<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ひかる
性別:女
年齢:25
プロフィール:結婚前、少しの間母と祖父母の介護の為に同居しました。結婚してからは、義父が脳梗塞になり、右半身のマヒと言語障害になりました。家族会議の末、同居しています。
祖母が80歳の頃、認知症になりました。医師に「認知症です」と言われてから進行は早く、あっという間に同居する祖父への負担は増えて行きました。私は遠方に住んでいたため頻繁には会いに行けず、年に3回ほど訪ねるだけでしたが、母が月に数回通ってサポートをしていました。
あるとき母から連絡があり、祖父がうつ病にかかったので一緒に住もうと思うと相談され、私も一緒に住むことになりました。たまにしか会えないものの、会った時はいつも元気で、掃除も毎日こまめにしていた真面目な祖父。ですが、同居してみるとこの真面目な性格がうつ病の原因の一つなのではないかな、と思いました。
祖父は、祖母のことを「自分が見なきゃダメだ!」強く思い頑張っていました。
朝の「薬飲んだか?」から始まり、数時間おきにトイレは、異常はないか、食べすぎていないか(祖母は糖尿病も患っていたので)、このご飯は美味しいか、と事細かく祖母に聞いているのです。さらに、祖父の不安はそれだけではありませんでした。先に自分が死んだらどうしよう、悪いニュースを見ると隣で起きていることのようにとらえ心配し、非通知の電話がかかってきたら「詐欺師やぞ!」と警戒したり、防犯対策のため通帳の置場所を定期的に変えては「どこに置いたかな」と探しまわったり・・・。ほんの些細な事でも不安になるのです。
そんな祖父と同居してから、祖父と母は喧嘩が絶えませんでした。母が「お母さんは私が見てるから大丈夫」と言っても、祖父は不安で何度も何度も無事かどうかを聞きに来るのです。私が仲裁に入ってその場の喧嘩はおさまっても、また別の事で喧嘩が始まってしまいます。そして、二人の間にはとうとう会話があまりなくなってしまいました。私がいたら会話はあるのですが、私がいないときは必要最低限の会話しかしないそうなのです。これには困ってしまいました。
そんなある日、家にケアマネージャーさんが来られて、祖父は楽しそうに話をしていました。会話に耳をそばだててみると、ケアマネージャーさんは祖父の話をよく聞いていて、特に解決策を言っているわけでもなく、祖父が話す不安に同調するような返答をしていました。母と祖父と私の会話といえば「こうしたら?」「そんな考えなくて良いよ」など解決策を提案したものであって、同調するものではありませんでした。そこで私は、もしかしたら祖父はただ話を聞いて欲しかっただけなのかもしれないとやっと気づいたのです。
それから母とも相談し、とりあえず話を聞いて祖父に同調してみようということになりました。実際にしてみるとこれが思ったより難しく、自分の器の小ささが手に取るように分かり、夜に母と反省会をすることもありました。ですが、少しずつ少しずつ喧嘩も減り、会話がある日々に戻りつつあります。
祖父がうつ病と言われて、7年になりますが、未だに完治はしていません。前よりずいぶん不安は少なくなっていますが、やっぱり波があります。でも、祖父の話を聞いて理解者でいるという姿勢を示すことが一番大事という母との共通認識ができたことは、私たちにとって大きな一歩でした。
今私は結婚し祖父宅から離れていますが、たまに母と祖父二人で撮った写真が送られてきます。あんな喧嘩ばっかりだったのになぁ~と二人の関係が改善していることに、安心しています。
専門家の知見:ケアマネージャーってどんな人?何をしてくれる?
NPO法人介護者サポートネットワークセンターアラジン元理事の阿久津美栄子さんによると、ケアマネジャーとは、介護保険制度においてケアマネジメント(福祉や医療サービスとの連携)をする有資格者のことです。要介護者(要介護認定を受けた人)やその家族からの相談を受け、「ケアプラン」(介護サービス計画)を作成。介護サービス事業者への連絡や調整などを行います。
要介護認定で要介護1~5を受けたら、市区町村の窓口で、在宅介護における介護サービスの提供を支援する「居宅介護支援事業所」リストをもらいます。そして居宅介護支援事業所に連絡し、ケアプランの作成を依頼すると所属するケアマネジャーを紹介されます。自分で探すのが難しい場合は地域包括支援センターに相談を。居宅介護支援事業所は訪問介護やデイサービスの事業所に併設されている場合が多いですが、個人で独立開業をした事業所もあります。どちらがよいとは一概にはいえません。
ケアマネジャーは介護の始めからあらゆる面で相談し、二人三脚で要介護者をケアしていくいわば伴走者です。サービス利用者がケアマネジャーを選択できるので、要介護者や家族の状況などを考慮した上で慎重に決めましょう。
ケアマネジャーの決定からサービスを受けるまでの流れ
1.要介護認定を受ける
介護保険の利用には、要介護認定が必要。市区町村の窓口に所定の申請書を提出し、訪問調査や介護認定審査会による調査を経て、認定結果が通知されます。
2.ケアマネジャーを探す
要介護認定を受けたら、地域包括支援センターや市区町村の介護保険窓口に相談すると、ケアマネジャーを紹介してもらえます。
3.ケアマネジャーが決定
在宅介護の場合は、ケアマネジャーが所属する居宅介護支援事業所と契約を結びます。老人ホームなどの施設に入居する場合は、施設に所属するケアマネジャーが担当します。
4.ケアプラン作成
利用者が望むサービスや暮らし、家族の状況などを相談の上、ケアマネジャーがケアプランを作成します。
5.介護サービスの利用スタート
ケアプランをもとに介護サービスを受けます。介護サービスの事業所への連絡や調整もケアマネジャーが行います。
ケアマネジャーは縁の下の力持ちです
ケアマネジャーの仕事は多岐にわたりますが、主なものは以下になります。
1.要介護者や家族に対して、初回の面接からケアプランの作成、その後も月1回の訪問やいろいろな相談事にのったります。
2.介護サービス事業者へのサービスの依頼、サービスが適切に行われているかの評価など。
3.介護給付金の申請や管理などを行います。
4.病院や主治医との連携をしたり、多職種とのネットワークづくりを行います。
阿久津美栄子(あくつ・みえこ)さん
1967年生まれ。NPO法人UPTREE代表(http://uptreex2.com/)。NPO法人介護者サポートネットワークセンターアラジン元理事。子育て中に両親の遠距離介護を経験し、介護者の居場所を作る活動を行う。2016年、母子健康手帳の介護版ともいえる「介護者手帳」を制作。
※専門家のアドバイスは『毎日が発見』2017年9月号に掲載の記事より抜粋です。
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- 健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
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