<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:58
プロフィール:大学進学を機に実家を離れ、そのまま地方都市で公務員をしている58歳の男性です。
コロナ禍の中、実家の両親はすっかり家に閉じこもっています。
父(89)は足が弱くなって外出時は杖を使っている状態、母(88)も体調がすぐれない状態が続いています。
ただ2人共もともと出歩くのが好きな方ではなかったこともあって、家にこもる生活は苦ではないようです。
私は大学進学時に首都圏の実家を離れて地方都市での生活をはじめ、そのまま公務員として暮らし始めました。
兄(61)は実家近くで就職を決め、今も義姉(54)と実家からそう遠くないマンションで暮らしています。
コロナのさなか、何かと不安のある両親のことも兄夫婦が見ていてくれると思うと安心です。
ただ父は、若くして実家を出た私よりは、ずっと近くにいて困った時には援助をしてくれる兄の方を頼もしく思っているようです。
「お前はそこで根を張っているんだろう」
これが口癖で、良くも悪くも私のことをあまり気にかけていません。
コロナ騒ぎで盆の帰省も憚られ、1年近く両親に会っていないので、そろそろいい頃じゃないかと思って、年明けに帰省しようと思っている旨を電話で伝えました。
するといきなり「Go Toを使って得したいだけじゃないのか?」と揶揄されてしまいました。
「そういうわけじゃなくて、久しぶりに顔を見たいなと思ってさ」
「母さんとテレビ通話なんぞもしてただろ? それで十分」
確かにこの夏に一念発起した母がスマホデビューしたので、その後もちょくちょくとテレビ通話をしていました。
「いや、でもさ、直に合うのはまた違うだろ? おふくろの体調も心配だしさ」
「近くにたかふみ(兄の名前です)たちもいるし、いまさらお前に心配してもらわんでもいいよ」
いまさら、という言い方にカチンときました。
「いまさら、って何だよ」
つい語気が荒くなってしまいました。
すると父も強い口調で言い返してきます。
「だから、今になって殊勝な息子になる必要はないって意味だよ」
「は? 心配する必要もないって意味?」
「お前は自分で決めて家を離れたんだろ? 何かと世間の目もあるし、何をそんなに気にしてるのか知らんが、こんな面倒な時期にわざわざ帰ってこなくていいと言ってるんだよ」
「それはどうもすみませんでした!」
思わず電話を切ってしまいました。
「どうしたの? ずいぶんな剣幕ねえ...」
台所で夕食の支度をしていた妻(56)が私の声に驚いてリビングに入ってきました。
「まったく...あんな言い方しなくてもいいじゃないか...」
妻に電話の顛末を放しました。
「まあまあ、言い方はちょっととは思うけど、向こうも近所の目ってものがあるだろうし、嫌な思いをしないように気遣ってくれたんじゃないの?」
「そんなことは分かってるよ、でもさ、息子が親を心配しちゃいけないのか?」
「だから言い方はあると思う、って言ってるでしょ...」
そう言いながら妻は台所に戻っていきました。
実家を離れて暮らしているだけに、心だけはつながっていると思っていたいのですが、なんだか心の距離も一段と離れてしまったような寂しさを感じています。
年が明けても一向にコロナ感染の状況も改善されていませんね。
結果として帰省せずに良かったのかもしれませんが、父との関係も改善されないままなのが気がかりです。
関連の体験記:あなた、母親の自覚はあるの? 長女が「17歳で出産した孫」を家族で育てている我が家だけど...
関連の体験記:「手伝いますよ」のひと言が命取り...44歳、義実家の町内会で「若手」と重宝される私の葛藤
関連の体験記:弟の妻が幼い子供2人を残して亡くなってしまい...80歳の両親が「子育て」に乗り出した結果は...⁉
- ※
- 健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
- ※
- 記事に使用している画像はイメージです。