老後への不安の大半は「お金」。精神科医が教える、不安の「正体」と老後の暮らしを楽しむ「術」

老後に本当に必要な資金はコレとコレ

厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」(令和4年度)によると、その平均受給額は、国民年金が5万6316円、厚生年金が14万4982円となっています。年金をもらう年齢が近づいてくると、自分が受け取る年金額についての知らせが届きます。それを見て、多かれ少なかれ不安を覚えるのは当然というべきかもしれません。

しかし、「この額では足りない......」といくら嘆いてみても、天からお金が降ってくるわけではなく、この範囲でなんとか暮らし、足りないぶんはこれまでの蓄えを取り崩していくほかないのが老後の暮らしです。

現役時代に稼いでいた額と比べて不安になるのはわからないではありませんが、住宅ローンや子供の教育費など、「人生の二大出費」は終わっていることが多いでしょう。では、この先、どんな出費があるのでしょうか。

生活費は当然必要ですが、あと大きなところでは医療費(介護費用)程度ではないでしょうか。たしかにひとり老後ともなると、入ってくるものは少なくなりますが、そのぶん、出ていくものも少なくなるのです。

「案ずるより産むがやすい」というように、実際に年金暮らしを始め、半年もして慣れてくると、不安を口にする人はめっきり減ってくるようです。「カニは自分の甲羅に合わせて穴を掘る」という言葉もありますが、人も自分の財布のサイズに合わせて、ちゃんと暮らしを軌道修正していく知恵を持ち合わせているのです。「身の丈で生きる」というのも、老後の知恵のひとつでしょう。

なんとかなる。なんとかやっていく―。これが年金暮らしの心得です。

 

保坂 隆
1952年山梨県生まれ。保坂サイコオンコロジー・クリニック院長。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学精神神経科入局。1990年より2年間、米国カリフォルニア大学へ留学。東海大学医学部教授(精神医学)、聖路加国際病院リエゾンセンター長・精神腫瘍科部長、聖路加国際大学臨床教授を経て、現職。また実際に仏門に入るなど仏教に造詣が深い。著書に『精神科医が教える 心が軽くなる「老後の整理術」』『精神科医が教える お金をかけない「老後の楽しみ方」』(以上、PHP研究所)、『人間、60歳からが一番おもしろい !』『ちょこっとズボラな老後のすすめ』『繊細な人の仕事・人間関係がうまくいく方法』(以上、三笠書房)など

※本記事は保坂 隆著の書籍『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』(明日香出版社)から一部抜粋・編集しました。

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