あなたが学んだこと、もう消費期限です。人生100年をサバイブするための「大人の教育」と「10連休」

定年退職の後や年金受給の時期など、考えなければならないことが山ほどある「老後の暮らし」。哲学者・小川仁志さんは、これから訪れる「人生100年の時代」を楽しむには「時代に合わせて自分を変える必要がある」と言います。そんな小川さんの著書『人生100年時代の覚悟の決め方』(方丈社)から、老後を楽しく生きるためのヒントをご紹介。そろそろ「自分らしく生きること」について考えてみませんか?

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大人も遊びみたいに勉強をすればいい

人生100年時代に考えないといけない教育は、子どものための教育ばかりではありません。

大人のためのリカレント教育(生涯学習)こそが、より重要になってきます。

なぜなら、子どもの頃に学んだことは、すぐに消費期限が到来し、もう役に立たなくなってしまうからです。

賞味期限ではなく、消費期限である点がポイントです。

なぜなら、時代の変化が激しいうえに、現役で働く期間が長くなるわけですから、10代の頃に学んだものだけで残りの80年を生き抜いていくのは不可能です。

極端にいえば、10年ごとに学び直しをするくらいの覚悟がいります。

それに加えて、日頃から新しいことを学ぶという習慣を身に付ける必要があるでしょう。

10年に1回学ぶのは大きな学問であって、日々の業務に求められる新しい知識は、もっと頻繁に学ばないと時代の変化に追い付かないでしょうから。

そのようなことをいうと、しんどい時代だなと感じられるかもしれません。

でもそれは、これまでの学校教育がしんどいものだっただけです。

遊びを毎年やれといわれて嫌な人はいないでしょう。

とするならば、遊びみたいに勉強をすればいいだけのことです。

教育がそんなふうに変わってくれば、それをしんどいと思う人はいなくなるはずです。

楽しいことでしかありません。

私もそうです。

私の場合、会社を辞めて人生挫折してはじめて、自分のやりたいことに出逢いました。

そう、哲学です。

だから哲学を学ぶ過程は自分の人生の問題を解くプロセスであり、純粋に楽しい時間でしかありませんでした。

苦しいと思ったことは一度もありません。

まさにリカレント教育として哲学を学んだわけですが、しかもそれがキャリアチェンジにもつながりました。

その後も関心を持つごとに、さまざまな新しいことを学んでいます。

これからはこうした学び方が増えていくのではないかと思います。

10連休をとれる制度を作る

そのためには、長期休暇を増やす必要があります。

有給休暇も消化できない企業風土の中で、なかなか実現困難なことかもしれませんが、これからはそうでないと人生100年時代を生き生きとすごせる人材を育てることはできません。

ひいてはそれは企業の活力にもつながってくるのです。

私が長期休暇の重要性を痛感したのは、ある二つの経験からです。

一つは高専勤務時代にとったサバティカル、いわゆる研究休暇です。

もう一つは、新天皇即位に伴い10連休となった2019年のゴールデンウィークです。

私はサバティカルで新しいことを学ぶことができました。

それは日本哲学です。

海外で日本哲学を学ぶというのはおかしな話に聞こえるかもしれませんが、やはり外に出て見ると日本のよさがわかるものです。

それに自分がいかに日本のことを知らないかということも痛感させられます。

そこでまとまった時間がとれたことから、日本哲学を勉強し直しました。

海外の研究者たちとも議論をしながら、日本の思想はどうあるべきかを考えたのです。

それは私にとって新しい分野を切り開く大きなきっかけになりました。

帰国後しばらくは日本の思想について論じ、本を書いたりすることになったからです。

もし日本で日々の仕事に追われているだけだったら、こうした新しいことを身に付ける時間はなかなかとれなかったでしょう。

多分10年くらいかかっていたと思います。

2019年の10連休については、少しおおげさな言い方をすると、これまでの生き方さえも考え直すきっかけになりました。

それまでの私は、ただがむしゃらに働き、成功することだけを目指していました。

だから休みをとることもなかったのです。

ところが、この10連休は強制的に休まされました。

なぜなら、みな自粛ムードでなぜかメールなどを送ってこなかったのです。

そこで私もあえてガツガツ働くことを控え、割とのんびりすごしたのです。

そうすると、今までにない幸福感にとらわれたのです。

心も身体も、休めると元気になります。

当たり前のことですが、なかなか日本人はそれに馴れていません。

休日でも働いてしまうのはそのためです。

だから強制的に休まされてはじめて、休みの意義に気づくのです。

こういうことは、みんなが一斉に休まないと起こりません。

だから仕事をしてはいけないムードの連休が必要だと思うのです。

しかも3連休とかケチなことをいわずに、10連休くらいとらないと完全にはリフレッシュできません。

欧米のバカンスみたいなものです。

欧米のバカンスみたいに年に一回一か月間休むのもいいですが、それだと仕事への支障が大きそうなので、2か月に1回くらい仕事をしてはいけない10連休をとる制度を作ればいいのです。

こちらは主に心身のリフレッシュのためですが、もちろん10日もあれば新しいことにチャレンジしたり、何かを身に付けたりということも可能です。

それが心身のリフレッシュにつながればいいのですから。

このようなサバティカルや10連休は、いかにも企業のマイナスになると考えられがちですが、そこが間違っているのです。

生産性というのは、疲れた社員が10日間かけてやるよりも、元気でレベルアップした社員が1日でやったほうがよっぽど上がります。

サバティカルでパワーアップした社員が、1年で2年分、いや10年分の成果を上げてくれれば大儲けです。

人生100年時代においては、個人にとっても企業にとってもそういう大胆な発想の転換が必要なのです。

しがたって、リカレント教育の一環として、こうした費用を捻出すればいいのです。

十分元がとれるはずです。

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あなたが学んだこと、もう消費期限です。人生100年をサバイブするための「大人の教育」と「10連休」 117-H1.jpg哲学者が語る20の人生訓や新時代への考え方など、人生を豊かにしてくれる言葉が全5章にわたってつづられています

 

小川仁志(おがわ・ひとし)
1970年京都府生まれ。哲学者・山口大学国際総合科学部教授。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。大学で新しいグローバル教育を牽引するかたわら、「哲学カフェ」を主宰する。NHK・Eテレ「世界の哲学者に人生相談」に指南役として出演。最近はビジネス向けの哲学研修も多く手掛けている。

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『人生100年時代の覚悟の決め方』

(小川仁志/方丈社)

現在40歳の人の平均余命は残り44年。人生もう1回分あるのが今の時代です。これまでの価値観や方法は通用しないかもしれません。時代の変化に合わせて、自分を変えて、老後や余生を自然体で生きれるように。これからの人生を準備するための一冊です。

※この記事は『人生100年時代の覚悟の決め方』(小川仁志/方丈社)からの抜粋です。

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