ご両親が元気なうちは、「介護なんて当分先のこと」と他人ごとのようにお考えの方も多いでしょう。しかし介護は突然やってきます。想定もしなかった事態に戸惑い、余計な負担まで背負い込んだ結果、心身の健康を害してしまうこともあるのです。突然の事態に動揺しないためにも、いまから準備をしておくことが大切です。
そこでうまく乗り切るための心構え、準備しておくべきこと、介護サービスを受ける方法、介護サービスの仕組み・精神面・金銭面のアドバイス、予防などについて、淑徳大学総合福祉学部教授の結城康博先生に教えていただきました。
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介護保険のサービスは認定を受けないと利用できません
介護保険のサービスを、健康保険のようにすぐ利用できると思っている方が多いと思います。しかし、介護保険被保険者証(65歳になるときに全員に交付)があってもすぐにサービスを利用することはできません。利用するには「要介護認定」の手続きが必要で、手続きをしてもすぐには認定をしてもらえず、30日程度はかかります。緊急の場合は特例の処置がなされることもあります。
基本的に介護保険サービスを利用できる対象者は65歳以上の要介護・要支援の認定を受けた人となります。もしくは40歳以上65歳未満の、初老期の認知症や脳血管疾患などの16の特定疾病のどれかにあてはまり、同様に認定を受けた人となっています。
認定を受けるにはどうしたらいいのでしょうか?
実際にサービスを利用するには、まずはお住まいの市区町村の窓口で要介護認定(要支援含む)の申請をします。その際、申請書、介護保険被保険者証などが必要になり、市区町村で異なるので確認しましょう。分からなければ、居住している「地域包括支援センター」に相談するのもいいでしょう。申請後は、調査員が自宅や施設を訪問して、心身の状態を確認するための認定調査を行います。また市区町村からの依頼により、かかりつけの医師が心身の状況について、主治医意見書を作成します。主治医がいない場合は、市区町村の指定医による診察となります。意見書の作成には、費用の自己負担は発生しません。
その後、認定調査結果や主治医意見書に基づきコンピューターによる一次判定と介護認定審査会による二次判定が行われ、市区町村が要介護度を決定します。その後、申請者に結果を通知します。要介護認定の有効期限は初回原則6カ月、その後12カ月ごとに更新が必要となります。
要介護度に応じて受けられるサービスが違います
介護サービスは、要介護度に応じて受けられるサービスが決まっています。そのため、要介護度が認定された後は、「どのような介護サービスを受けられるか」「どういった事業所を選ぶことができるのか」に関するサービス計画書(ケアプラン)の作成が必要となり、それをベースにサービスの利用が始まります。
認定は、要支援1・2、要介護1~5に分かれますが、前者は「地域包括支援センター」、後者は介護支援専門員(ケアマネジャー)のいる都道府県知事の指定を受けた「居宅介護支援事業者(ケアプラン作成事業者)」へケアプランの作成を依頼します。
認定調査にはなるべく家族が同席しましょう
認定調査には、日程を調整してもらいできるだけ家族の方が同席するようにしましょう。というのも、調査員と本人だけでは、コミュニケーションがうまくとれない場合もあり、「はい」「いいえ」だけの返答で、本来ならば要介護1なのに、要支援2になってしまう可能性もあるからです。認知症で普段は返答できないことも、調査員に対してはきちんと返答してしまうこともあります。また、調査票には特記事項、すなわち調査員の自由記述欄があります。1時間の調査時間では返答できたものの、普段はできないことを家族が同席して話せば記載してくれます。
さらに、プランを作成してくれるケアマネジャーと相性が合わない場合は変更も可能ですので、遠慮せずに申し立てましょう。
普段からかかりつけ医を持っておきましょう
主治医意見書作成には、かかりつけのお医者さまが心身の状況について作成します。主治医がいない場合は、市区町村の指定医による診察となりますが、その場での診察となるので、食い違いが発生しかねません。そうならないためにも、普段から近隣の医院・クリニックなどのかかりつけ医を持っておきましょう。通常の状態を把握していますので、スムーズに意見書を作成してくれます。もちろん、申請の際にかかりつけ医を指定することができます。
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