本当に遺言書を残すべきは「財産が少ない人」? 財産の金額と相続争い発生率の間にある意外な関係

「自筆証書遺言」なら費用を抑えられる

ところで、ひと口に遺言書といっても「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類あります。
後者の二つは立会人と公証人への依頼が必要で、費用と手間がかかります。しかし、「自筆証書遺言」は自分で書くだけですので、費用をかけずに作成できます。

とはいうものの、自筆証書遺言には、自分で保管しなければならない、様式を間違うと無効になってしまう、死後に家庭裁判所の検認を受けなければならない、などの手間がありました。

ところが、近年になって遺言関係の法律が改正・追加され、これらの面倒を回避できるようになったのです。

まず「自筆証書遺言の方式緩和」が施行され、財産目録に限りパソコンでの出力や通帳のコピー、不動産の登記事項証明書などの添付で許されるようになりました。

また、「遺言書保管法」の成立によって、自筆証書遺言は法務局で保管してもらえるようになりました。しかも、法務局に保管を依頼する際に遺言書保管官が遺言書の様式が法務省令に則っているかどうかを確認してくれるので、不備で遺言が無効になることは避けられるし、家庭裁判所の検証も受ける必要がなくなります。

最近は「遺言書キット」も販売されています。それを利用すれば、遺言書を残すのも、以前よりずっとラクになるでしょう。

 

保坂 隆
1952年山梨県生まれ。保坂サイコオンコロジー・クリニック院長。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学精神神経科入局。1990年より2年間、米国カリフォルニア大学へ留学。東海大学医学部教授(精神医学)、聖路加国際病院リエゾンセンター長・精神腫瘍科部長、聖路加国際大学臨床教授を経て、現職。また実際に仏門に入るなど仏教に造詣が深い。著書に『精神科医が教える 心が軽くなる「老後の整理術」』『精神科医が教える お金をかけない「老後の楽しみ方」』(以上、PHP研究所)、『人間、60歳からが一番おもしろい !』『ちょこっとズボラな老後のすすめ』『繊細な人の仕事・人間関係がうまくいく方法』(以上、三笠書房)など

※本記事は保坂 隆著の書籍『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』(明日香出版社)から一部抜粋・編集しました。

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