<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ゆらら
性別:女
年齢:51
プロフィール:勤務先の書店のオープン当初の店長は40代で物静か過ぎて、従業員とコミュニケーションが取れない困った人でした。
書店で働く51歳の私。
不祥事などのニュースを見ていると思いだすことがあります。
オープンから2年在籍した店長は、必要なこと以外話さない、とにかくおとなしい性格で、時には大事なことすら話してくれなくて周りを困らせていました。
朝礼の時も、メモや書類を見ながらぼそぼそと話し、従業員とは会話もろくにしません。
休憩の入りや戻って来た時に声を掛けると、小さく返事をする以外ほとんど口を利いたことがありません。
そしてそのまま仕事を終え、店長が先に帰るシフトの日は「お先~」と帰って行き、私たちが先に帰る時は「お疲れ~」と声を掛けられ終わりです。
冗談交じりに店長の資質に欠けてないかと話題になることも度々ありました。
半年ほど経った頃、初めて従業員みんなで忘年会を開くことになりました。
当日のシフトの都合で出られない人もいましたが、15人ほどが出席して飲み会が開かれました。
店長は夕方までのシフトだったので、開催時間には到着しテーブルに着きました。
ビールやチューハイ、ウーロン茶などそれぞれ注文し、アルコールが苦手な人も料理を楽しみながら賑やかにしていると、
「○○さんてさぁ、前も書店員だったっけ?」
突然店長がそう声を掛けてきました。
大袈裟ではなく初めて声を掛けられたような気分でした。
「えっ? あぁ、そうです。前も本屋で6年くらい」
ちょっと慌てて動揺した感じで答えました。
「だよね、動きがね、何かさぁ。経験者って感じでサクサクしてるよね」
店長のその言葉が衝撃的でした。
声を掛けられたことも、そして日頃の仕事の様子を観察されていたことも驚きで、それを普通に伝えられたことも驚きでした。
勿論、店長ですから普通なことなのだと思います。
ただ、一緒に仕事を始めて半年近くほとんど口を利いたことがなかったのですから、私だけでなく周りも一瞬こちらを見たのを感じました。それくらいの驚きだったのです。
「○○さん、子供さん幾つだっけ?」
「前はどんな仕事してたの?」
店長はそれから他の従業員にもとフランクに話しかけ、出席した人達全てと会話をしたことが後で分かりました。
翌日、午後のシフトで出勤した店長はまたいつもの状態。
事務所の定位置に置き物のように座ったまま、時間になって「お先~」と帰って行きました。
忘年会の店長は一体何だったんだろうとしばらく話題になったのです。
ところがそれから数カ月後、新入社員の歓迎会を開いた席で、更にキャラが変わっていました。
「○○さん、電話の対応がさぁ、声かなぁ、うん、声小さいよね」
「(バイトの学生)、お前ギリで出勤するのやめようよ」
えらく強い態度で接しています。
話す内容は働くうえで必要なことだったり、普通に注意されれば直すべきことなのです。
しかし、それをお酒が入った状態で、しかも上からだったり馴れ馴れしすぎる口調で話すため、聞いていて引いてしまいました。
当然、店ではその話題でもちきりに。
どうやら店長はアルコールが入ると人が変わるという話が広がりました。
そんな中でも店長は相変わらず静かに仕事をしていました。
その後も数カ月に一度、従業員を集めての飲み会がありましたが、店長は全て参加し豹変を繰り返しました。
新しいバイトの女の子などは驚いて、離れた席に逃げるように移動しました。
でもビールを片手にあちこち廻り、声を掛けては時々キレ気味に仕事の仕方を注意していたのです。
そんな調子なので飲み会は回を追うごとに出席者が減って行き、特に若いバイトは1人も来なくなりました。
そして遂に飲み会は消滅してしまったのです。
2年後にようやく店長は他店へ異動に。
でも、結局みんなの中から「店長との飲み会」へのトラウマは消えることなく、新しい店長も警戒されるようになりました。
そして、何年経ってもうちの店では飲み会は開かれなくなってしまいました。
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