何歳からでも人生は変えられる。坂東眞理子さんが考えさせられた「名映画」

なんだかうまくいかないあなたに、ベストセラー作家・坂東眞理子さんが伝えたいことは「自分がどうありたいか」を真剣に考えた方がいいということ。今回は、坂東さんの新刊『「自分」を生きる~上手に生きるより潔く~』(あさ出版)から、生き方に迷ったときに道しるべとなる珠玉のメッセージをお届けします。

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81歳で人生を取り戻した女性

60年以上ハリウッド女優として様々な名作に主演し、魅力的な女性像を創造し続けてきたシャーリー・マックレーンは老いてもなお、輝かしくエネルギーに満ち、目的達成のために全力を尽くす新しい魅力的な女性像を演じています。

先日観た、彼女主演の映画「あなたの旅立ち、綴ります(原題:The Last Word)」もまた、考えさせられるところがたくさんありました。

シャーリー演じる80歳を過ぎたハリエットは、ビジネスの成功者。今は引退して大きな邸宅に一人、贅沢に暮らしています。

ある時、地元の新聞である人の訃報記事(死亡記事)を目にしたハリエットは、自分が死んだ時の記事がどうなるかを読みたいと考え、アンという地元紙の若い記者に自分の訃報記事の原稿を書くよう依頼しました。

早速、アンがハリエットについて取材を始めると、聞こえてくるのは悪評ばかり。

かつての仕事仲間から地元の牧師まで、誰一人よい評価を口にしません。

自己主張が強く、妥協を許さない性格から、友人もなく、離婚してからは、前夫とも愛娘ともまったく会わずに人生を送っていること、自分の創業した広告会社の経営からも追い出されていたことがわかりました。

アンは取材の結果を正直にハリエットに伝え、記事原稿を提出します。

理想とかけ離れた訃報記事原稿を見たハリエットは、「最高の訃報記事」を書いてもらえるような人物になるために、生き方を変えることを決意したのです。

ここからの彼女が本当にすごい。

81歳ともなると、多くの人は自分への悪評を聞いたら落ち込み、孤独を突きつけられたら絶望し、これまでの生き方を悔やみ、これ以上嫌われないように気をつけ、反省し、委縮した状態で生きて人生の終わりを迎えるのではないでしょうか。

ところが彼女は「最高の訃報記事」に不可欠な四つの条件、「記憶に残る特別なことをする」「他人の人生に影響を与える」「家族や友人に愛される」「同僚に尊敬される」を満たすために、大胆に行動を起こしたのです。

まずは一つめの条件「記憶に残る特別なことをする」を達成するために、地元のラジオ局にこれまで集めた大量のレコードと企画を持ち込み、81歳のDJとしてデビューします。

次に、「他人の人生に影響を与える」を達成するために、コミュニティセンターから紹介された貧しい9歳の少女、ブレンダを引き取り、勉強を教えたり、旅行に連れ出したりして、影響を与え、彼女の成長を手助けします。

