本当に遺言書を残すべきは「財産が少ない人」? 財産の金額と相続争い発生率の間にある意外な関係

『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』 (保坂 隆/明日香出版社)第7回【全7回】

「老後」について、不安なことを耳にする機会が多い昨今。老後とは本当に怖いものでしょうか? 保坂サイコオンコロジー・クリニック院長の保坂隆氏は、著書『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』のなかで、「老後ほど好きに人生を楽しめる時期はない」と言います。ただし、それには手元のお金をやりくりする力が必要です。具体的には、どのような点に気を付ければよいのか。やりくりのコツを見ていきましょう。

※本記事は保坂 隆著の書籍『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』(明日香出版社)から一部抜粋・編集しました。


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※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)

財産が少ない人ほど遺言書を残すべき理由

日本財団が40歳以上の男女を対象に実施した「遺贈に関する意識調査」によると、遺言書をすでに準備していると答えた人の割合はわずか3.2%に留まっていたそうです。

私はこの3.2%に含まれていて、すでに遺言書を準備しています。この話を友人にすると、必ず返ってくる言葉が「お前は財産があるからだ。オレには財産と呼べるものなどないから、遺言書なんていらないよ」というものです。

しかし、私が遺言書を準備しているのは財産があるからではありません。それほど財産がないからこそ、逆にしっかりした遺言書が必要なのです。

なぜだかわかりますか。

財産があまりない場合ほど、残された家族が相続争いをする傾向があるからです。実際に家庭裁判所に持ち込まれた遺産相続の争いを見ると、その7割以上が遺産額5000万円以下で起きているそうです。

知人の弁護士さんによると、100万円以下の預貯金をめぐって相続争いが起き、家庭裁判所へ相談を持ち込んだケースもあるそうです。

また、「お父さんの貯金が50万円あった。これはオレのものだから」「いや、私にも権利がある」「自分には半分よこせ!」と、相続財産としてはわずかなお金の奪い合いが、よりにもよって、臨終に勃発した話を看護師から聞いたことがあります。

自分がいよいよ家族ともお別れというときに、こんな悲しい争いが起きたら、なんともやるせないと思いませんか。

面倒な争いが起きるのは、現役世代の収入が頭打ちで、退職金や年金収入もあてにできないのも一因と思われます。それどころか、あれこれお金が必要な中年期にリストラされるケースも増えたことから、どうしても親の財産をあてにしがちなのです。自分の相続分を少しでも多くしたいという欲が出てしまうのでしょう。

 

保坂 隆
1952年山梨県生まれ。保坂サイコオンコロジー・クリニック院長。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学精神神経科入局。1990年より2年間、米国カリフォルニア大学へ留学。東海大学医学部教授(精神医学)、聖路加国際病院リエゾンセンター長・精神腫瘍科部長、聖路加国際大学臨床教授を経て、現職。また実際に仏門に入るなど仏教に造詣が深い。著書に『精神科医が教える 心が軽くなる「老後の整理術」』『精神科医が教える お金をかけない「老後の楽しみ方」』(以上、PHP研究所)、『人間、60歳からが一番おもしろい !』『ちょこっとズボラな老後のすすめ』『繊細な人の仕事・人間関係がうまくいく方法』(以上、三笠書房)など

※本記事は保坂 隆著の書籍『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』(明日香出版社)から一部抜粋・編集しました。

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