散らかっていない。悪臭もない。でも見てしまった...義実家のあちこちに貼られた「手紙らしきもの」/別居嫁介護日誌

「妊娠・出産・育児」をすっとばして、いきなり「介護」が始まった! 離れて暮らす高齢の義両親をサポートしている島影真奈美さん。40代にさしかかり、出産するならタイムリミット目前――と思っていた矢先、義父母の認知症が立て続けに発覚します。戸惑いながらも試行錯誤を重ね、いまの生活の中に無理なく介護を組み込むことに成功。笑いと涙の介護エピソードをnoteマガジン『別居嫁介護日誌』からご紹介します。なんとなく親の老いを感じ始めた人は必読!


こんにちは、島影真奈美です。「もの忘れ外来、受診してみませんか?」という提案を、義父母がやけにあっさり受け入れてくれた前回。あれ以来、義父母から電話はかかってきておらず、1ヶ月過ぎ、2ヶ月が過ぎ、気づけば年末に。結局、もの忘れ外来を受診したのかどうかもわかりません。夫も気がかりだったのか、年明けに実家の様子を見に行くという話が持ち上がりました。

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「次の正月の集まりは、帰りに実家寄ってみようか」

夫とそんな話になったのは、2016年の12月も半ばになった頃のこと。義父母にもの忘れ外来の受診を勧めてから2ヶ月近くが経っていた。義父母からはあれ以来、まったく連絡がなかった。もの忘れ外来の受診がどうなったのか、気になりながらも、こちらから問い合わせるのも気が引けて、そのままになっていた。

毎年、正月になると夫の実家では、義父母と義姉夫婦、姪たち、そして私たち夫婦も加わって「ファミリー新年会」が開催されていた。以前は実家に集まっていたが、ここ数年は近所の寿司屋に集合するのが定番だった。

例年なら、新年会で数時間の"義理"を果たしたら、「俺たち、仕事もあるから」と早々に離脱する。でも、今回は少々事情が異なる。いつもなら「放っておいていいよ」「気にしすぎ」と笑い飛ばす夫が、「やっぱり、一度実家の様子を確認したほうがいいな」と神妙な顔をしている。ノンキに先送りしているように見えて、夫は夫なりに何か思うところがありそうだった。

当時、義姉には実家との一連のやりとりを伝えていなかった。どう説明すればいいかよくわからなかったし、断片的な情報を伝えるのはかえって混乱を招くような気もしていた。

そもそも、義姉と会うのも義父母同様、年に1回、ファミリー新年会で顔を合わせる程度。
接点がなさすぎて、キャラクターも行動特性もつかめていない。唯一確信が持てたのは、歳が離れた姉として、かなり強めの"姉貴風"を吹かせることがあるということぐらい。そしてその矛先はもっぱら実の弟に向かい、"弟の嫁"である私は暴風圏外だった。義姉の対応をすべて夫に任せると、気の毒なことになりそうな予感がした。

「どうやって伝えるのがベストかも含め、現地の状況を確認し、情報を整理した上で考えよう」

それが私たち夫婦の結論だった。気持ちとしては、いたって前向きなつもりだったけれど、行動としては全力で腰が引けていた。

 

さらに、もうひとつ課題があった。毎年、新年会がおひらきになった途端、そそくさと帰ろうとする我々が「実家に寄りたい」などと言い出したら、ほかの家族は間違いなく不審に思う。義父母に警戒心を与えてしまっては、元も子もない。

そこで、私たちは小芝居を打つことにした。あらかじめ、高齢者に人気だと話題になっていた「コードレススピーカー付きのテレビリモコン」を購入。そして新年会当日に、夫が「親父の米寿の祝いをしそびれたのでプレゼントを持ってきたんだけどさ」と、おもむろに切り出すという内容だ。

さらに「このまま渡したいところだけれど、ちょっと設定が必要なので、帰りに寄ってもいいか」と畳みかける。改めて振り返ると、ずいぶん大げさなやりとりだ。ただ、そんな前フリが必要なぐらい、疎遠な親子だったのだ。

義父は疑う様子もなく、「そうか」とうなずいた。義母も「あら、全然片付いてないわよ」と言いながら、うれしそうだった。

「お邪魔しまーす」

玄関の印象は以前とさほど変わらなかった。極端に靴が散らかっていたり、ごみが放置されたりしている様子もなくホッとする。悪臭もない。ごく普通の玄関に見えた。ところが、手を洗おうと、洗面所に向かう途中、違和感を覚えた。

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目の前のドアに、「拝啓 名前も知らぬ貴女へ」から始まる手紙らしきものが貼ってある。几帳面な文字でメッセージがびっしり綴られている。よくよく見ると、居間へと続くドアや和室のふすまなど、部屋中のあちこちに何枚も便せんが貼られていた。

 

●今回のまとめ
・親と電話で話すだけではわからないことがたくさんある
・人目につくはずの「玄関」が荒れているのは要注意のサイン
・きょうだいに"異変"を打ち明けるタイミングは想像以上にむずかしい

 

次の記事「「お願いだから出て行ってください」義父母が書いた見知らぬ女性への手紙がツッコミどころ満載!/別居嫁介護日誌(7)」はこちら。

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イラスト/にのみやなつこ

 

島影真奈美(しまかげ・まなみ)

フリーのライター・編集として働くかたわら、一念発起し、大学院に進学した数ヵ月後、夫の両親の認知症が同時発覚。なりゆきで介護の采配をふるうことに。義理の関係だからうまくいくこと、モヤモヤすること、次から次へと事件が勃発。どこまで理解しているのか謎ですが「ぜひ書いて!」という義父母、義姉、夫の熱烈応援(!?)に背中を押され、この体験記を書き始めました。

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