田舎に住むのにクルマは必需品。認知症が疑われる「80歳義父の免許返納」をどうすれば...⁉

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:不肖の婿
性別:男
年齢:55
プロフィール:妻(53歳)とともに地方公務員をしています。妻の実家近くに居を構えて20年近くになります。

田舎に住むのにクルマは必需品。認知症が疑われる「80歳義父の免許返納」をどうすれば...⁉ pixta_36692575_S.jpg

義父は今年80歳になりますが、現役のドライバーです。

妻の実家は山の中にあるので、何をするにも車は必須です。

現役のころはいろいろと職を経験し、ダンプの運転などもこなしたことがあり、今でも運転には絶対の自信を持っています。

「いやあ、この間、家の裏にイノシシが出てな」

「お父さん、またその話? もう何度も聞いたわよ」

また始まった、と妻は不機嫌な表情です。

週に1回程度は実家の義父母の様子を見に夫婦で訪ねるようにしているのですが、このごろ、いつもこの話をされるのです。

「そうか? 年だからな、物忘れがひどくなっちまって......」

お父さんは頭をかいて照れ隠しです。

とはいうものの物忘れというにはちょっと続きすぎている気がして、妻と顔を見合わせます。

「おとうさん! なにこの棚! さきイカでいっぱいじゃないの」

「好きなんだからさ、買い置きしてんだよ」

見ると棚の中はさきイカでいっぱいになっています。

どんなに好きか知りませんが、毎日1袋ずつ食べてもしばらくは無くなりそうにない量です。

「出かけるたびに買ってくるんだもんねえ、そりゃ貯まりますよ」

義母(78歳)は苦笑いをしながらそう言います。

実家を出て家に戻る車内で妻がぼそっと言います。

「いくら何でもおかしいわよ。物忘れとかってレベルじゃないでしょ?」

「確かにね、あの棚を見てれば、普通だったらさきイカは買い足さないよなあ......」

「普通だったら、って......普通じゃないってこと?」

そう言って妻は考え込んでしまいました。

家に帰って夕食後、お茶を飲みながら妻が言い出しました。

「やっぱり、認知症だと思う」

「え? ああ、お父さんのことか」

「同じ話をやたら繰り返したり、同じものを買い続けたり、ほかに考えられないじゃない?」

「そうかなあ......それ以外の、畑仕事とかはちゃんとやってるじゃない、運転もできてるし......」

「それよ! それも大問題じゃない。運転なんてさせてていいのかしら?」

妻はみるみる不安げな表情になっていきます。

「もしも事故でも起こしたら......最近多いじゃない、そういうのって」

「まあ、確かに、免許返納してもらった方が安心は安心だけどなあ」

ただ義父から車を取り上げてしまったら、義父母の生活は急激に不便になります。

田舎の悲しさで、採算の取れない路線バスがなくなってもう10年ほど経ちました。

買い物や用足しは言うに及ばず、病院に行くのだって車頼みです。

呼吸器系の病があってしばしば体調を崩す義母のことを考えると大きな不安材料です。

「だから、そういう時はタクシーを呼んでさあ......」

「買い物なんかも考えたら結構な頻度だぜ。タクシー代も馬鹿にならないよ」

「じゃあ、私たちのどっちかが付き合ってあげれば」

「おいおい、そんな簡単に休みとれる状況じゃないだろう? そうそう気ままに付き合えるわけじゃないよ」

免許返納が望ましいのは言うまでもありませんが、自分たちの生活のことを考えるとなかなか決心できません。

「いやあ、最近のイノシシは家のすぐそばまで来やがってな」

義父は相変わらず同じ話を繰り返してきます。

それをたしなめながら、夫婦で顔を見合わせてしまう日々です。

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