<この体験記を書いた人>
ペンネーム:向日葵
性別:女
年齢:51
プロフィール:最近、老いた実家の両親のことが気がかりな、2人の子ども&夫と暮らすマイペース母さんです。
74歳の実家の父は、現在は引退していますが元長距離トラックの運転手。
全国の道路事情にも詳しく、私にとって父は『絶対道に迷わないプロドライバー』でした。
ところが、この認識を大きく覆す出来事がつい先日起こったのです。
その日は木曜日。
夜勤明けの私は、いつものように夫と中学生の末息子をそれぞれ会社と学校に送りだし、洗濯と掃除をすませて11時ごろに、ひと段落。
その時、いきなり父から「今、お前の家に向かってるんだが、どうも道に迷ったみたいだ」とスマホに電話が入ったのです。
正直「迷った」と聞いてかなり驚きました。
実家から我が家までは車で30分の距離で、今まで父は何度もわが家に遊びに来ていますが、道に迷ったことは一度もありませんでした。
コンビニに停車中だという父に、コンビニの店名を見てもらったところ、なんとわが家とは実家を挟んで反対方向にある店舗と判明。
実家からは車で30分、わが家からは1時間半ほどの位置に父はいました。
そもそも実家をスタートしたときから、方向が逆だったようです。
「年だから、そんな勘違いもあるのかな?」と腑に落ちないながらも父にそのことを伝え、分かりやすい大きな道路を選んで説明しました。
「そこからなら1時間半くらいで着くからね」と私が言うと、父は「分かった」と言って明るい声で電話を切りましたが、ここからが大変でした。
なんと1時間半後にまた父から「なんだか良くわからないんだ......」と、途方にくれた声で電話が入ったのです。
内心の驚きを隠しつつ冷静に現在位置を尋ねると、わが家から車で10分程の場所にいることが分かり、ほっと一安心。
「その道を来た方向に戻って、5分くらいの交差点を左に曲がって、5、6分くらいだから」と道順を説明し、待つこと30分。
もうとっくに着いていいはずなのに、父は一向に現れません。
「まさか、また道に迷った?」「交通事故とかないよね?」と色々な可能性が頭をぐるぐると回ります。
こちらから電話してみようかと考えましたが、もしも運転中で着信音に気を取られたら危ないんじゃないかと変な心配が頭をよぎり、ためらっているうちに電話に着信。
飛びつくように電話を取れば案の定父からで、「うーん。分からん......」と悲しそうな声が。
「大きな赤い橋を通った」と言うので、ノートパソコンで地図を開いて調べてみたところ、わが家から1時間程離れた3つ隣りの市にいることが判明。
どうやら、先ほど指示した「家から5分くらいの信号」を左に曲がらず直進してしまったようです。
「父にその場に居てもらって私が車で迎えに行き、私の車の後を付いてきてもらった方が早いかも」そう思い、父に伝えると父は「それじゃお前が大変だから、俺が行く」といって譲りません。
仕方がないので父の方からマメに電話をかけてもらい、現在位置を確認しながら道案内をすることに。
しかし、これがどうしてもわが家に辿り着かない。
そうこうしているうちに時間は過ぎて、最初に父から電話が入ってから5時間が経過。
時計の針は既に夕方の4時を回っていました。
これはもう、次に電話が入ったときには父を迎えに行こうと心で決めたところで、父から「知っている道に出た」と連絡が入り、心底安堵しました。
とは言っても、そこはわが家よりも実家に近い場所だったため翌日私の方が実家に遊びに行くことを約束して、父にはそのまま実家に帰って貰いました。
私にとって、完璧なプロドライバーだった父がわが家に辿り着けなかった。
74歳になった父の老いを痛感させられる、そんな1日でした。
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