特養、老健、療養病床、介護医療院、それぞれ何が違うの?/介護施設

男性の平均寿命は80.98歳、健康寿命は72.14歳、女性の平均寿命は87.14歳、健康寿命は74.79歳です(厚生労働省の2016年の調査より)。健康寿命とは"日常生活に制限のない期間の平均"のこと。平均寿命と健康寿命との差は、裏を返せば日常生活に制限がある期間のことで、おおよそ10年あります。この10年をどこで、どのように暮らすのか。自身にとって、また親や子ども、夫・妻など家族にとって重要な問題です。

そんななかでの選択肢の一つが「介護施設」です。特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など昨今は種類が増えて利用者の選択肢が広がっています。それぞれの施設のメリットやデメリット、施設を選ぶときのポイントなどを、ケアタウン総合研究所の高室成幸さんに伺いました。

特養、老健、療養病床、介護医療院、それぞれ何が違うの?/介護施設 pixta_31926692_S.jpg前の記事「特養はどれくらい費用がかかるの? 介護保険施設のメリット・デメリット/介護施設(2)」はこちら。

 

比較的利用料を抑えられる「介護保険施設」には、「特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」「介護医療院」の4つの種類があります。

大きな違いは、特別養護老人ホームは"終の棲家"として利用できること。一方、介護老人保健施設は"自宅復帰を目指すリハビリ施設"で、"医療的なケアを重点的に受けることができる"のは介護療養型医療施設と介護医療院です。

今回は、介護老人保健施設と介護療養型医療施設、介護医療院の特徴をお伝えします。

介護保険施設では施設スタッフにより24時間365日のケアを受けます。介護費用(所得により1~3割負担)は要介護度により、1日当たりの料金が全国一律で決まっています。ほかに居住費(個室、多床室など部屋のタイプ)や食費など日常生活にかかる費用などが必要になりますが、有料老人ホームのような前払金(入居一時金)は不要で、月額利用料のみの支払いになります。

 

◆リハビリで在宅復帰を目指す「介護老人保健施設」

・月額利用料(目安):6万~16万円(介護費用、居住費、食費の合計額)
ケアの他にリハビリテーションや必要な医療を提供する介護保健施設は通称「老健」と言われています。施設数は全国で4325施設(※)。医学的管理のもとで看護やリハビリ、食事や入浴、排せつなどの介護を受けられます。要介護認定を受けた人が在宅復帰を目的に利用する施設のため、おおむね3カ月の入所期間となっています。

「リハビリを重点的にできるというのが最大の特徴です。病院を退院後に自宅へ帰るための中間施設として利用する場合と、往復型、つまり自宅で生活していたけれど身体機能が落ちてきたために集中的にリハビリをするために入所して自宅に戻る場合があります。
2018年の介護保険法改正で、老健は低栄養のリスク改善やかかりつけ医との連携などが重視される改正が行われましたので、リハビリだけでなく栄養面や医療面、服薬の調整の面でも期待されます。在宅復帰にさらに大きく舵を切ったといえます」(高室さん)

老健では理学療法士だけでなく作業療法士または言語聴覚士を必ず配置することになっています。また、特養では医師は非常勤でも可とされていますが、老健は必置という点でも、復帰に向け医療的ケアを含めて充実していることがうかがえます。

○メリット
・リハビリテーションが充実。
・医療ケアも受けられる。
・費用が抑えられる。

○デメリット
・利用期間が基本3カ月

 

◆手厚い医療ケアが受けられる「介護療養型医療施設」

・月額利用料(目安):7万~17万円(介護費用、居住費、食費の合計額)
慢性疾患があり、長期にわたって療養および介護が必要な人のための介護保険施設で、通称「療養病床」を呼ばれています。施設数は全国で1212施設(※)。老健はリハビリに重点を置きますが、療養病床は手厚い医療が受けられるのが特徴です。要介護1~5の人を対象としていますが、要介護4~5で医療ニーズが高い人が中心となります。入所期間はおおむね6か月から1年。

○メリット
・手厚い医療ケアが受けられる。
・費用が抑えられる。

○デメリット
・病状が改善すると退所しなければいけない。
・介護医療院への転換が決まっている。

「重度の病状の方は特別養護老人ホームでケアすることはできないため、療養病床の需要は高いのですが、2023年度末までに廃止が決定しています。そこで新しく創設されたのが、『介護医療院』です」(高室さん)

 

◆療養病床の後継者「介護医療院」

・月額利用料(目安): 7万~17万円(介護費用、居住費、食費の合計額)
2018年4月に新設された介護保険施設で、従来の療養病床は介護医療院への転換が推進されています。重度の病状の方を受け入れて療養病床に相当するサービスを提供する「Ⅰ型」と、老健相当以上のサービスを提供する「Ⅱ型」があります。

「療養病床から介護医療院にすでに転換した施設もありますが、ごくわずかです。まだ始まったばかりの制度のため、今後の動向に注目しましょう」(高室さん)

※厚生労働省『平成29年介護サービス施設・事業所調査の概況』より。

 

◆主な介護保険施設の特徴

●特別養護老人ホーム
入居要件:要介護3以上
メリット:要介護度の重い方が入居できる。終の棲家になりえる。
デメリット:満床ですぐに入居できない場合がある。


●介護老人保健施設
入居要件:要介護1以上
メリット:リハビリテーションが充実している。
デメリット:利用期間はおおむね3カ月。


●介護療養型医療施設
入居要件:要介護1以上
メリット:手厚い医療ケアが受けられる。
デメリット:利用期間はおおむね6カ月~1年。

 

次の記事「親に合う「有料老人ホーム」の探し方は?入居時の注意点とは/介護施設(4)」はこちら。

取材・文/ほなみかおり

 

 

高室成幸(たかむろ・しげゆき)さん

1958年京都市生まれ。日本福祉大学社会福祉学部卒。ケアタウン総合研究所代表、日本福祉大学地域ケア研究推進センター客員研究員、日本ケアマネジメント学会会員。介護施設、都道府県や市町村のケアマネジャー、地域包括支援センターなどを対象に研修を行い、施設職員対象も手掛ける。『図解入門ビギナーズ 最新介護保険の基本と仕組みがよ~くわかる本』(秀和システム・監修)、『もう限界!シリーズ全10巻』(自由国民社・監修)、『新・ケアマネジメントの仕事術』(中央法規出版・著)など著書多数。

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