「お願いだから出て行ってください」義父母が書いた見知らぬ女性への手紙がツッコミどころ満載!/別居嫁介護日誌

「妊娠・出産・育児」をすっとばして、いきなり「介護」が始まった! 離れて暮らす高齢の義両親をサポートしている島影真奈美さん。40代にさしかかり、出産するならタイムリミット目前――と思っていた矢先、義父母の認知症が立て続けに発覚します。戸惑いながらも試行錯誤を重ね、いまの生活の中に無理なく介護を組み込むことに成功。笑いと涙の介護エピソードをnoteマガジン『別居嫁介護日誌』からご紹介します。なんとなく親の老いを感じ始めた人は必読!


久しぶりに訪れた夫の実家で、部屋のあちこちに何枚もの手紙が貼り付けられているのを発見してしまった前回。その手紙は、義父母がしきりに「自宅の2階にすんでいる」と訴えていた"女ドロボウ"に向かって書かれたものでした。中身を読めば読むほど、こちらも混乱。大変なことが起きているのは間違いないと思うのですが、何をどう切り出せばいいものやら......。

前の記事「散らかっていない。悪臭もない。でも見てしまった...義実家のあちこちに貼られた「手紙らしきもの」/別居嫁介護日誌」はこちら。

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「他人の家に断りなく入り込むのはやめてください」
「大切なものがなくなった気持ちを考えたことがありますか」
「お願いだから出て行ってください」

そんなフレーズが繰り返し登場する手紙はひと目見た瞬間、例の"見知らぬ女性"に宛てたものだとわかった。便せんにびっしり綴られた手書きの文字から、義父母の本気度が伝わってくる。隣にいた夫に「あれ、撮っておいて」と小声で伝えると、無言でうなずき、かばんからデジタルカメラを取り出した。

「見知らぬ貴女へ」に対する手紙はどれも、驚くほど長かった。厳しい口調で不法侵入を問い詰めたかと思うと、「子どものとき、友達のおもちゃは友達に断ってから使わせてもらいましたよね」と改心を促す。さらには、「私たちは子どもの支えになりたいのに、それができないのがつらい。あなたが出て行ってくれさえすれば......」と泣き落とす。

年明け早々に書かれたらしき手紙に至っては「新年おめでとうございます」で始まり、なぜか「初詣に行ってきます」と"女ドロボウ"に向かって報告。「お正月のおせちが机の上にあります。少しずつですがお召し上がりください」というメッセージまで添えられていた。下宿のおばちゃんと店子か。

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もはや「見知らぬ貴女」に対して、義父母がどういう感情を抱いているのかもよくわからない。思い切って、この手紙について聞いてみたほうがいいのか。さすがにそれはまずいのか。

結局、私たち夫婦は手紙について触れることはできなかった。ドアや壁のあちこちに貼られているビジュアルだけでも十分衝撃的なのに、中身もぶっ飛んでいる。あまりにもツッコミどころが多すぎて、何も言えなくなってしまったのだ。

 

そうこうしているうちに義母が唐突に「最近、物騒になっていて困るの」と、女ドロボウの話をし始めた。義父もすかさず「そうそう」と会話に加わり、「早く出て行って欲しいんだが......」と、憂うつそうに言う。夜中になると2階から1階に降りてきて、タンスを引っかき回し、現金や通帳、義母のお気に入りのカーディガン、さらにはパンツ(!)まで盗んでいくという。

「ぶっちゃけ、認知症の症状じゃないですかね?」というセリフがのど元まででかかった。でも、さすがにそれを言うのはまずいだろうと踏みとどまった。自分の親なら言ってしまったかもしれない。

苦しまぎれに「防犯カメラをつけてみるのはどうですか?」と提案すると、義母が「それはいいアイディアね!」と大喜びで飛びつく。ただ、すぐに顔を曇らせて、でも、あの方がどう思うか......見張られているみたいで、気を悪くするんじゃないかしら」なんて言い出す。

義母が言う"あの方"というのは、例の女ドロボウである。いやいやいや、おかあさん、見張られていると思ってくれたらむしろ好都合。部屋に入りづらくなるので、狙い通りなのでは......。気遣いのポイントがどうもよくわからない。

「だって、すごくズル賢い人なのよ」
「監視されてるって、ちょっと気分が良くないわよね」
「防犯カメラの死角になるところで盗むんじゃないかしら」

義母はしきりに訴え、話が一向にまとまらなかった。義父は「せっかくだから試してみてはどうか」と乗り気になっていたが、義母は納得しない。「よさそうな防犯カメラを探して、それから考えよう」と話を切り上げ、実家訪問は終了した。

ただ、結局のところ、防犯カメラは設置しなかった。帰宅後、今度は夫が「防犯カメラはマズいかもしれない」と言い出したのだ。

現時点では、タンスから洋服を盗まれたのも、引き出しから現金がなくなるのも、すべて"女ドロボウのせい"ということになっている。でも、実際には自分たちでどこかに移動させている可能性が高い。防犯カメラをつけてしまうと、その一部始終が明るみに出てしまうのではないか、というのがその理由だ。

「一連の"犯人"が、じつはおふくろだと気づいたとき、親父はどう反応するのか、正直言って想像がつかない。ギリギリのところで均衡が保たれているのが、一気に崩壊する可能性もあると思う」

ものすごくありそう!!! 何が起きているのか知りたいのは山々だけど、夫婦仲が険悪になるのは避けたい。盗った・盗られたの夫婦ゲンカの仲裁なんかしたくない。防犯カメラ、やめよう! 即決だった。

大丈夫、我々にはまだ「もの忘れ外来受診」という希望がある。親自身が「近々受診するつもり」と言っているのだから、その時期さえ来れば、何か進展する。親の気が変わらないよう、静かに待ってさえいれば、きっと......。

でも、義父母からは「受診した」という連絡は一向に入らず、こちらからも積極的にアプローチをしないまま、時間だけが過ぎていった。

 

●今回のまとめ
・「なんじゃこりゃ!」な場面は、さりげなくスマホやデジカメで撮影する
・びっくりしすぎるとこちらの記憶も曖昧になるので、注意が必要
・メモや写真などの記録があると、のちのちのもの忘れ外来受診にも役立つ

 

次の記事「疲労困憊の末つい言ってしまった「介護のキーパーソン引き受けます」宣言/別居嫁介護日誌(8)」はこちら。

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イラスト/にのみやなつこ

 

島影真奈美(しまかげ・まなみ)

フリーのライター・編集として働くかたわら、一念発起し、大学院に進学した数ヵ月後、夫の両親の認知症が同時発覚。なりゆきで介護の采配をふるうことに。義理の関係だからうまくいくこと、モヤモヤすること、次から次へと事件が勃発。どこまで理解しているのか謎ですが「ぜひ書いて!」という義父母、義姉、夫の熱烈応援(!?)に背中を押され、この体験記を書き始めました。

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