毎日が発見ネットの連載で「キッチン夫婦(妻)」としておなじみのべにゆうさん。彼女は40歳の時、14歳の息子がいる夫と結婚、以来、8年間にわたって生活を共にしてきました。ある日、中学2年生の多感な男子の母親になる――。継母としていろいろな出来事や、想いがあったと言います。今回は夏の特別連載として、10日間連続で「40歳の女性が、ある日、14歳の継母になった物語」をお送りします。
【前回】ゆっくりと縮まる距離。息子とのくだけた会話が何より嬉しい
【最初から読む】40歳だった私が「14歳男子の継母」になることを決めた日/14歳男子の継母になった私(1)
希望でいっぱいの大学生活のはずが...
2016年の春。高校を卒業した息子は希望していた地元の大学に入学。
新しい学生生活の始まりに緊張しつつも、大学生になる事に希望を抱きワクワクしていたのは見てとれた。
親戚やみんなから「おめでとう、良かったね」と言ってもらい、表情も晴れ晴れしかった。
大学への進学を決めたのは、高3の三者面談で夫が担任の先生から「こういう学校もありますよ」と聞き、息子も興味を示しチャレンジしてみることにした経緯がある。
選択肢の提案は先生から、おすすめはお父さんからではあったが、息子も前向きだったので、もちろん私も受験を応援した。
晴れての入学。
1年生の前半は新しいことに戸惑いながらも問題なく過ごせたようだ。
「学校どう?友達できた?」
「うん、まぁまぁ。友達いるよ」
そんな感じだった。
また、バイトでお金を貯めていつかバイクで日本一周がしたいとかそんな目標も話していて、私たちも息子がそれを実行できる日を楽しみにしていた。
息子の大学の成績表は自宅に郵送されてくるので、出席日数や成績、評価をそれで知ることができた。
1年生の前期は本人としても「このくらいかな」という感じ。
後期は...だいぶ成績が落ちていたので、心配はしていた。
この時「うん、勉強は難しいよ」と言っていた。
「勉強は難しい」
これが息子にとって大きなつまづきとなっていた。
私は"勉強が難しいのは当たり前""勉強のことなら本人が努力するしかない"と思ってしまい、深くは考えていなかった。
勉強の話、息子から2回は聞いていたのに。
それがサインだったかも知れないのに。
そこでもう少し何かを気がつけなかったのかと反省している。
その時は、わからないところを教えてもらえる友達はいないか、とか、学習相談室で相談してみたら?とか、それくらいのアドバイスしかできなかった。
2年生の日程がスタート。
朝、夫が息子に「今日の予定は?」と聞き、息子は大まかな講義の予定を教えてくれたので私もだいたい把握していた。
そのはずだったが、ある日から息子があまり学校へ行ってないように感じた。
変に疑うのは良くないと思ったので、1週間ほど様子をうかがうことにしたのだが、やはり行ってないと確信した。
私と夫が家を出た後に自分も大学に行くと言っていたのに、玄関の靴が動いた形跡が全くないのだ。
そのことを夫に伝えてみたら、「講義って時々変更になったり休講になったりもするしね」となんでもないように言う。
けどちょっと多くない?と思ったので、また夫に言ってみると「大学ってそういうものだよ」と言う。
本気で心配して言ってることをわかってもらえず、少し悲しい気分に。
夫は息子のことに関しては過敏に反応するし、マイナスのことを言われると拒否反応を示す。
私からの息子に対する不満は、どうしても受け入れ難いという態度。
夫に「Y君2年生になってから、やっぱり大学にあんまり行ってないんじゃないかなぁ?大丈夫なのかな?」と今度はそう思う理由を添えて言ってみた。
でも夫が最初に言ったのは「じゃあどうするの!?」という、怒り気味の言葉。
夫がやはり受け入れ難いようなので、まだもう少しの間様子を見ることにしたが、息子の様子は変わらなかった。
実は、講義に出席したかどうかは大学の学生の個人ページを見れば、すぐに確認することができた。
親にもログインパスワードが知らされていたのだが、これまで見ない方がいいように思っていたのだ。
しかし不確かな推測では夫は聞いてくれないだろう。
何日か一人で考え迷ったあげく、ログインして確認してみると、4月は大学へ行ったのはほんのわずかだった。
ずいぶん休んでいると確認してしまった以上、進級にもかかわることだし、どうしたのか聞かなければならないんじゃないか、と夫に伝えた。
4月の末、連休に入った頃のことだった。
夫と息子、1対1の話し合い
そこから数日を経て、とうとう夫は息子と1対1で話をした。
夫「Y(息子)ボロボロ泣いてさ、やっぱり大学行ってなかった。でも出席日数もあるし、連休終わったらもう1つも休まないくらいに行かなきゃいけないと思ってたって言うんだよ」
行こうとは思うんだけど行けない。
その理由は主に勉強についていけないこと。
息子は講義の内容がまるでわからなくて苦しんでいるようだった。
連休明けに息子は大学へ行ったが、それも1週間だけだった。
夫と私は話し合った。
夫と私の間で考え方を整理しておきたかったのだ。
3人で話し合う時に、夫と私の意見が割れて、息子に余計な心配を持たせたくなかったからだ。
結論らしい結論は出ず、毎晩、話始めるとなかなか終わらず、寝不足になっていたっけ。
私は「そもそも勉強そのものが嫌いな息子がなぜ苦しい思いまでして大学に行かなきゃないの?」と夫に言った。
私からすると、大学というのはもっともっと勉強を続けたい人が行くものだと思っていたからだ。
しかし夫も夫の両親も大学は大事だという考え。
夫は断固として、息子に大学を卒業して欲しいと願っていた。
それは大卒の肩書き欲しさだけでなく、4年間の学生生活で勉強以外のたくさんの経験をして欲しいと願っていたからでもあった。
私もその考えには同意する。
学生のうちにしたいと言っていた日本一周旅行にチャレンジしたり、今しかできないたくさんの経験をして欲しい。
夫と私の話し合いも行き詰まった。
どうしたらいい?
私の中での結論はあったがそれは言わないでおいた。
息子は「行った方がいいと思うし、行きたいとも思うけど、行こうとするといけない」と言う。
ボロボロ泣くほど、大きな悩みになっていた。
本人もどうしたらいいかわからない。
結論を急がせすぎてもいけないけど、しばらくこのままでいいとも思えず......
私はプロのカウンセラーに相談することを決めた。
つづく
【次回】大学に通えなくなった息子が、自分で導き出した「進むべき道」/14歳男子の継母になった私(9)
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