介護の司令塔となるケアマネジャーとは。どんな人に頼みたい、見つけ方は?/在宅介護

介護が必要になったとき、自宅に住み続けながら介護を受けることを「在宅介護」といいます。内閣府の調査によると、在宅介護を望む人は男女とも7割を超えています。今後、親や家族、配偶者、そして自分の介護などに、直面することもあるでしょう。在宅介護を行う上で、どのように介護保険を使ったらいいのか、ケアマネジャーとの関係や家族の関わり方などについて、現役の主任ケアマネジャーである田中克典さんに聞きました。

介護の司令塔となるケアマネジャーとは。どんな人に頼みたい、見つけ方は?/在宅介護 pixta_43050565_S.jpg前の記事「将来、どんな場所でどんな介護を受けたいか?在宅介護を希望する人が7割以上/在宅介護(1)」はこちら。

 

●ケアマネジャーとはどんな役割の人?

在宅介護で介護サービスを使う場合、利用者(介護サービスを受ける人)はケアマネジャーを1人選びます。ケアマネジャーの役目は、利用者や家族から介護の希望や介護に使える金額などを聞き、どの介護サービスを1カ月に何回使うか、それをどの介護事業者に依頼するかなどを決めて、利用者に合った介護の計画書「ケアプラン」を作成することです。ケアマネジャーは居宅介護支援事業所に所属し、報酬は介護保険でまかなわれているため、利用者がお金を支払うことはありません。

「ケアマネジャーは1カ月に1回は利用者の家を訪問して、利用者の様子を見たり、ケアプランに沿ってきちんと介護サービスが行われているかを確認。変更した方がいいことがあれば、翌月のケアプランに反映させます。ケアマネジャーはほかに、利用者や家族の介護に関する相談に乗ったり、自治体や介護サービス事業所との連絡や調整を行います。利用者が生活や介護などで困ったことが起きたときには、親身になって相談に乗り、一緒に解決をめざす心強いパートナーだと思ってください」と田中さん。

 
●ケアマネジャーをどうやって探すか

「友人や近所の人、ママ友、職場の同僚などで、すでに介護をしている人から『この人はお薦めできますよ』と、ケアマネジャーを紹介してもらう方法があります。口コミなどの情報も大切で、探す手がかりの1つになります」と田中さん。

最近は介護事業者などの情報をホームページで検索できるように、公開している自治体があります。例えば、埼玉県川越市では、2018年4月から「川越市在宅医療・介護事業者情報検索システム」の運用が始まりました。市内の在宅医療を提供する医療機関や介護サービス事業所などを検索でき、このシステムを利用してケアマネジャーを探すこともできます。

<田中さんに聞いたケアマネジャーを選ぶときのポイント>
・本人や家族の訴えを真剣に聞いてくれる人か。
・ 質問したことに、丁寧に答えているか。
・ 役所への手続きなどをスムーズに進めてくれているか。
・ 介護サービス事業所を決める際に、複数の選択肢を提示しているか。
(自分の所属法人のサービスを過度に勧めようとしないか)
・ 順を追ってわかりやすく説明してくれるか。
・ 依頼したことに、期限を決めて対応してくれるか。
・ 連絡が取りやすいか。
・ 事務所は自宅から近い距離にあるか。

 

●「地域包括支援センター」に相談する方法も

ケアマネジャーを探すには、介護を受ける人が住む地域の「地域包括支援センター」に行って相談する方法もあります。地域包括支援センターとは、高齢者が地域に住みながら健康的で安定した生活ができるように、さまざまなサポートを行う施設。おもに市区町村が委託・運営していて、おおむね中学校区に1カ所あります。地域包括支援センターに行くと、その地域の居宅介護支援事業所のリストをもらうことができます。

地域包括支援センターには社会福祉士、保健師、主任ケアマネジャーなどの専門家がいて、住民から介護や福祉、医療などについての相談を受け、解決の手助けをしています。「介護が必要になったけれど、何から手を付けていいかわからない」というようなときにも、相談するとよいでしょう。地域包括支援センターがどこにあるのか知りたいときには、市役所などの介護担当窓口に電話すれば教えてもらえます。

 
●入院中に介護が必要になったら医療福祉相談室の「医療ソーシャルワーカー」に相談

「ケガや病気で入院した場合、退院後は自宅で介護保険の介護サービスを利用したいと考える人が多いです。退院後すぐに介護保険を利用するためには、入院中に市区町村から要介護認定を受けなければなりません。入院中はケアマネジャーの代わりに、病院内にある医療福祉相談室(病院によって名称はさまざま)の『医療ソーシャルワーカー』がサポートしてくれます」と田中さん。

医療ソーシャルワーカーは要介護認定の申請方法を説明したり、必要書類である「主治医意見書」を医師に依頼するなど、要介護認定を受けるまでの過程をサポート。ケアマネジャー探しの手助けなども行います。ケアマネジャーが決まるまでは、医療ソーシャルワーカーが自宅での生活パターンを聞き取って、車いすは必要かどうか、廊下に手すりを設置するかどうか、車いすを使うようになったら玄関のスロープはどうするか、などを確認。在宅介護について患者や家族と一緒に考えていきます。規模の小さい病院などは医療福祉相談室が設置されていないこともありますが、その際は介護を受ける人の自宅がある地域の地域包括支援センターに相談しましょう。

 

次の記事「介護保険を利用しての自宅での介護は、まず市区町村の「要介護認定」を受けてから/在宅介護(3)」はこちら。

取材・文/松澤ゆかり

 

 

田中克典(たなか・かつのり)さん

1962年、埼玉県生まれ。日本福祉教育専門学校卒業後、東京都清瀬療護園、清瀬市障害者福祉センターなどで介護経験を積む。2000年に介護保険制度発足と同時にケアマネジャーの実務に就く。現在、SOMPOケア株式会社で主任ケアマネジャーとして勤務。著書に『現役ケアマネジャーが教える介護保険のかしこい使い方』(雲母書房)ある。

この記事に関連する「ライフプラン」のキーワード

PAGE TOP