将来、どんな場所でどんな介護を受けたいか? 在宅介護を希望する人が7割以上/在宅介護

介護が必要になったとき、自宅に住み続けながら介護を受けることを「在宅介護」といいます。内閣府の調査によると、在宅介護を望む人は男女とも7割を超えています。今後、親や家族、配偶者、そして自分の介護などに、直面することもあるでしょう。在宅介護を行う上で、どのように介護保険を使ったらいいのか、ケアマネジャーとの関係や家族の関わり方などについて、現役の主任ケアマネジャーである田中克典さんに聞きました。

将来、どんな場所でどんな介護を受けたいか? 在宅介護を希望する人が7割以上/在宅介護 pixta_22283950_S.jpg●在宅介護を希望する人は圧倒的に多い

年齢とともに病気やケガのリスクは高まります。体が思うように動かなくなって介護が必要になる人は歳を取るにしたがって増える傾向に。介護を受けるとき、最初に決めておいたほうがいいことは「どこで暮らして介護を受けたいか」ということと、「どんな介護生活を送りたいか」ということです。

内閣府の「高齢社会白書2018年版」によると、「介護を受けたい場所」は、「自宅」(在宅介護)を希望する人が男性では73.9パーセント、女性では73.1パーセントでした。7割以上の人が在宅介護を希望していることがわかります。

また、「介護が必要になったとき誰に介護してもらいたいか」は、男性の56.9パーセントが「配偶者」を希望し、「ヘルパーなど介護サービスの人」が22.2パーセントでした。それに対して女性は、「ヘルパーなど介護サービスの人」が39.5パーセント、「子」が31.7パーセント、「配偶者」が19.3パーセントという結果になっています。男性と女性では、「介護してもらいたい人」はそれぞれ異なりますが、自宅で介護を受けたいという希望はどちらも多いようです。

 
●介護が必要になったときに介護を受ける場所を考えるのでは遅い

かつて、「介護は自宅で妻や嫁、娘などの女性が行うもの」という考え方が主流だった時代もありました。いまは多くの女性がパートや正社員で働いています。仕事と家事、育児の3つをこなす人も多く、女性だけが介護を引き受けるのは難しいといえます。

「長年住み慣れた自宅から離れたくないという思いから、多くの人が自宅で介護を受ける『在宅介護』を希望するようです。在宅介護では、配偶者や家族などがいるときはその人たちの協力が必要となります。介護が必要になってから、あわてて介護について考えるのではなく、体が元気なうちにあらかじめ話し合っておくことが大切です。在宅介護を望むのなら、家族に介護の負担がかかりすぎないように、介護保険の介護サービスを上手に取り入れながらの生活を考えるとよいでしょう」と、田中克典さんは話します。

自宅で介護を受ける場合の費用ですが、公益財団法人生命保険文化センターの「平成30年度(2018年度)生命保険に関する全国実態調査<速報版>」によると、介護保険サービスの利用を含む1カ月の介護費用の平均値は78,000円でした。要介護度や利用する介護サービスの種類や頻度などによっても金額は異なりますが、これが在宅介護を受けるときの費用の一つの目安になります。

一方、自宅以外で介護を受ける場所としては「特別養護老人ホーム(特養)」や「介護老人保健施設(老健)」などの介護保険施設があります。民間では「介護付き有料老人ホーム」や、最近、増加傾向の「サービス付き高齢者向け住宅」などがあります。

このように、介護を受ける場所についてさまざまな選択肢があるとはいえ、自宅から離れずに介護を受けたいという人が依然として多いのが事実です。在宅介護を受ける場合、どんな介護サービスを利用するかによって、介護にかかるお金や介護する人の負担が異なります。その在宅介護の調整役となるのが「ケアマネジャー」です。在宅介護の実情を見ていきます。

 

取材・文/松澤ゆかり

 

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田中克典(たなか・かつのり)さん

1962年、埼玉県生まれ。日本福祉教育専門学校卒業後、東京都清瀬療護園、清瀬市障害者福祉センターなどで介護経験を積む。2000年に介護保険制度発足と同時にケアマネジャーの実務に就く。現在、SOMPOケア株式会社で主任ケアマネジャーとして勤務。著書に『現役ケアマネジャーが教える介護保険のかしこい使い方』(雲母書房)ある。

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