてみたら、「親」がいて「社会」がある。

ある意味、子供の頃は「親=社会」と言えます。

そういった「親や社会」などに「嫌われずに」「うまく受け入れてもらえる」ように、適応するプログラムが自然と作られていきます。

それが自我です。

――「自分の性格」を、コンピュータのプログラミングのように自分で作っている、ということでしょうか?

そうですね。

このプログラムは、その人の「過去の経験」から作り出されるんです。

以前こういうことがあったから、次はこうやって対処すると、自分にとって都合がよく、より生存しやすい...というような。

――その自我を、手放したほうがよい、と?

僕たちは日常で、いろんなことを考えて喋っていますよね。

これは前にもお伝えしましたが、「考える」という行為は過去か未来のことがほとんどなんです。

自我は、これまでの過去の経験で作られたプログラムですから、過去の経験をベースに、未来に向けてどう行動するかを「考える」わけです。

普段は社会で生きるために機能している自我は、頭の中で常に喋り続けています。

自我は基本的に「サバイバルのプログラム」なので、悪い予想を立ててネガティブな思考に陥りやすく、なおかつ未来のことを心配したりして、僕たち自身を不安に陥れたり、苦しめたりしてしまうんです。

ところが、サレンダーで自我が手放されると、この「プログラムされた思考パターン」が消えてしまうので、頭の中が何も無い状態、なにも喋っていない状態、スッキリとした空白の状態になり、そのまんま、「今」を「感じる」ことが出来るようになります。

「感じる」ことを取り戻すと、心が豊かになり、とても幸せな気持ちが戻ってくるんです。

――確かに私たちは、いつも過去や未来のことに悩んで、「今」を大事にできていないように思います。でも、誰もが前向きな気持ちでいられるわけではないですよね?

ええ。

以前、肺がんの患者さんたちが集まる会に参加したことがあるんです。

その会に参加されている方々は、「恐れ」にフォーカスしてしまっている人が多いように感じられました。

常に「症状が今より悪くなること」を恐れていました。

常に「この状態になったら、どの薬を使うか」というような「外的な情報」を追い求めていて、僕がいくら「心の持ち方・メンタルが大事ですよ」と言っても、あまり話を聞いてもらえなかったんです。

――原因は何なのでしょう

やはり、「サレンダー」の体験があるかないか、だと感じます。

僕は、アレセンサ(がんの分子標的薬)に出合う前は、がんが体中に転移していたので、体重が11kgも減って、血痰が出たり、歩くこともままならなかったりと、「最悪の状態」がありました。

その「どん底」を経て「サレンダー」があった。

でも僕が参加した「がん患者の会」の方々は、はじめから病院で何らかの治療を受けられていた方が多かったので、いわゆる「最悪の状態」は経験されていない人が多かったと思います。

だから「症状が悪化したらどうしよう」「転移したらどうしよう」という恐れに頭の中が支配されてしまって、その「恐れという自我」を手放せずにいたのではないでしょうか。

「今、この瞬間を感じる」重要性

――サレンダーを体験したことのない私たちが、刀根さんと同じような境地を手に入れるには、どうしたら良いのでしょうか?

サレンダーを体験するには様々なきっかけがあります。

例えば、僕がFacebookで知り合った方々の中には、がんだけではなく、離婚や借金などで「サレンダー」を体験した方もいらっしゃいました。

とはいえ、とても厳しい状態を経験したとしても、誰もが皆「サレンダー」を体験できるとは限らないと思います。

オススメは「瞑想」で「今この瞬間を感じる」トレーニングをして、下地を作っておくと良いと思います。

――瞑想の「コツ」はありますか?

瞑想には多くのやり方がありますが、「感じる」を取り戻す目的と、自分の「思考を見張る」という目的があります。

自分の頭の中に湧いてくる「おしゃべり」を客観視してみる、という訓練ですね。

先ほどの「自我(エゴ)」との話と似ているのですが、思考を観察することで、その思考自体から離れる、というトレーニングです。

これを練習していくと、頭の中にネガティブな思考が湧いて出てきたときに、パッと掴んで「これはいらない思考だ」と捨てることが出来るようになります。

続けていくうちに、だんだん頭がネガティブな思考に支配されなくなるので、体自体もネガティブに反応しなくなります。

「ネガティブ」という感情にとらわれなくなるんですね。

「瞑想」をマスター出来れば、自分を上手にコントロール出来るようになりますよ

――やっぱり「メンタル」は大切なのですね。

第1回のインタビューでもお伝えしましたが、メンタルはすごく大きなポイントです。

関連記事:「肺がんステージ4」奇跡の生還から3年。『僕は、死なない。』刀根 健さんの現在は...⁉

とにかく、余計なことを考えないで常にいい気分でいる。

これを第一優先にしています。

ネガティブなことを考えていると、自律神経が乱れて体が「ネガティブに反応する」話はお伝えしましたが、それはがんにも言えること。

体に含まれる白血球には、通常、顆粒球(かりゅうきゅう)、がん細胞をやっつけるリンパ球、それからそのふたつの元になるマクロファージがあるのですが、不安や緊張状態になると、交感神経が優位になって顆粒球の割合が大幅に増えるんですよ。

