『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』 (保坂 隆/明日香出版社)第2回【全7回】
「老後」について、不安なことを耳にする機会が多い昨今。老後とは本当に怖いものでしょうか? 保坂サイコオンコロジー・クリニック院長の保坂隆氏は、著書『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』のなかで、「老後ほど好きに人生を楽しめる時期はない」と言います。ただし、それには手元のお金をやりくりする力が必要です。具体的には、どのような点に気を付ければよいのか。やりくりのコツを見ていきましょう。
※本記事は保坂 隆著の書籍『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』(明日香出版社)から一部抜粋・編集しました。
「老後資金」は心配しても始まらない
内閣府の「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(平成27年)によると、日本の高齢者の88.3%が現在の老後の生活について「満足している」「まあ満足している」と回答しています。じつに約90%の高齢者が「現在の生活に満足している」のです。
にもかかわらず、「老後の生活が不安」「老後のお金について不安でたまらない」という声ばかり聞こえてくるのはなぜでしょうか。
近年、急速に発展してきた脳科学研究の結果、日本人は「不安になりやすい」気質の人が多いことがわかってきました。
明るい気分に向かわせるセロトニン(脳内で働く神経伝達物質の一種)の数を決める遺伝子にはいくつかタイプがあって、2009年に発表されたデータによると、東アジア人はヨーロッパ人よりも「不安」を感じやすい遺伝子を多く持っているとのことです。なかでも、その遺伝子をいちばん多く持っているのが日本人だそうです。
ちなみに、不安傾向の強い人は、知能が高くて優秀という側面も持っています。
不安を感じるのならば行動しよう
ともあれ、日本人は不安になりやすく、不安に関する情報に強く反応しやすいのです。マスコミはそれをよく知っているため、不安をあおるような記事を繰り返し掲載します。言うまでもなく、そのほうがウケがよく、売れるからです。
そのメインターゲットは、もっぱら老後不安にかられやすい高齢者。最近ではシニアばかりでなく、ビジネスパーソン対象の週刊誌でも、毎週のように「老後資金は〇千万は必要」とか、「年金制度は崩壊する」といった記事を書き立て、テレビはテレビで「老後破産」特集などを組むので、いっそう不安に駆り立てられます。
こうした情報が、いやが応にも不安な心理をあおるのです。
でも、いたずらに「老後のお金が不安だ」とこぼしたところで、何にもなりません。本当に不安なら、解消するために有効な行動を始めればいいのです。
不安をなくそうとする意欲は大きなエネルギーに変わります。そのエネルギーは、これから先を前向きに生きていくための大きな力になって、あなたの「ひとり老後」をしっかり支えてくれるはずです。