続いて「家族や友人に愛される」を得るために、勇気を出して、元夫や音信不通だった娘を訪ねます。

対立して別れていた娘が幸福な結婚生活と子どもを手にしていたことを知り、ハリエットは心から喜びます。

さらに、彼らとあらためて話したことにより、究極のところで、彼らはハリエットの性格や能力を理解してくれていたこともわかり、最難関の条件もクリアします。

そして、最後の条件、「同僚に尊敬される」。

そもそもハリエットが会社を興したのは、アメリカでも女性の活躍に偏見や反感があった時代。

おそらく、当時女性が成功するには、猛烈に働くことはもちろん、男性以上の能力、意思を貫き通す強さが求められたはずです。

そして、その強さがハリエットにはあった。

だからこそ、会社を成功に導くことができたのですが、その強さが、部下や家族との対立を引き起こしてしまったのです。

時を経て再会したかつての部下、同僚たちも、実際は彼女の能力と仕事への貢献、厳しい働きぶりを尊敬していました。

こうして見事に四つの条件を達成したハリエット。

しかしそんな折、彼女は医師より「心臓が悪く、長く生きられない」と宣告されます。

彼女は再度、訃報記事を書いてほしいとアンに依頼。

そして、アンとブレンダと幸せな時間を分かち合う中、彼女は死を迎えます。

お葬式では、アンが心のこもった最高の弔辞を読み上げたのでした。

何歳であっても行動したら明日が変わる

私も様々な女性たちと出会い、お話ししますが、結婚し、子どもを持つ女性の多くが新しいチャレンジをあきらめてしまっています。

人生100年時代、長い人生が待っているのに、「子どもがいるから、もうできない」「家族の世話があるから無理」などと言い訳をして意欲や行動を止めてしまうのです。

それがいかにもったいないことであるかを、この映画は教えてくれます。

年齢、自分の才能、環境、家族など、何もしないための言い訳の種は、探せば探すだけ、それこそ山ほどあります。

もちろん人生は思うようにいかず、目的を達成しないうちに終わるかもしれません。

それでも全力を尽くして人生を生きることによって、自分にも、周りにも変化と影響を与えます。

それが、あなたの生きた証になります。

この映画の主人公はハリエットで、彼女が人生を変えていく過程を描いていましたが、記事の執筆を頼まれた若いアンもまた、ハリエットと一緒に過ごしたことにより、刺激を受け、エネルギーをもらうことで変わっていきました。

悪ガキのブレンダもハリエットの行動に影響を受け、変化しています。

81歳の女性の一つの決断と行動が二人の人生を変えたのです。

終活も結構、断捨離も結構。

それで気持ちがすっきりする人もいるでしょう。

でもそれは、他人に迷惑をかけない、負の遺産を残さないという消極的な活動であり、生き方です。

数えきれない多くの先祖の命を受け継ぎ、困難を乗り越えて生きてきたあなたが、今、その場所に存在している意昧は必ずあります。

もう少し、自分の人生に積極的になり、自分の生きた証を残すために、何かよい影響を与えるために、すべきことを考えてはいかがでしょうか。

これまでの人生を振り返り、これから何ができるかを真面目に考えてみてください。

私の周りでも愛媛県の松本さん、埼玉県の野中さんは、80歳を超えても積極的に人の世話をし、若い人を応援し、人に何かを与え続けていました。

人生を全力で生きた彼女たちの姿は、共に生きた人たちの心に刻まれ、亡くなった後も私を含め、たくさんの人の心の中で生き続けます。

あなたの生き方を終うのではなく、遺してみませんか。

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何歳からでも人生は変えられる。坂東眞理子さんが考えさせられた「名映画」 092-H1-zibunwoikiru+.jpgベストセラー作家が伝えたい、自分を大切にして生きるための36のメッセージがつづられています

 

坂東眞理子(ばんどう・まりこ)

富山県生まれ。昭和女子大学理事長・総長。東京大学卒業後、69年に総理府入省。内閣広報室参事官、男女共同参画室長、埼玉県副知事などを経て、98年、総領事(オーストラリア・ブリスベン)になる。2001年、内閣府初代男女共同参画局長を務め退官。04年に昭和女子大学教授、同大学女性文化研究所長。07年に同大学学長、14年から理事長、16年から現職。330万部を超える大ベストセラーになった『女性の品格』(PHP研究所)、『70歳のたしなみ』(小学館)ほか著書多数。

092-H1-zibunwoikiru++.jpg『「自分」を生きる~上手に生きるより潔く~』(坂東眞理子/あさ出版)

「女性」について深く考察してきた著者が、自分を大切する方法や、人生を積極的に生きるヒントを教えてくれます。落ち込んでいたり、ふさぎ込んでいる気持ちが明るくなり、なりたい自分になれる言葉がたくさん詰まった一冊です。

※この記事は『「自分」を生きる~上手に生きるより潔く~』(坂東眞理子/あさ出版)からの抜粋です。

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