介護サービスを受けるために40歳から加入する介護保険制度。2000年の開始から3年に1度見直されていますが、2018年4月より新制度が始まりました。65歳以上の介護保険料は上昇し、40~64歳の保険料も総報酬割の採用により負担が増える場合があります。さらに8月からは、所得により介護サービス利用時の自己負担額が2割から3割に増加する人も。
新制度は加入者・利用者にどのような影響があるのか、淑徳大学総合福祉学部教授の結城康博先生に教えていただきました。
ポイント1 自己負担額や保険料がアップ!
8月から、介護保険サービス利用時の自己負担額が、現役並みの収入がある世帯ではこれまでの2割から3割にアップ。また4月から介護保険料も上がっているので、全体的に負担が上がる傾向にあります。また、40~64歳の現役世代の介護保険料算出方法も、収入に応じた負担に順次変更になります。
◎結城先生が解説!
「3割負担になる方は対受給者数では少数なので、影響は少ないでしょう。しかし将来的に自己負担額の下限が現在の1割から2割に引き上がる可能性も否定できないので、介護サービスが利用しづらくなるかもしれません」
<65歳以上は...>
●8月から自己負担額3割の世帯も!
※1 合計所得金額220万円以上で、年金収入+その他の合計所得金額が340万円以上(単身世帯)。夫婦世帯の場合は463万円以上。
※2 合計所得金額160万円以上で、年金収入+その他の合計所得金額が280万円以上(単身世帯)。夫婦世帯の場合は346万円以上。
●介護保険料が6.4%アップ!
下記のように介護保険料の全国平均(月額・加重平均)が上昇。介護保険制度開始時(2,911円)から右肩上がりです。
2015~2017年度 5,514円(全国平均)
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2018年4月から 5,869円(全国平均)
<現役世代は...>
●介護保険料が総報酬割に!
【改正前】
各医療保険の加入者数に応じて負担を算出(加入者割)。
【改正後】
国民健康保険以外の被保険者(健康保険組合、共済組合、協会けんぽ)は収入に応じて負担を算出(総報酬割)。収入が多い場合は負担増になる人がいます。
※2017年8月分から段階的に導入、2020年度から全面導入。
ポイント2 新たな介護施設「介護医療院」が誕生
医療と介護の両方のサービスを必要とする方々の施設として「介護医療院」が新設されました。これは6年後に廃止が決定している療養病床の受け皿として期待され、国は施設に療養病床から介護医療院への転換を推奨しています。介護医療院には右記のように「Ⅰ型」と「Ⅱ型」の2タイプがあります。
◎結城先生が解説
「廃止に反発の声が多かった介護療養病床が、介護医療院の創設により実質的に継続になったのは、医療が必要な要介護者が多いので意義のあることです。しかし国は在宅介護を重視しているため施設が増える見込みは低いでしょう」
ポイント3 福祉用具レンタル料の全国平均の表示
福祉用具のレンタル料金は業者が自由に決め、同じような用具でも業者により価格に差がありました。今回の改正では、10月から品目ごとにレンタル料の全国平均価格の説明の義務化と、上限額が設定されることになりました。
◎結城先生が解説
「品目ごとに平均価格が表示されるようになるので、それを参考に商品を選べるようになるのは良いことです。価格競争が起こり、低価格の商品が登場する可能性もあるでしょう」
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取材・文/中沢文子