肉親だからこその辛さ。在宅介護の現実を実感

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ペンネーム:よーよー025
性別:女
年齢:60
プロフィール:母は若い頃から身体が不自由でしたが83歳の時ベットから落下、大腿骨頭骨折により介護が完全に必要となりました。施設が大嫌いな母を介護しながら、だんだん訪れてくる辛い現実にたまらない思いがつのりました。今は施設入所しています。

母は20代から足に障害があり歩行がうまくできず、病院など床が滑るような所へ出かける際には付き添いが必要でした。
そんな母を子供の頃から見守って来ましたが、ある日帰宅すると家の電気がついていません。まさか何かあったのではと慌てて母の部屋に入るとベッドから転落していました。足を痛がる様子から、骨折しているであろうと考え病院受診。左大腿骨頭骨折により手術の運びとなりました。

病院が大嫌いな母は「帰って寝ていればいい」と困らせることばかりを言っていましたが、なんとか無事に手術を終えリハビリを開始しました。


良い方の足を骨折したために、リハビリは思うように進みませんでした。私は、母もいよいよ車椅子の人になるのかなと考え始めました。そんな時、退院するにあたり今後どうしていくかをケースワーカーより話がありました。
自分も看護師だったので、どう進めていくかは十分わかっていたつもりでしたが、母のこととなると思いが違うことに気がつきました。仕事と違い、こんなにもいい案が出てこないものなのか、この先がこうも不安なものなのかと実感せずにはいられませんでした。

退院後の話し合いの後、無事自宅に戻りました。知り合いのケアマネージャーさんにもお願いできることになりました。そのケアマネージャーさんは気心も知れ、頼りになるありがたい存在です。
一方、様々なサービスをしていただいても、どれも母は気に入ません。入浴は45分ほど離れた温泉施設の家族機械浴を使うのですが、「こんなにぬるいお湯は嫌だ」と言います。家でも「こんな物しか食べれんのか」「トイレくらい一人でできる」と介護されることへの不満が出始めました。
そんな時、ケアマネージャーさんから「お互いがまいってしまうよ。行けばなんとかなるからデイへ行ってみたら」と声をかけていただきました。デイは通うのもたいへんです。出かける朝は行きたくない理由を探しては連呼するようになるました。あちこちのデイを体験して気に入った所に行くことを進められ体験してもらいましたが、やはり朝になるとぐずぐずします。子供のようだ、と考えさせられました。

そんな日が続くうちに、オムツを外したり服を脱いだりすることも多くなってきた母。夜間もオムツ交換に二度起きていた私は、毎日続く不眠が辛くなってきました。見かねたケアマネージャーさんから、ショートステイをすすめていただきました。2年かかってやっとデイへ週2回行けるようになったので、なんとか2〜3泊ならできるかもしれないと実行してみました。
その結果、やはり「あんな扱いが悪い所へは二度と行かん」など大騒ぎをし、しまいにはありもしないことを言ったりしてカンファレンスを開いてもらうことに...。どこまでも自宅で気ままにテレビを見ていたい母と、昼夜の介護に疲れが出てきた私とでは平行線なのだと思い知らされました。

一番困ったのは、事前に説明して「わかった」と言ったのに、お客様が見えておられる時大声で呼び続けたり、周囲の物を叩くようになったことです。説明してもわからなくなってしまったかと落胆させられました。
また、便いじりが始まり部屋に入るとそこら中が便にまみれていることが多くなりました。そして「こんな物は食べれん」と食事も投げつけるようになって来ました。薬、環境を変えても何をしても、たまっていくのはストレスだけになってしまいました。

私が落ち込んでいるのにも気が付かない母を見て、ため息の出る日が多くなっていきました。そんな折、ケアマネジャーさんから「施設を考える時期がきたのではないですか?」と言われました。薄れていく記憶の中でも、自分の娘であることは自覚してくれている母の顔が脳裏をよぎりました。自宅のみでの介護の時期、デイを使う時期、ショートステイを使う時期を経験して、いずれも一人ではやり切れない現実に潰されそうになりながらも、施設に入れることに抵抗があり、耐えてきました。
一方で以前、「施設入所の申し込みは、今は使わないにしても、しておいた方が後々役に立つから」とケアマネージャーさんから勧められていたので、申し込みは済ませてありました。

そんな時、「施設に行く」とぽつんと母が言いました。今までは絶対に自宅にいたいと言い張っていた母の突然の言葉に驚かされました。きっとケアマネージャーさんから母への口添えがあったのだと思います。入所しても上手くやっていくことは至難の業であろうと思うくらい、各施設に迷惑をおかけしてきたので悩むばかりでしたが、母の一言が私の背中を押してくれました。

介護老人保健施設に入所後は、相変わらず便いじりをしたり、ベッドから落下しそうになったり、「泥棒がいる」「ここにおるのはイヤだ」などと言ったりしていますが、なんとか日々を送れています。食事に関しても、「わしにはくれん」と言ったりもしますが、栄養や検査結果に基づいた物を食べやすく工夫してもらっています。体調不良の時や骨折してしまうこともありましたが、お互いに毎日を送れているんだと洗濯物を持って行きながら確認しあっています。

母の自宅で過ごしたい思いに寄り添いたいと始めた介護ですが、お互いに生身の人間であるからこそ耐えられないことや譲れないことがたくさん出てくること、それを越して行くには行政の手を上手く活用していくことがより大切であることをこの十年で知ることができました。

健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
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