知らない女性が義実家に勝手に出入り⁉ これは単なる空き巣話でないと直感/別居嫁介護日誌

「妊娠・出産・育児」をすっとばして、いきなり「介護」が始まった! 離れて暮らす高齢の義両親をサポートしている島影真奈美さん。40代にさしかかり、出産するならタイムリミット目前――と思っていた矢先、義父母の認知症が立て続けに発覚します。戸惑いながらも試行錯誤を重ね、いまの生活の中に無理なく介護を組み込むことに成功。笑いと涙の介護エピソードをnoteマガジン『別居嫁介護日誌』からご紹介します。なんとなく親の老いを感じ始めた人は必読!



こんにちは、島影真奈美です。義母(当時86歳)から突然電話があり、「息子が浮気をした挙句、実家から現金を持ち出したのではないか」という珍妙な推理を聞かされた前回。
あまりの信用のなさに、夫が気の毒になるやら、おかしいやら。でも、笑っている場合ではなかったようです。今度は義父(当時89歳)から奇妙な電話がかかってきました。

pixta_32853485_S.jpg前の記事「義母からの突然の電話。消えた3万円、男ものの傘...夫が実家から金を盗んだ⁉/別居嫁介護日誌(1)」はこちら。

 
浮気窃盗疑惑事件から半年ほど経った頃、携帯電話に夫の実家から着信があった。留守電を聞くと、義父の声で「警察から連絡がいくかもしれないので、そのときはよろしく」とメッセージが残されていた。

何のことやら、さっぱりわからない。あわてて夫の実家に電話をかけると、義父が出た。

「ああ、電話ありがとう。こちらは元気にやっています。そちらはどうですか」

「はい。おかげさまで元気に......いや、あの、そうじゃなくて、さっき留守電聞いたんですけど、警察からの連絡というのは......?」

「ああ、あれね。どうも留守中に泥棒にやられたようで、今日警察署に届けてきました」

義母が「主人は警備会社が怪しいって言うんですけどね」と言っていたのを思い出す。あの盗難騒ぎが再燃しているのだろうか。

「それは......大変でしたね。おとうさん、おかあさんが無事でよかったです。......ちなみに被害に遭われたのはいつ頃ですか」

「数日前に買い物から帰ってきたら、部屋の様子がおかしくてね。調べてみたら案の定、現金や通帳がなくなっていて......。すぐに110番通報したんだが、やってきた警官というのにどうもやる気が見られなくて。それで仕方なく、こちらから警察署のほうに出向くことにしました」

「そうでしたか......でも、ご無事で何よりでした」

例の話とは別件らしい。義母の話を聞いたときは、単なる記憶違いだとタカをくくっていたけれど、本当に空き巣被害に遭っていたとしたら申し訳ない。でも、警察署に届けたなら、見回り強化など何かしら手は打ってくれるだろうし、結果オーライかもしれない。さすが、おとうさん! だが、話はそこで終わらなかった。

 

「持っていかれた現金はおそらく出てこないでしょうな。まあ、なくなったと言っても数万円だし、通帳は再発行すればいい。ただ、知らない女性が勝手に出入りするのだけはなんとかしてくれないと困るんだが......」

「え? 勝手に出入り......ってどういうことですか」

「僕も詳しいことはよくわからんのですよ。家内に代わるので聞いてやってください」

いや、おとうさん、ちょっと待って。引き留める間もなく、電話の向こうで「おーい、電話だぞ。おーい、おーい」義父が叫び始めた。そして、義母が電話口に現れた。いつもにも増してテンションが高い。

「あらー、わざわざお電話くださったの。ご心配かけてごめんなさいね。あの人ったら、わざわざ電話なんてしたら心配かけるだけよって止めたのに。あの子、どうしてますか? 風邪引いてないかしら」

「風邪ひとつひかず、元気にやってます。それはそうと、あの......知らない人がご自宅に......と、おとうさんに伺ったんですが」

「そう! そうなの。本当に厄介な思いをしているんだけど、こんなこと、どなたに相談すればいいのかわからなくて」

義母は急に声を潜めると「知らない女性が勝手に出入りしているの」と、義父と同じフレーズを繰り返した。盗難騒ぎで警察を呼んだとき、集まってきた野次馬の1人だという。

「それ、ものすごく迷惑じゃないですか! どんな人なんですか?」

「ちょっと小太りの女性ね。年齢はあなたと同じぐらいか、もう少し年上かしら。ご近所のみなさんが帰られた後も、その人だけが残っていてね。なんだか気味が悪いなとは思っていたんだけど。じーっとこっちを見ていたと思ったら、空いていた1階の窓からバッと入ってきてね、そのまま、押し入れのふすまを開けて、スルスルーッと天袋を通って、2階に上がっちゃったの。びっくりしちゃうわよねえ」

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「そ、それは驚きますね......」

何かとんでもないことが起きていると直感した。これは単なる空き巣話ではない。でも、その「何か」の正体がわからない。もっと詳しく話を聞く必要がある。でも、どう質問すればいいのか。焦るわたしを尻目に、義母の声が底抜けに明るい調子に戻った。

「もう、こんな話を聞かせちゃってごめんなさいね。でも、大丈夫だから、あんまり気にしないで。あなたも仕事が忙しいでしょうから、そろそろ電話切りますね。あの子にもよろしく伝えてください。さようなら、お元気でね」

一方的に言うと、義母は電話を切ってしまった。

 

●今回のまとめ
・もの忘れ由来の窃盗騒ぎは認知症に限らず、"高齢者あるある"
・ただ、本当に盗まれていることもあるので軽視は禁物
・あれ? と思ったら、まずは傾聴し、情報収集しよう
・あわてて問い詰めたり、否定したりすると何も話してくれなくなるので注意が必要

 

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イラスト/にのみやなつこ

 

島影真奈美(しまかげ・まなみ)

フリーのライター・編集として働くかたわら、一念発起し、大学院に進学した数ヵ月後、夫の両親の認知症が同時発覚。なりゆきで介護の采配をふるうことに。義理の関係だからうまくいくこと、モヤモヤすること、次から次へと事件が勃発。どこまで理解しているのか謎ですが「ぜひ書いて!」という義父母、義姉、夫の熱烈応援(!?)に背中を押され、この体験記を書き始めました。

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