高級なイメージのある「有料老人ホーム」は生活保護受給者も利用している/介護破産(34)

高級なイメージのある「有料老人ホーム」は生活保護受給者も利用している/介護破産(34) pixta_22918751_S.jpg毎週金、土、日曜更新!

介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。実は介護破産の原因には、単に資産の多寡だけでなく、介護に関する「情報量」も大きく関わってくるのです。
本書「介護破産」で、介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法を学んでいきましょう。

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有料老人ホーム

公的施設である特別養護老人ホームはともかく、民間が運営する有料老人ホームと聞くと、高級なイメージを抱く読者も多いだろう。たしかに入居金に数千万円が必要といった施設が多い。しかし、有料老人ホームといっても、生活保護受給者をターゲットに運営している施設もある。

先に述べたように、生活保護受給者は介護保険サービスの自己負担額が課されないため、いわば限度額内であれば多くの介護サービスを利用できる。そのため、有料老人ホームの毎月の総費用を10~11万円前後に設定して、ほかに系列の訪問介護事業所や通所介護事業所(デイサービス)の利用を促し、グループ会社全体で利益を得るというビジネスモデルが存在する。

先日、本書の取材で訪れた有料老人ホームは、80人の入所者のうち8割が生活保護受給者の高齢者であった。これらの高齢者はみな、系列の介護事業所を利用していた。なお、生活保護受給者以外の高齢者は、食事代などを含めた入居費用総額10~11万円に加え、介護保険自己負担分2~3万円程度が課せられる。
このような「貧困ビジネス」とも揶揄される有料老人ホームも存在しているため、必ずしも高級といったイメージを抱かないほうがよい。

なお、高級有料老人ホームの場合、注意しておきたいことがある。稀なケースではあるかもしれないが、入居した高級有料老人ホームが倒産してしまう可能性を否定できないのだ。そうなると入居金が無駄となってしまうかもしれない。

ただ、多くの場合、別の会社に経営権が譲り渡されるため、倒産後に行き場を失う「介護難民」という最悪の事態は、譲渡先が見つからない限りないに等しい。
しかし、経営主体が変わると契約内容も変更されるので、入居している高齢者にとっては、サービス低下を招く可能性がある。
高級有料老人ホーム単体での収支状況が悪くなければ、すぐに譲渡先はみつかるはずだ。

危ないのは介護施設単体の経営状況が悪く、本体企業から援助を受けている施設である。そうしたところは選ばないほうがよい。どういうことかというと、大企業が介護事業に参入して有料老人ホームなどの運営をはじめたものの、その部署の成績が伸びなかったため介護事業部門を他社に売却するということもあるのだ。

高級有料老人ホームは高い買い物であるから、よく説明書や契約書をみて経営体質も調べておくべきだ。しかも、会社本体が大手だからと安心するのは危険である。万が一、介護施設が倒産して介護難民となれば、最悪の介護生活に陥ってしまう。以下の点は、施設選びで注意しておくべきだ。第一に、施設にどれだけ人員が厚く配置されているか。法律では高齢者3人に対して職員1人が人員基準であるが、2対1を基準にしている施設だと安心できる。

第二に、施設によっては、「入居金ゼロプラン」があるが、その代わり、毎月の利用料に入居金が上乗せされる仕組みがある。そうした施設の多くは、5年間を償却期間に据えているため、できるだけ、それ以上居住すべきだろう。

第三に、24時間看護師が常住しているか否かである。有料老人ホームでは、24時間の看護師配置は義務ではないが、その点は確認しておくべきだろう。それによって、ターミナルケアもできるかどうかが焦点となる。

第四に、機能訓練室があるか否かである。理学療法士や作業療法士といった専門家が配置されていることもポイントである。また、レクリエーションの内容もみておくべきだ。
もし施設選びを失敗したとしても、入居から90日以内であれば、クーリングオフで、入居金が戻ってくる。その際は、入居していた期間の経費は払わなければならない。

  

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結城 康博(ゆうき・やすひろ)
淑徳大学総合福祉学部教授。1969年生まれ。社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャー。地域包括支援センターおよび民間居宅介護支援事業所への勤務経験がある。おもな著書に『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から 』(岩波新書)、『孤独死のリアル』(講談社現代新書)、『介護入門 親の老後にいくらかかるか? 』(ちくま新書)など。

村田くみ(むらた・くみ)
ジャーナリスト。1969年生まれ。会社員を経て1995年毎日新聞社入社。「サンデー毎日」編集部所属。2011年よりフリーに。2016年1月一般社団法人介護離職防止対策促進機構(KABS)のアドバイザーに就任。おもな著書に『書き込み式! 親の入院・介護・亡くなった時に備えておく情報ノート』(翔泳社)、『おひとりさま介護』(河出書房新社)など。

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『介護破産』
(結城 康博、村田 くみ/ KADOKAWA)

長寿は「悪夢」なのか!? 介護によって始まる老後貧困の衝撃!
介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。本書では現在介護生活を送っている人々の生の声をルポしつつ、介護をするにあたり知っておきたいお金のこと、法律面のことなどに言及。介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法論を記した一冊です。

 

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