コロナ禍なのに人を集めた講演会をしたい!? 「町民の要望も聞けないのか」とゴリ押しする地元文化人

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:59
プロフィール:役場勤めという仕事柄、いろいろと相談事を受けることがありますが、今回はほとほと参りました。

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私の知り合いのAさん(76歳)は、農業のかたわら郷土の歴史をたどる趣味に没頭してきた方です。

「好きこそものの上手なれ」という言葉通り、郷土史の研究では一目置かれる存在となり、大学の講師として招かれることもあると聞きます。

私も町の広報誌に郷土の歴史に係るコラム記事を頼んだことがありますが、飾らない人柄そのままの分かりやすい内容で、なかなか好評でした。

そんなわけでお付き合いが始まり、時々、お宅に上がり込んでお話を聞くほどの仲になりました。

「今度いよいよ本を出すことになってね」

「それはすごいですね。長年の努力のたまものですね」

「まあ自費出版なんで、赤字覚悟だけどね」

「いやいや、大したものですよ」

今まで取り組んできた探究の成果を本にまとめたいという話は以前から聞いていたので、素直に大望の成就を喜んでいました。

「ところで、ウジさん。町の集会所の使用許可って、取れますかね?」

「え? 集会所ですか?」

「ささやかながら出版記念と思ってね、本の即売も兼ねた講演会をしようと思うんだよ」

突然の話に目を丸くしてしまいました。

「いや、販売目的だとちょっと面倒ですね...それに、今はほら、人を集めるのはちょっと...」

「別に無理やり来てもらおうってわけじゃない。コロナが気になるなら、来なきゃいいだけの話さ」

「いやですから、そもそも人を集めようとすることがですね...」

「本だけじゃ伝わらない、生資料を見せながらの話を聞いて欲しいだけなんだよ」

時節のこともあり、説得を試みましたがなかなか思い直してくれません。

「販売目的の申請は面倒ですよ。よほどの感染対策をしないと許可は難しいと思いますし」

「販売はおまけだよ。話だけして本は書店で、ってんじゃ妙だろ?」

「そもそも人を集めるのがですね...」

「何も悪いことしようってわけじゃないんだ、表現の自由ってもんがあるだろ?」

何を言っても頑固にやりたがるので、ひとまず考えさせてもらうということでその場は収めました。

翌日、一応と思って集会所の管理をしている部署の知り合いに話をしましたが、やはり難しいとの返事でした。

「入場者は特定の招待者のみに、本は紹介だけにとどめるなら」

そういった妥協案が出ましたが、かなり譲歩しての意見だと思います。

しかし、その案を伝えるとAさんはみるみる不機嫌になりました。

「特定の招待者だけでいいんだったら集会所でなくてもいいだろうが! 広く知らせたいという思いが分かってもらえないのは心外だ」

どうにも納得しそうにありません。

「...販売の方は、予約注文だけ取って発送するのでもしょうがないが...」

「いや、そもそも販売行為が問題なので...」

「まったく! 町民のやりたいことができないなんて、町として問題じゃないのかね?」

「私としても、何とかAさんの思いを実現したいからこそ妥協案をですね...」

「だから、そもそも妥協する必要なんかないって言ってるんだよ。表現の自由を守れなくて何が住民サービスだ」

Aさんは結局怒りをぶつけに、町の担当者に直談判しに赴いてしまいました。

聞いたところでは、Aさんは1時間以上担当者に食ってかかったようですが、最後は「規則ですから、皆さんにお守りいただいているんです」と諭されて引き下がったそうです。

私はまた何か言われるのではないかと気になって、その後Aさんとはお会いできずにモヤモヤしています。

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