勝手に住み着いて、カーディガンを持ち去る。不審な40代女性が見えるのは義母だけ⁉/別居嫁介護日誌

「妊娠・出産・育児」をすっとばして、いきなり「介護」が始まった! 離れて暮らす高齢の義両親をサポートしている島影真奈美さん。40代にさしかかり、出産するならタイムリミット目前――と思っていた矢先、義父母の認知症が立て続けに発覚します。戸惑いながらも試行錯誤を重ね、いまの生活の中に無理なく介護を組み込むことに成功。笑いと涙の介護エピソードをnoteマガジン『別居嫁介護日誌』からご紹介します。なんとなく親の老いを感じ始めた人は必読!


こんにちは、島影真奈美です。義父母の認知症を疑い、おそるおそる夫に伝えてみたところ、「霊能力に目覚めた可能性もゼロではない」と言われて仰天した前回。冗談かと思ったら大真面目だし、とくにアクションを起こす気配もありません。結婚以来、義父母とは疎遠な関係だったけど、このまま放っておくのもマズいのでは......。我ながらおせっかいだと思いながら、再び電話をかけてみることにしました。

勝手に住み着いて、カーディガンを持ち去る。不審な40代女性が見えるのは義母だけ⁉/別居嫁介護日誌 pixta_21757677_S.jpg前の記事「見えないものが見えている? 初恋の人とおしゃべりできるって最高かも⁉/別居嫁介護日誌(3)」はこちら。

 

「あら、お元気でした? あの子は風邪を引いたりしていないかしら? そう。昔から丈夫なだけが取り柄でね。よく食事をとってますか? ええ、こちらはおかげさまで変わりなくやってますよ」

電話口の義母は、本日もご機嫌うるわしい。「最近、急に寒くなってきたら体調を崩したりしていないかと思って......」と、とってつけたような口実を不審がる様子もなく、会話が弾む。

「食欲は困っちゃうぐらいある」し、睡眠もよくとれているという。「お通じも問題ないわね」と、よどみなくしゃべる、しゃべる、しゃべる。認知症の予兆だなんて取り越し苦労だったのかもしれない。そう反省しかけた矢先に「唯一の悩みはね、ヘンな居候が棲みついちゃったことなの」と、例の見知らぬ女性の話が始まった。

義母が言うには、その女性は40代半ばで小太り。「近所に住んでいるみたいだけど、どこの誰かはよくわからない」。実家の2階に勝手に棲みついて「いつもこちらの様子をジーっとうかがっているの」という。もう怖い。ぜひとも実在していただきたくない。

「こちらが挨拶してもね、知らんぷりなの。まったくどういう人なのかしらね。どうも様子がおかしくてね、ちょっとした隙に、いろいろなものを持っていくの。この間なんて、すごく大切にしていたカーディガンを持っていっちゃって。ホント、イヤになっちゃうでしょう?」

話を聞けば聞くほど、様子がおかしいのは義母なのだが、さすがにそんなツッコミを入れる勇気はない。声が裏返らないよう、細心の注意を払いながら「それはそれは......困っちゃいますね。......ところで、おとうさんに電話代わってもらってもいいですか」とリクエストするので精一杯だった。

電話口に出た義父も、"女ドロボウ"に悩まされているという。盗まれたものをスラスラとそらんじては憤慨する。ただし、ターゲットはもっぱら、義母であり、「僕のものには手をつけようとしない」とも。

勝手に住み着いて、カーディガンを持ち去る。不審な40代女性が見えるのは義母だけ⁉/別居嫁介護日誌 up第4話島影様介護日誌.jpg 

思い切って「あの......おとうさんは、その女の人を見たことがありますか?」と聞くと、義父は「一度もありません」とキッパリ。やっぱり!

「ずるがしこいタチのようで、人の気配がするとサッと隠れる......と、家内は言ってます。姿を現してくれれば、こちらとしても対応のしようがあるんだが、僕の前には出てこない。そこがどうにも厄介なんですな。だいたい盗難届を出したときに警察が真剣に対応してくれれば、こんなことで悩まずにすんだものを......」

気づけば、義父の怒りの矛先は「空き巣騒ぎの際に駆けつけた警察官」へと向かい、ヒートアップ。「どうも我々を認知症だと決めつけていた節がある。まったくもってけしからんことです!」と、思い出し怒りが止まらない。そう来たか。でも、これってもしや、格好のチャンス到来じゃないか。

「おとうさん......もの忘れ外来、受診してみませんか?」

全力でサイコロを振ってしまった。もう後戻りできない。

 

●今回のまとめ
・電話をかける口実に「気温の変化」「季節の変わり目」は使いやすい
・「食欲」「睡眠」「お通じ」の情報は親の体調を知るヒントになる
・質問を投げかけるときは淡々と、平然と聞くと相手も答えやすい
・やりとりは記録しておくと、いずれ受診のときに役立つ

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イラスト/にのみやなつこ

 

島影真奈美(しまかげ・まなみ)

フリーのライター・編集として働くかたわら、一念発起し、大学院に進学した数ヵ月後、夫の両親の認知症が同時発覚。なりゆきで介護の采配をふるうことに。義理の関係だからうまくいくこと、モヤモヤすること、次から次へと事件が勃発。どこまで理解しているのか謎ですが「ぜひ書いて!」という義父母、義姉、夫の熱烈応援(!?)に背中を押され、この体験記を書き始めました。

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