<この体験記を書いた人>
ペンネーム:さとみ
性別:女
年齢:42
プロフィール:小学1年の息子と主人の3人で暮らしています。小学校入学をきっかけに仕事を本格的に始めました。
今思えば昔から、私の母の口癖は「かわいそうに」でした。
私が「宿題が多い日なの」といえば「かわいそうに」。
「今日は雨にぬれちゃった」といえば「かわいそうに」。
あまりに頻繁に使うので、意味のある言葉だと考えたこともありませんし、母もまた単なる口癖であって、そこに意味があったとは思えません。
ところが今、私が子育てをしている中で、母が発する「かわいそうに」が大きな負担になってきました。
我が家は私の実家から徒歩でも10分のところ。
主人の通勤の便がよいことと、半分都会で半分田舎のちょうどよい環境が子育てには最高だと夫婦で相談して決めました。
息子も小さいころから祖父母が近くに住んでいる環境だったため、畑仕事を手伝ったり、一緒に近くの温泉に行ったりと、おじいちゃんおばあちゃんとの関係を楽しんでいます。
母の「かわいそうに」発言が耳につくようになったのは、息子が小学校に入学して私が本格的に就職をしてからのことです。
私の生活時間が変わったことによって家族の時間も変わりました。
息子は学校が終わってから「放課後会」と呼ばれる集まりで17時まで時間を過ごします。
主人のほうが早く仕事が終わり、夕食を待たせることもありました。
休日にはどこかに出かける前に一週間分の家事をまとめているので、遠出はできなくなりました。
息子が習い事をしたいといっても、送り迎えがいらない範囲でならと選択肢を狭めてしまっています。
朝もばたばたと忙しく、以前のように玄関の外まで見送ることはなくなりました。
ゴミを出している時間がなくなり、次回に持ち越したこともあります。
主人のお弁当も、冷凍食品のおかずが多くなりました。
どれもこれも私が仕事を始めたことによって変わった生活の変化です。
わざわざ母に報告することはありませんが、会話の中でこういう話が出てくると母は必ず、「かわいそうに」と眉をひそめます。
こういうと嫌味な母のように感じられますが、そうではないんです。
孫にも私の主人にも心から優しく、思いやりを持って接してくれています。
忙しいときには「夕ご飯を食べにおいで」と温かい食事を用意してくれていますし、近隣でイベントがあれば息子を誘って連れ出してくれます。
本当にいい母なんです。
もしかすれば今までも、「かわいそうに」と発していたのかもしれませんが、それに気がつかなかったのは私に心の余裕があったからかもしれません。
仕事を始めて時間に追われ、家事育児に手を抜いていると自分で感じているからこそ、母の「かわいそうに」が、私への責め言葉のように感じるのかもしれません。
本当に困っているのは母に対する思いではなく、そう感じてしまう自分に対してなのかもしれません......。
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