<この体験記を書いた人>
ペンネーム:トリコ
性別:女
年齢:48
プロフィール:夫婦関係や舅姑との関係に悩んできた兼業主婦です。現在は、自営業の夫(51歳)と大学生の息子の3人で暮らし。
2020年の夏に満77歳で亡くなった義母は、気さくで面倒見の良い人でした。
車で15分の距離にある息子夫婦のアパートを訪ねてきては、菓子や果物を差し入れてくれました。
たまに「これは要らないな」と思う古着や雑貨を押し付けられることはありましたが、差し入れの品はすべてありがたくいただきました。
とくに25年前、結婚したばかりの頃の私(当時23歳)は、義母(当時52歳)に気に入られたくて、大げさに喜んで受け取っていたように思います。
ただひとつ、「アレ」を除いては。
ガーデニングを趣味としていた義母は、差し入れと一緒に、自宅の庭に咲かせた自慢のチューリップやヒマワリなども届けてくれました。
しかも、入れ物に困らないようにと花瓶まで持参して。
花が好きな人なら嬉しいプレゼントかもしれません。
しかし、私に土いじりの趣味はなく、それどころか植物の世話は大の苦手でした。
小学生の頃、理科の授業で育てていたアサガオやナスを、クラスメイトの誰よりも早く枯らしていたという暗い過去もあります。
義母が届けてくれた花も、最初のうちはまめに世話をしていたのですが、仕事や家事に追われるうちに花瓶の水を替えるのを忘れ、すぐにダメにしていました。
義母が突然訪ねてきた時は、花瓶の中でしおれているマーガレットを見られてしまい、気まずい思いをしたものです。
しかし、切り花ならば遅かれ早かれ枯れてしまうので、そこまで罪悪感はありませんでした。
問題は鉢植えです。
いつ頃からか、私の誕生日やクリスマスには、義母が寄せ植えをしたプランターをプレゼントしてくれるようになりました。
手間がかかっていると思うと簡単に枯らすわけにもいかず、出勤前の忙しい朝に時間をみつけて水をあげていました。
しかし、その努力も長くは続かず、アパートの狭いベランダには枯れた花のプランターが増えていくばかり...。
その光景を目にするたびに自己嫌悪に襲われていました。
意を決して、義母に植物の世話が苦手だと伝えたこともあります。
しかし義母は私の気持ちを察する様子はまったくありませんでした。
「いいのよ、枯らしたって。こうやってもらってくれる人がいるだけで嬉しいんだから」
そんなますます断れなくなる返事が返ってきました。
夫に相談してみても「要らないなら自分ではっきり言えよ」と冷たく言われ途方に暮れてしまいました。
そこで思いついた苦肉の策が、ベランダを狭くする方法でした。
夫を説得し、前々から欲しかった家庭用の小型収納庫を購入してベランダに設置したのです。
義母には、「プランターの置き場所がないので」と言って花のプレゼントを断りました。
もちろん、まったくスペースがないわけではなく、かなり無理のある言い訳だったかもしれませんが、どうにか納得してもらいました。
それから数週間後、義母が大きなダンボール箱を車に積んで現れました。
嫌な予感とともに箱を開けると、出てきたのはフェンス型のフラワースタンド。
フェンスの部分にS字フックを使ってプランターを吊るし、花を飾ることができるオシャレな代物でした。
高さは私の身長と同じくらいでしたが、幅と奥行きがコンパクトサイズのため、収納庫がある狭いベランダにも置くことができました。
3次元空間を無駄なく利用できるアイデア商品です。
設置が終わると、義母はさっそく小さなプランターを20鉢も吊るし、「花のある生活はいいわよ」とご満悦の様子で帰っていきました。
結局、私の気持ちは夫から義母に伝えてもらい、その後、花のプレゼント攻撃はなくなりました。
当時は悩まされましたが、義母が亡くなった後はふと懐かしく思うことも...ですが、今もらっても、やっぱり邪魔に感じたのだろうな...。
他人からの厚意は、時に強い心を持って断る勇気も必要だと痛感した出来事です。
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