介護が必要になったとき、自宅に住み続けながら介護を受けることを「在宅介護」といいます。内閣府の調査によると、在宅介護を望む人は男女とも7割を超えています。今後、親や家族、配偶者、そして自分の介護などに、直面することもあるでしょう。在宅介護を行う上で、どのように介護保険を使ったらいいのか、ケアマネジャーとの関係や家族の関わり方などについて、現役の主任ケアマネジャーである田中克典さんに聞きました。
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●要介護度によって介護保険で使える金額が決まっている
退院が決まっても、「家族が働いていて日中は介護してもらえない」「自宅に帰宅しても独居で介護者がいない」というような場合が少なくありません。そんなときに利用できるのが介護保険の介護サービスです。どんな介護サービスを利用できるかケアマネジャーと検討します。介護保険の介護サービスを利用するときに知っておきたいのが、1~3割の自己負担の料金が発生することです。1カ月間に利用できる金額は要介護度ごとに上限額が決まっています。これを「支給限度額」といいます。
介護保険の介護サービスを利用すると、本人は1~3割の自己負担で済みますが、下記表のように1カ月に利用できる介護サービスの上限額である「支給限度額」が決まっています。要介護度が高くなるほど支給限度額も高く設定されています。もし、1カ月の支給限度額を超えて介護サービスを利用すると、超えた分は全額が自己負担になるので注意が必要です。
要介護度ごとの1カ月の支給限度額
例えば、もっとも要介護度が高い「要介護5」の人は、生活全般にわたって全面的な介助が必要になり、ヘルパーやデイサービス、ショートステイなどを利用する機会が増える傾向に。そのため、1カ月の支給限度額は一番高額な360,650円に設定されています。自己負担額はその1~3割です。
●介護費用を抑えたいときはケアマネジャーに相談
ケアマネジャーは利用者や家族の要望を聞きながら、なるべく支給限度額内に収まるように介護の計画書である「ケアプラン」を作成します。要介護度が上がるにつれて支給限度額以内では足りずに、支給限度額を超えて10割負担で介護サービスを利用する頻度が増えていくのが現状です。介護費用を抑えたいときには、事前にケアマネジャーに「1カ月の介護費用の予算は支給限度額内にとどめたい」「3万円までにしたい」などと伝えておけば、ケアマネジャーは希望に沿ったケアプランを立ててくれます。
介護サービス費は1カ月ごとに、銀行口座などからの引き落としや現金払いなどで、それぞれの介護サービス事業所に支払います。1カ月に1~3割で利用した介護費用の自己負担分が一定の金額を超えた場合、超えた分のお金が戻ってくる「高額介護サービス費」という制度があり、対象となる人には市区町村から申請書が届きます。なお、要介護度ごとに決められている支給限度額を超えて10割負担で支払った分は、高額介護サービス費の対象外です。
●自己負担割合は収入に応じて決まっている
介護保険の自己負担の割合は、収入に応じて決まっています。以前の自己負担額は1割または2割でした。2018年8月に改正介護保険法が施行されて、2割の人のうち一定以上の収入がある人については、3割負担に引き上げられました。
介護保険の利用者負担の割合(2018年8月から)
【3割】1、2の両方に該当する人
1. 本人の合計所得金額が220万円以上
2. 同じ世帯にいる65歳以上の人の「年金収入+その他の合計所得」が
・単身世帯で340万円以上
・2人以上世帯で463万円以上
【2割】 3、4の両方に該当する人
3. 本人の合計所得金額が160万円以上220万円未満
4. 同じ世帯にいる65歳以上の人の「年金収入+その他の合計所得」が
・単身世帯で280万円以上340万円未満
・2人以上世帯で346万円以上463万円未満
【1割 】上記以外の人(本人の合計所得金額が160万円未満)
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取材・文/松澤ゆかり