在宅介護から施設などへの住み替えを考えるのはどんなとき?タイミングは?/在宅介護

介護が必要になったとき、自宅に住み続けながら介護を受けることを「在宅介護」といいます。内閣府の調査によると、在宅介護を望む人は男女とも7割を超えています。今後、親や家族、配偶者、そして自分の介護などに、直面することもあるでしょう。在宅介護を行う上で、どのように介護保険を使ったらいいのか、ケアマネジャーとの関係や家族の関わり方などについて、現役の主任ケアマネジャーである田中克典さんに聞きました。

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●特養への住み替えを考えるタイミングとは?

いくつになっても住み慣れた我が家で暮らしたいと考える人は多いでしょう。自宅で暮らすことは、高齢者にとって何物にも代えがたい安らぎです。しかし、要介護度が重くなるにつれて、自宅で生活することが次第に難しくなっていきます。一般的に、要介護4になるとほぼ一日中、誰かの介護を受けなければ生活できない状態になるといわれています。特別養護老人ホーム(特養)に入所できるのも要介護3以上です。

「要介護3で老老介護をしていたり、認知症の症状が進む可能性ある場合などが、住み替えを考えるタイミングだといえるでしょう。私はそのような家庭には、『今日明日、あるいは来月に施設に入るというのは考えにくいかもしれませんが、一応、安心材料として早めに特養に申し込みをしてはどうでしょうか』と提案しています」と田中さん。

特養に申し込みをしたとしても待機者は多く、地域によっては1年も2年も待つことがあります。住み替えが必要になってからあわてて申し込むのではなく、あらかじめいくつかの施設を見学し、気に入った施設に申し込みをしておくと安心です。しかし1、2年後に入れればいいと考えて申し込みをしたけれど、実際には体の状態の悪化が予想外に早く、1年もしないうちに要介護度が急に上がって、自宅での生活に限界が来てしまうことがあります。それでも特養に空きがなくて入れないことも少なくありません。そのようなときにはショートステイを繰り返し利用することがあります。

 
●特養に空きが出るまでショートステイを続けた例

娘夫婦と暮らす82歳のAさんは、要介護3のときに特養に申し込みをしましたが、その後間もなく、転倒が原因で寝たきりとなり要介護5に。しかし申し込んでいた特養に空きが出ないため、介護保険で受けるサービスをショートステイだけに絞って、ほぼ1カ月ショートステイを利用することに。ショートステイの連続利用は30日までなので、31日目は家に帰るか全額自費で利用しなければなりません。そうすると32日目からは新たに30日間、介護保険を利用できるようになります。

お金はかかってしまいましたが、Aさんは家に帰らずに31日目は全額自費の扱いで、連続して半年ほどショートステイを利用。そのような形で急場をしのぎ、半年後に特養に空きが出たので移ることができました。

本来ショートステイは、要介護の認定期間の半分を超えて利用できないと定められています。要介護認定を受けてから次の認定までの期間が1年間の場合は、通算で半年しか利用できないのです。市区町村によっては、Aさんのような事情があるときには柔軟に対応してくれる場合があります。

 
●サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)に住み替える方法も

「いま国は、特養に代わるものとして『サ高住(さこうじゅう)』の整備を推進しています」と田中さん。サ高住とは「サービス付き高齢者向け住宅」のことで、60歳以上の高齢者または要介護認定を受けた60歳未満の人が入居できるバリアフリーの賃貸住宅です。ケアの専門家が少なくとも日中は常住し「安否確認」と「生活相談」を行うことが定められていて、ほとんどのサ高住ではオプションとして食事の提供があります。

サ高住は「住宅」ですので、自宅と同じように比較的自由に過ごすことができますが、基本的に「介護サービス」は付いていません。介護保険による介護を受けたい場合は、外部の介護サービス事業所と契約して介護サービスを受けるのが一般的です。サ高住の1階が介護サービス事業所になっていることも多く、そこと契約することもできますし、また、これまで利用していた介護サービス事業所に引き続き頼むことも可能です。

「近年、サ高住で問題になっていることが二つあります。1つは、サ高住といっても見た目は施設と変わりがないため、特養と同じように介護サービスも含まれていると誤解してしまう人がいることです。入居後に別途で介護サービスを契約しなければならないことがわかって、トラブルになる例が多いのです。2つ目は利用者の囲い込みです。本来、入居者はどこの介護サービス事業所と契約しても自由なはずなのに、1階や同じ敷地内に併設されている系列の介護サービス事業所の利用を強要するサ高住があるようです」と田中さん。

住み替えを考えたとき、特養以外のサ高住なども候補に入れることがあるでしょう。どんな特徴がありどのような形で介護サービスを受けることになるのか、よく調べておくことが大切です。それが住み替えをしたあとのトラブルを防ぐことにつながります。

 

取材・文/松澤ゆかり

 

 

田中克典(たなか・かつのり)さん

1962年、埼玉県生まれ。日本福祉教育専門学校卒業後、東京都清瀬療護園、清瀬市障害者福祉センターなどで介護経験を積む。2000年に介護保険制度発足と同時にケアマネジャーの実務に就く。現在、SOMPOケア株式会社で主任ケアマネジャーとして勤務。著書に『現役ケアマネジャーが教える介護保険のかしこい使い方』(雲母書房)ある。

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