<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:58
プロフィール:地方の町役場で広報課に勤めている58歳男性です。採用内定取り消しのニュースを見てある新人を思い出しました。
最近は経営状態が思わしくない会社が多く、一度出した内定を取り消さざるを得ない状態になっている所もあると聞きます。
内定を取り消された学生さんの1人は、「働いてみて駄目だと言うなら仕方ないが、仕事さえさせてもらえれば喜んでもらえるかもしれないのに」とインタビューに答えていました。
最近の学生さんは自信があるんだなあ、と感心しながらも、「まあ、あんまり自信があるのも考えものだけどね...」と、ある新人のことを思い出しました。
数年前、私の勤める役場の広報課に新入職員のA子さん(当時23歳)が配属されました。
新人は必ずいくつかの部署での職務経験を積むことになっており、彼女も私の部下として広報課での研修を受けることになりました。
「よろしくお願いします。なんでも言いつけてください」
自信満々の自己紹介を受けました。
研修期間ということで、彼女には私について仕事をしてもらうことにしました。
取材に行く時について来てもらったり、資料をファイリングしたり、取材相手へのお礼の電話を頼んだりしていました。
「私も記事を書いてみたいです。文章書くのは得意なんです」
そう言われましたが「まあ、そのうちにね...」とあまり気に留めずにいました。
そんな期間が2カ月ほど過ぎた6月のことです。
私は突然副町長室に呼び出されました。
それも、内々に出向くように、と副町長自らのお呼び出しです。
いいことならいいですが、こんな呼び出しはたいてい良くない話です。
何をしでかしたかと、あてどなく思いを巡らせながら副町長室のドアをたたきました。
「...実はね、君の所で研修をしているA子さんなんだが...」
「彼女が何か? 取材先の方を怒らせでも?」
「いやいや、彼女からね、パワハラを受けていると訴えがあったんだよ」
「...は?」
寝耳に水というか、熱湯です。
今日も普通に出勤していて、私と一緒に小学校のイベントの取材に行ったばかりでした。
「彼女は不当に簡単な仕事しかさせてもらえないと訴えてきたんだよ」
「いや、それは研修中ですから...」
「記事を書かせてほしいと訴えたが、無視されたと言ってる」
「無視だなんて...ただまだ早いかと思って...」
副町長によると彼女は有名国立大の文学部卒で、広報課への配属もそうしたキャリアを買っているものと思っていたそうです。
こちらはそんなことは知りませんから、普通の研修としてしか考えていませんでした。
「いやあ、悪気はなかったんだけど、嫌な思いをさせてしまって申し訳ない」
なんとなく納得はいきませんが、傷つけてしまったことを彼女に謝罪し、いくつかコラム記事を任せるようにしました。
確かに自信を持つだけのことはあり、取材から執筆までそつなくこなしているのは感心しました。
結局彼女は秋の配置転換で新しい研修先に配属になり、私の下は離れました。
職場の噂ではそこでも何かと悶着を起こしていたようで、また最近の異動で本庁からは離れました。
その部署は1人でいろいろ回さなければならない部署で敬遠されているのですが、彼女には向いてるかも、と適材適所だと感じたものです。
仕事上の不満は、昔は飲み会での愚痴で発散されていたものですが、最近はそうした飲みニュケーションは減る一方です。
ハラスメント対応が大事だと言われる時代には、仕事への不満がいきなりハラスメントの訴えになってしまうこともあるんだ、と寒気のした出来事でした。
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