<この体験記を書いた人>
ペンネーム:324
性別:37
年齢:女
プロフィール:料理好きの主婦。
まだまだコロナが収束しそうもない、2021年の卒入学シーズン。
大学の入学式を控えて、緊張とわくわくで落ち着かない気持ちだった、20年前の自分を思い出しました。
2000年、私は高校3年生でした。
進路を決めて、4年生大学を目指すならオープンキャンパスへ行くなり予備校へ行くなりしなければなりません。
友人は皆動き始めていますが、私には当時付き合っていた同級生の彼がいて、その時は彼と会うことに夢中で、面倒くさい進路の話など二の次、三の次だったのです。
やがて夏休みになりました。
進学するなら追い込みの時期に差しかかっています。
私は親から4年生の大学へ行くよう、言われていました。
彼は早々に音楽の専門学校へ行くことを決めていたので、高校を卒業してからのことを何も考えていない私を心配していました。
でもまだ17歳と若く浅はかだった私は、ずっとこんな楽しい日々が続く、と本気で思っていて、心配してくれている彼の気持ちもよそに花火大会や海水浴など、2人の思い出作りに遊び惚けていました。
そんなある日、いつになく真面目な顔をした彼に言われました。
「大学行くんでしょ? こんなことしてていいの? 勉強しなきゃ」
「いいの、大丈夫だよ」
そう答えた私でしたが、彼から「全然大丈夫じゃないよ」と返され、何だか重苦しい雰囲気に。
それ以降彼から電話やメールをしてくることも、遊びに誘ってくれることもなくなり、夏の終わりには恋も終わってしまいました。
一緒にいると私の為にならない、そう思っての発言、行動だったのか、ただ単にもう疲れたのかははっきりしません。
でも優しくて気配りができ、高校生にしてはとても大人びた彼の性格からすると、前者だったような気がします。
初めての失恋でがっくり落ち込む私に母がかけた言葉は、今でも忘れません。
「もともと進路もバラバラで、遅かれ早かれダメになっていた。彼は2年経てば社会人で、あなたは大学生でしょ。大体、音楽の専門学校を卒業して彼は何になるの? ミュージシャン? あなたと彼では見る景色が違う、住む世界が違えばいずれ気持ちは離れてしまうもの。視野を広く持ちなさい」
今聞いても、とても厳しい言葉だと思います。
当時の私にはこの意味が理解できず、反発心すら覚えました。
そうして時は経ち、2005年。
ちょうど大学を卒業した年に『きみに読む物語』という映画が公開されました。
身分違いの若い男女の恋を描いた名作で、今も大好きな映画の一つです。
シチュエーションは違うのですが、母親が娘を説得するシーンがあって、それがいつ観ても、当時の17歳だった自分と母を思い起こさせるのです。
あの時、優しく慰めるのではなく、突き放した母の思いが、娘の母親となった今なら深く理解できます。
若さというのは尊く、素晴らしいものですが、刹那的であるがゆえ一時の感情に振り回されて、人生の選択を間違いかねない危うさも持っています。
当時の私は何も周りが見えていなかったし、今が楽しければ良い、としか考えていませんでした。
あの彼は音楽の専門学校を卒業した後、バーテンダーになったらしい、と風の噂で聞きました。
好きなことを仕事にするというのは難しいものです。
自分にとって初めての失恋であり、いろんなことを学ぶきっかけになったこの恋は、今思い出してもほろ苦く、でもかけがえのない青春の1ページです。
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