ということは、交感神経優位で生きていると、がん細胞をやっつけてくれるリンパ球の割合が減ってしまうので、がんになりやすいという学説もあるんです。

絶望的な状況から「生きる」ことを引き寄せた力とは

――刀根さんは、ステージ4の肺がんから「アレセンサ」という薬を「引き寄せた」とも言えますよね。私たちが日常でできることってあるのでしょうか。

もちろんありますよ。

結果を求めて「引き寄せ」をするのではなく、まず、普段から自分の在り方や気持ち、つまり「愛」や「喜び」などを感じることを大切にすることです。

言い換えると、自分の周波数を上げることですね。

それはつまり、繰り返しになりますが、「現在」を楽しく過ごす、ということですね。

――周波数...。そもそも、「引き寄せ」ってどう説明したら良いでしょう?

ええと(笑)。

量子力学的にいえば、世の中は全て「エネルギーのかたまり」なわけです。

あらゆる出来事は、自分と分離しているものではなく、全てがつながっているんです。

僕たちは目に見える「体」を持っていますから、みんな「物質」として分かれているように感じますが、水が「氷」「水」「水蒸気」の状態になっても同じものであるように、僕たちの体は「物質」化しているエネルギーに過ぎないんですよ。

そして、エネルギーに境界線はありません。

すべてはつながっている。

ですから、僕たちが「愛」とか「感謝」といった微細な周波数で自分の周波数を上げていくと、それに合わせた現実がやってくるんです。

「投げたボールが、返ってくる」ということですね。

これが引き寄せだと思っています。

まあ、簡単に言えば「自分がいい気分でいることに集中すれば、なんかいいことがやってくるよね」ってことです。

――時間と文字数が全く足りません...。また別の機会にじっくりと聞かせてください(笑)。最後になりますが、人間関係やお金、健康の悩みを抱えている読者の方も多いと思うので、刀根さんからエールをいただけますか?

僕は、「どうにか出来ることには勇気を。どうにもならないことには落ち着きを。その見極めには知恵を」ということわざを大事にしています。

皆さんも、どうにもならないことを「ああでもない、こうでもない」と考えて、昔の僕のようにドツボにはまり、ストレスを抱えてしまうことがあると思うですね。

でも、自分ではどうにもならないことで悩んでも、仕方がないんです。

例えば「変えられない、過去の出来事」に悩む、とかね。

「他人と過去は変えられない」ということわざもありますしね。

「どうにもならないことを気にするのをやめる」ことから、はじめてみませんか。

それが「サレンダー」の第一歩だと思います。

取材・文/斎藤諒子

『僕は、死なない。』を読んでみる:「肺がんです。ステージ4の」50歳の僕への...あまりに生々しい「宣告」/僕は、死なない。(1)

【まとめ読み】『僕は、死なない。』記事リスト
shoei001.jpg50歳で突然「肺がん、ステージ4」を宣告された著者。1年生存率は約30%という状況から、ひたすらポジティブに、時にくじけそうになりながらも、もがき続ける姿をつづった実話。がんが教えてくれたこととして当時を振り返る第2部も必読です。

 

刀根 健(とね・たけし)

1966年、千葉県出身。OFFICE LEELA(オフィスリーラ)代表。東京電機大学理工学部卒業後、大手商社を経て、教育系企業に。その後、人気講師として活躍。ボクシングジムのトレーナーとしてもプロボクサーの指導・育成を行ない、3名の日本ランカーを育てる。2016年9月1日に肺がん(ステージ4)が発覚。翌年6月に新たに脳転移が見つかり、さらに両眼、左右の肺、肺から首のリンパ、肝臓、左右の腎臓、脾臓、全身の骨に転移が見つかるが、1カ月の入院を経て奇跡的に回復。現在は、講演や執筆など活動を行なっている。

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『僕は、死なない。 全身末期がんから生還してわかった人生に奇跡を起こすサレンダーの法則』

(刀根 健/SBクリエイティブ)

2016年9月、心理学の人気講師をしていた著者は、突然、肺がん告知を受ける。それも一番深刻なステージ4。それでも「絶対に生き残る」「完治する」と決意し、あらゆる代替医療、民間療法を試みるが…。当時50歳だった著者の葛藤がストレートに伝わってくる、ドキドキと感動の詰まった実話。

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